沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

2015年の仕事

2015年の確定申告をどうにかすませたのを機に、2015年の仕事をまとめてみました。確定申告自体は本当に憂鬱な作業ですが、領収書や支払調書を整理していると去年の思い出が走馬灯のように思い出されます…。そして、副業の赤字に深くおののきます…。
ブログでは告知すら怠るようになってしまいましたが、せめて毎年3月は総括のタイミングにしていきたいです。

書籍

  • 『ときめき昆虫学』台湾版(中国語繁体字)

www.books.com.tw
(台湾のショッピングサイトに飛びます)
2014年に出した『ときめき昆虫学』の台湾版を、台湾の出版社「世茂」から刊行されました。翻訳版、しかも中国語なのでぜんぜん違う装丁になることを覚悟していましたが、元の凝った装丁や脚注も可能なかぎり生かしていただき、感動です。

連載

  • 連載「メメントモリ・ジャーニー」/亜紀書房ウェブマガジン「あき地」(2015年8月~)

メメントモリ・ジャーニー(メレ山メレ子) ウェブマガジン「あき地」- 亜紀書房
2016年夏に書籍化の予定です。サブ企画であるガーナ棺桶紀行のクラウドファンディングにも、大勢の方から応援していただき、本当にありがとうございます。
mmjtoghana.strikingly.com

  • 連載「メレ山メレ子の生きもの探訪」/『ライフスケープ』2015年1月号・5月号

自然を見つめる人の写真誌・ライフスケープ
風景写真出版の生きもの写真誌「ライフスケープ」に、生きものの不思議に夢中な人たちのことを書く連載をしていました。ライフスケープは残念ながら現在休刊という形になっていますが、また会える日を楽しみにしています。

寄稿

  • 『三田文学』2015夏季号 エッセイ寄稿「虫と文学―科学随筆の甘露」

批評家の若松英輔さんからお声がけいただき、「虫と文学」という大それたテーマでエッセイを書きました。この文章は、先日行われた北海道武蔵野女子短期大学の2016年現代文入試問題にも採用され、二度うれしい思い出になりました。

  • 「ポリタス」特集:戦後70年―私からあなたへ、これからの日本へ

この国を、複雑な幸福を守れる国にしたい
政治について書くのはほぼはじめてでとても悩みましたが、多くの方に読んでもらえてよかったです。生きもの関係で本当に真摯な活動をされている方に「自分はどちらかというと右だと思うが、あれを読んで『右とか左とか関係ないんだな』と思った」と言ってもらえたのを覚えています(すべての右や左の人が共感できる文章だということはもちろんありません、念のため)

  • 秋山あゆ子さん『虫けら様』ちくま文庫版 あとがき「「こちら」と「あちら」の幸福な往来」

虫けら様 (ちくま文庫)
秋山 あゆ子
筑摩書房
売り上げランキング: 134,344
秋山さんの漫画には、自然科学への驚きと別れの哀しさがみっしり詰まっていると思います。ゲラが素晴らしすぎたのでじっくり向き合いたくなり、鬼怒川温泉の宿でひれ伏すように読んだのをよく覚えています(あとがきの中でも、そのことについて触れました)。

  • 島野智之さん『ダニ・マニア』増補改訂版(八坂書房)帯文

ダニ・マニア チーズをつくるダニから巨大ダニまで (増補改訂版)
島野 智之
八坂書房
売り上げランキング: 379,473
ダニ愛がいっぱい詰まった名著『ダニ・マニア』の帯文を書かせていただきました。街路樹の根元にも深い森にも、そしてフランスの市場に積まれたチーズにも、小さな生きものの広い世界を感じることができる。生物学者の見ている世界は、自分が見ているそれの何万倍も奥行きがあって細部まで精巧な美しさに満ちていると感じます。

  • 楽天「それ どこで買ったの?」寄稿

srdk.rakuten.jp
イベントなどを通じて集めた、生きものグッズのコレクションを紹介しています。

講演・登壇

  • 相模原環境まつり 相模原市博物館の秋山幸也さんとのトーク「あなたにも眠る?! 虫スイッチ」
  • TBSラジオ「荻上チキ Session-22」

www.tbsradio.jp

インタビュー・対談など

  • 『Oggi』1月号 「2枚目の名刺」特集

副業などで「2枚目の名刺」を持って活動している人の特集でした。

  • Z会「さぽナビ」

ZOOM UP!「昆虫大学」学長 メレ山メレ子さん
子供のときどんな勉強をしていて、今の活動にどのようにつながっているかお話しました。

  • 『Ginza』7月12日発売号「なぜだかあなたに首ったけ!CRAZY FOR YOU!」特集

こちらも生きものグッズの紹介。
Ginza No.218 Crazy? A GO GO!

  • 「モチイエ女子web」特別対談

雨宮まみさんの本『自信のない部屋へようこそ
』刊行を記念して、マンション購入について対談しました。
雨宮まみ×メレ山メレ子 特別対談

そのほか

  • 風カルチャークラブ・昆虫観察会

www.kaze-travel.co.jp
mereco.hatenadiary.com
6月に福島県只見町で、昆虫観察の一泊ツアーに講師として参加しました。
『ときめき昆虫学』を書いたのがきっかけで、中野の旅行社「風カルチャークラブ」さんとご縁ができ、何度か昆虫観察会を開催したのですが、わたし自身は講師ができるような知識量はとてもありません。只見の観察会については、昆虫標本師の政所名積さんとダブル講師という形で開催させてもらいました。風カルの嶋田さん・水野さんのツアー設計力もさることながら、虫屋の生態を体現してくださる愉快な常連さん(みずから講師を務められる虫屋が常時3人以上いる…)もいて、政所さんのお力で初心者にも優しいすごくいい空間に育ってきているので、わたしは今後はお客さんとして楽しく参加させてもらおうと思っています。そして「このツアーはワシが育てた」と言いつづけるんだ…。
親子で参加してくださったイラストレーターの熊野友紀子さんによる感想まんがが本当に素晴らしいので、ぜひお読みください!
こどもと虫旅行ってみた その1 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ
こどもと虫旅行ってみた その2 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ
こどもと虫旅行ってみた その3 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ
こどもと虫旅行ってみた その4 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ


こうしてみると、特に幸せな仕事の多い一年でした。
2016年は書籍『メメントモリ・ジャーニー』の刊行と、年内の「昆虫大学」開催を目指していきたいと思います。

連載「メメントモリ・ジャーニー」リンク集

隔週木曜更新で亜紀書房のWebマガジン「あき地」に連載中の「メメントモリ・ジャーニー」リンク集です。
全15回更新予定・2016年夏の書籍化を予定しています。

第1回 世界は移動を拒んではいない
旅ブログをはじめてからの変化、人生について、そして芽生えた死への興味について。

第2回 生者と死者の島
西表島のシオマネキの群れと、与那国島の広大な墓地群のお話。

第3回 標本づくりという弔い、そして伝染する好奇心
骨格標本作製サークル「なにわホネホネ団」の活動を通じて、動物の死体に宿る新たな価値のこと、そして知的好奇心の強い人からどんどん伝播していく活動の広がりについて書きました。

第4回 越後妻有、怒濤のセンチメンタル
大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ。作品から伝わる旧コミュニティの崩壊や故郷の記憶、不在感に最初はちょっとあてられてしまうが、そんな中にも未来や変化を感じる強烈な瞬間があって…というお話。

第5回 自由なハリネズミの巣箱
家や居場所の話について。

第6回 魂の向かう山、死後の住所
ミステリースポットのイメージだった恐山は、とても美しい場所でした。宿坊や、青森県美の化け物展についても。

第7回 旅人とスピリチュアル
わたしのひとり旅の天敵と呼んでもさしつかえない「旅に多くを求める人たち」について。

第8回 移動してもしなくても、世界は混ざって変わりつづける
長崎県の五島列島に散らばる宝石みたいな多様な教会群のお話です。

第9回 老いに立ち向かうための戦車
秩序のない現代にドロップキック的なものをするための戦車として、ガーナで自由な棺桶をオーダー制作することにしました。

第10回 ガーナ棺桶プロジェクト・帰還報告

第11回 遠くに行く人のお助けマン
生きものイベント「いきもにあ」への参加を通じて、生きものを介して出会った人たちのことを考えました。

第12回 ガーナ棺桶紀行(1) 大きなお守り
何がどうして西アフリカで棺桶を製作することになったのか。

第13回 ガーナ棺桶紀行(2) ポテトチップス・コフィン
何がどうしてポテトチップスの棺桶を製作することになったのか。

第14回 ガーナ棺桶紀行(3) フェスティバル・オブ・リビング・シングス
日々着々と進む棺桶製作の様子。

第15回 ガーナ棺桶紀行(4) 人生を捨てさせる装置
ガーナを離れ、隣国トーゴを抜けてベナンへ二泊三日のクリスマス旅行。ヴードゥー呪術とトラブルにまみれた忘れがたいショートトリップ。

第16回 ガーナ棺桶紀行(最終回) 棺桶パーティとヤギの骨
棺桶完成を間近に控え、お祝いをすることになった棺桶工房。金主・メレ山は、メインディッシュのヤギを市場で買ってくるように言われる。

第17回 新しい故郷
故郷の別府に帰って思うことと、これから作る新しい居場所の話。

旅と死について考える新連載「メメントモリ・ジャーニー」をはじめます

本日オープンした亜紀書房のウェブマガジン「あき地」にて、新連載「メメントモリ・ジャーニー」をはじめました。www.akishobo.com

ウェブマガジン「あき地」について
「あき地」は株式会社亜紀書房が運営するウェブ連載媒体です。子どものころに日が暮れるまで友だちと遊んだ「あき地」のように、出入り自由で、開かれた表現の場になることを願ってつくられました。ふらっと立ち寄って、好きなだけ作品と遊んで、遊び疲れたらおうちに帰る。そんな親しみやすい場所をめざしています。
トップページのバナーは漫画家高野文子さんの手作りアートです。あき地に遊びに来た子どもが、お花を摘んでいる風景だそうです。撮影は川瀬一絵さんにお願いしました。
このウェブサイトに咲いたたくさんのお花(作品)たちは、最後には単行本という形でみなさまのお手元に届けられます。
末永く、みなさまにお楽しみいただける場となることを願っています。


メメントモリ・ジャーニー - 世界は移動を拒んではいない | ウェブマガジン「あき地」
このウェブマガジンにてわたしが植えるお花は、どちらかというと巨大なウツボカズラに似ており、虫や小動物などいろんなものを飲みこんでときには消化しきれずに吐いたりしながら旅と死について考えていく予定。
前作『ときめき昆虫学』の編集者・田中祥子さんが、「亜紀書房でもなんかやりましょう!」と声をかけてくれたことからこの連載をやる運びになった。サチコさんはわたしよりずっと気合の入った旅好きで、ぜひ旅モノを読みたいと言ってくれたのだが、どうせ書くなら自分にとっても読んでくれる人にとっても強烈なフックのある旅モノにしたいなーと数日ぐるぐると考えつづけて、「そうか!旅と死だ!!!!!」と思いついたときは、会社からの帰り道で



大事なことなので2回ツイートしてしまうほどしっくりきた。

どこへ転がっていくのかよくわからないままボリュームだけはある隔週連載をはじめてしまったのだが、見たことない色の信号花火打ち上げるんや!という気持ちだけはしっかり持って書いていきます。よろしくおつきあいください。

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」東京都現代美術館

P7269678
いろいろと物議を醸していた企画展ですが、わくわくして脳みそに涼しい風が吹くような展示だった!
「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」は都現美の夏休み企画展で、ヨーガン・レール、おかざき乾じろ、会田家(会田誠、岡田裕子、会田寅次郎)、アルフレド&イザベル・アキリザンの作り出した4つのスペースをめぐりながら「○○はだれの場所?」と考える、というもの。
www.mot-art-museum.jp

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蔡國強展「帰去来」横浜美術館

Untitled
横浜美術館に蔡國強展「帰去来」を見に行った。写真は大ホールに展示された「夜桜」という作品(これだけは写真撮影可能)。
美術の知識はほぼゼロだが、京都国際芸術祭で見た「農民ダ・ヴィンチ」(中国の農民発明家が作ったギリギリな感じのロボット群)がすごくかわいかったので、横浜市美術館に来ると知ってずっと楽しみにしていた。今回の展示は、火薬を使った作品がメイン。いずれも大物ばかりなので、点数は十点くらいと少ないがいずれも迫力がある。
会場は老若男女で賑わっていた。99匹の狼のレプリカがうねり舞う作品「壁撞き」をフライヤーで見て「これは行かねば!」と思った人も多そう。中国・日本・ニューヨークと拠点を変えながら大きなプロジェクトを手がけている人気美術家だけあって、五感への訴求力がすごい。北京オリンピック開会式の視覚効果監督として超豪華な花火の演出をしたり、日本の桜や花札、中国の白磁といったモチーフはすごくベタで、一歩間違えたらすごくダサくなってもおかしくないと思うんだけど。
今回の展示の制作風景を撮ったものと、これまでのポートフォリオを現在から過去にわたって逆に振り返る「巻戻」の二点の映像も見られる。火薬を使った作品の製作風景には「これはマッドマックスや~!!」と鳥肌が立った。会場にはまだ、かすかな煙のにおいが漂っている。
映像を見ているとき、前で見ていたおばさまが花火や火薬が炸裂するたびに「ファッ?!」とか「まあ~」って小さく言ってたのが愛おしかった。
Untitled
ホールの2階では、作品を裏から見ることができます。和紙のところどころに、火薬で空いた小さな穴が空いている。

コガネムシ、タマムシ、カミキリムシ…昆虫学者渾身の美麗昆虫写真集『きらめく甲虫』

きらめく甲虫
きらめく甲虫
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丸山 宗利
幻冬舎
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趣味でイベントやツアーなどの昆虫活動をしているので、「特にどんな虫が好きなんですか?」とよく訊かれる。奇妙な生態を持つ虫も好きだが、きれいな虫も大好きだ。奈良公園で鹿のフンを食べている青く輝く糞虫・ルリセンチコガネも丸っこくてかわいいし、ヤマトタマムシは虫の本を書くにあたってどうしても見たいあこがれの虫だった。

昆虫はすごい (光文社新書)
丸山 宗利
光文社 (2014-08-07)
売り上げランキング: 3,687

数年前から展示などでお世話になっている九州大学総合研究博物館の昆虫分類学者・丸山宗利さんが、昆虫カテゴリーにとどまらず一般書のランキングにのぼるほど売れた新書『昆虫はすごい』に続いて、またしてもベストセラーの気配がある本を出した。それが『きらめく甲虫』である。著者献本ありがとうございました!
体重と同じ重さの金より高価で取引される、南米の雨霧林のプラチナコガネ。マダガスカルの銀河を体現したようなニシキカワリタマムシ。鳥でさえ食べようとしない固く黒い体に、細かい螺鈿の粒をひとつひとつ置いたようなフィリピンのカタゾウムシ。
これら金属光沢を持つ虫の美しさは、本来自然光の中で遺憾なく発揮されるものだ。この本では深度合成法*1をベースにした偏執的なライティングの技法で昆虫標本を撮影しており、ギンギラギンの虫たち約200種の輝きに思う存分酔いしれることができる。専門性に流れすぎない、しかし昆虫研究者ならではのキャプションもいちいちキマっている。

世界一うつくしい昆虫図鑑
クリストファー・マーレー
宝島社
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美麗な虫たちの写真集といえば、『世界一うつくしい昆虫図鑑』を思い出す人も多いかもしれない。
実は丸山先生はこの写真集が日本で発売されたとき、ツイッターで若干の苦言を呈していた。オブジェとしての美しさも、もちろん昆虫標本の価値のひとつだ。虫好きでない人にも昆虫の造形の美しさを広める本としては価値がある、しかし昆虫標本の脚や触角を一部もいで撮影されているものがあるのはいただけない…というような内容だったと思う。
昆虫に限らず、標本というのは「眺めて楽しむ」以上に学術資料としての価値がある。採集地や採集者のラベルがついていない標本は、どんなにきれいでも学術資料としては無価値だ。虎は死して皮を残すというが、研究者は死して論文か標本を残す。それが自分が死んだあとも他の誰かにレファレンスされ、人類が積みあげる知識の山を支える石のひとつになる。まあ学術の話は仮に置いておくとしてですよ、純粋に美的センスの話のみに集中したとしてもですよ、「この構図だと脚や触角がないほうがきれいだからちょっともいじゃうね~」みたいなのはやっぱり同意できないですよ!脚や触角のあの繊細きわまりない構造に生命が宿って動いてたってのがいいんじゃんか!繊細すぎてタマムシとかオサムシとかの標本の後脚のふ節、なんですぐもげてしまうん…もぐつもりなくてもすぐもげてしまうん…。
話がおおいにそれたが、丸山先生は昆虫研究者として、文句を言うだけでなく「本当の昆虫のうつくしさっちゅうのはな、ワイに言わせるとコレなんじゃあッ」と著作で示してきているのがこの本なんだとわたしは理解している。なんて健全な反論なんだ!
丸山先生のもともとの研究対象は、アリと共生関係を結ぶ好蟻性昆虫や、ハネカクシという甲虫である。1センチあれば超大きい虫という世界だし、ハネカクシなんてきらめくどころか前翅がすごく小さくておなかのハラマキみたいなところがほぼ見えちゃってるみたいな虫だ。先生はおそらく、きらめく虫をおとりにしてあまたの一般人を昆虫界に引きこみ、最終的には「虫って最初は苦手って思ってたけど、ハケゲアリノスハネカクシの腹毛ってすっごくセクシーだよね!」とか言わせようとしているんだと思う。恐ろしい恐ろしい。

アリの巣の生きもの図鑑
丸山 宗利 工藤 誠也 島田 拓 木野村 恭一 小松 貴
東海大学出版会
売り上げランキング: 249,130
好蟻性生物ってなにそれおいしいの?と興味をもった人には、丸山さんらが編んだ渾身の図鑑『アリの巣の生きもの図鑑』がおすすめ。

世界のタマムシ大図鑑 (月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ 4)
秋山 黄葉 大桃 定洋
むし社
売り上げランキング: 2,247,152
タマムシにガチでハマりそう、という方には、むし社の『日本のタマムシ大図鑑』もおすすめ。主編纂者であるタマムシの大家・大桃先生は、『きらめく甲虫』の協力者としても名を連ねておられます。タマムシといってもヤマトタマムシやエゾアオタマムシなどの大型美麗種から、ケシツブくらい小さくて家に出たらヒメマルカツオブシムシと間違えてつぶしちゃいそうなタマムシもいっぱいいることがわかってすごく愛おしい。



そこで…昆虫標本を…爆買いする女………( ´ཀ‘)

メレ山メレ子さん(@merec0)が投稿した写真 -


最近サブでお買い物ブログをはじめて、きらめく昆虫標本を爆買いしてしまったばかりなので、よかったらこちらの記事もどうぞ。↓mereco-butsuyoku.hatenadiary.com


(2015.07.12追記)丸山先生ご自身による、『きらめく昆虫』制作秘話がアップされています。↓dantyutei.hatenablog.com

*1:対象の部位ごとにピントを当てて撮影した写真を何枚も合成し、すべてにピントが合った写真を作りだすこと

虫と躍動せよ!『虫とツーショット 自撮りにチャレンジ!虫といっしょ』(森上信夫)

虫とツーショット—自撮りにチャレンジ! 虫といっしょ
森上 信夫
文一総合出版
売り上げランキング: 445,620
著者の森上信夫さん、献本ありがとうございます!
本が売れない時代である。昔は出版社が「節税のために」めくるにも一苦労の巨大で豪華な昆虫図鑑を作り、執筆陣はガッポガッポと印税をもらったなどという夢のようなエピソードもあったそうだが、今や虫の図鑑や昆虫写真集の編纂はほとんど手弁当に近い状態で行われ、一般向けでも初版も3千部くらいあればまあいいほうだ。出版社の人も「虫…虫ねえ…」と首をひねることが多く、企画はなかなか通らない。
そんな中で、挑戦的とかそんな生易しい言葉では語れないなんかすごい本が出てきた!というのが正直な感想。内容はもうタイトルのとおりで何も説明を加える必要はない。めくってもめくってもおっさん(森上さんすみません)の自撮りwith昆虫。
ミヤマクワガタの交尾をジャマして「もうあっち行ってよ!」と言われるおっさん。
洗面所にあらわれたアシダカグモと自撮りするおっさん。
夜の公園でセミの羽化を応援するおっさん。

この本を見せた人に「この出版社は自費出版系なの?(ふつうの出版社でこの企画が通るのか的な意味で)」と訊かれたが、文一総合出版はれっきとした自然科学系出版社で『イモムシハンドブック』などのフィールドに持ち出しやすいハンドブックシリーズは商業的にも成功しているようだし、季刊誌『このは』も自然に対する視点がつまったいい雑誌だ。森上さんだってアニマ賞を受賞したれっきとした昆虫写真家で、写真絵本『オオカマキリ』などのちゃんとした(すみません)本をたくさん出されている。

虫のくる宿 (アリス館写真絵本シリーズ)
森上 信夫
アリス館
売り上げランキング: 549,997
輝かしい著書歴の中で、今回の本への系譜をなんとなく感じるのはアリス館から出版している『虫のくる宿』。虫好きでない人間にとってはホラージャンルに属するタイトルと表紙。山中の旅館に泊まって、灯りに惹かれてやってくる虫たちをこれでもかと撮影した絵本だ。
『虫とツーショット』のカバーの袖には、こう書いてある。

2013年の秋、「selfie」(セルフィー・自撮り)という言葉が、その年の、英語版"流行語大賞"に選ばれました。
「自撮りブーム」は、その後もどんどん広がり、今や、世界的な現象になったと言えるでしょう。

思わず「流行と自信マンマンに絡めてくんのやめろしーーーー!!!!!」と叫んでしまうが、躍動する昆虫写真家と昆虫そのものの生命力があいまって、なんとなくめっちゃ楽しそうな本に仕上がっているのがすごいところだ。というかだいぶくやしい。わたしだって旅日記を書いていた昔から、昆虫やカメをわしづかみにしてツーショットしてきたのに…ッ!
自撮りに使う機材や方法を紹介するページはあるが、一眼レフにシャッターリモコンは子供にはちょっと敷居が高い。森上さんに続いて自撮りを敢行してくれる老若男女はどれくらいいるだろうか。読者層がまったく読めない感のある本だが、とにかくたくさん売れてほしい。こんな本が出ること自体が出版界にとって明るいニュースだと思うし、人目を気にせず楽しそうにしてる老若男女が世の中にあふれることで世界がどれだけよくなるか知れない。