沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

旅と死とガーナの棺桶と新しい家の本『メメントモリ・ジャーニー』発売のおしらせ

昨年夏から亜紀書房のウェブサイト「あき地」で書いていた連載『メメントモリ・ジャーニー』が、同名の本になりました。8/25から書店等で扱っていただいています。
何の本かというと説明がややこしいのですが、旅と死の本です。旅と死の本とは何かというと、こんな具合です。

それでは、「旅と死についてのエッセイ」と聞いた人は、通常はどんな内容を期待するだろうか。わたしがこの本に書いたことは、おもに以下の3つのカテゴリーに大別できる。

1.旅先で心に浮かぶ、人生や故郷、家族や友人への思い
2.西アフリカ・ガーナで自分のためのオーダーメイド棺桶を作りたいと思い立ってから、お金を集めて実際にガーナに行き、棺桶を日本に持って帰ってくるまでのお話
3.東京に住むひとり暮らしの30代勤労女性が古いマンションを購入し、リノベーションを施して住まいを手にいれるまでの記録

これを分かりやすさ度合いで自己採点してみると、

1.まあまあ分かる
2.だいぶ分からない
3.「旅と死」はどこへ……?

という感じになる。だが、あくまでわたしの中では、これらの要素はがっちりと絡みあい、いつか訪れる死の瞬間を前にどこに行くのか、何を目指すのか―という「メメントモリ・ジャーニー」を構成している。

(「はじめに」より)
今度こそキャッチーで売れ売れな本を作ろうと思っていたのですが、またしてもこうなってしまった。出版社のページで過去の連載の一部が読めるので、それを読んで合いそうと思った方には読んでほしいですし、合わなそうと思った方もとりあえず購入だけしてください。
メメントモリ・ジャーニー - 『メメントモリ・ジャーニー』、単行本が発売になります! | ウェブマガジン「あき地」

編集は前作『ときめき昆虫学(ときめき昆虫学)』のときも一緒に本を作ってもらった田中祥子さん、装丁は大岡寛典事務所さん、装画は西村ツチカさんです。またしてもめちゃくちゃかっこいい本になってしまいました。箔がキラッキラしています。

Amazonでも取扱中です↓

メメントモリ・ジャーニー

メメントモリ・ジャーニー

棺桶展示について

また、本の中に出てくるガーナで作った装飾棺桶「ポテト・コフィン」を、ジュンク堂書店池袋店の9階芸術フロアで展示していただいています。展示期間は9月いっぱいを予定しています。ふだんはメレ山の家にある棺桶を見られる貴重な?機会ですので、ぜひお出かけください。展示会場では、『メメントモリ・ジャーニー』に出てくる本やアフリカの本などを集めた「旅と死のブックフェア」を開催しています。サイン本もフェア期間中はこまめに追加しています。

出版関連イベント

  • 8/30(火) TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」ミッドナイト・セッション出演(終了しました)
  • 9/3(土) ジュンク堂トークイベント(終了しました)
  • 9/27(火) 荻窪Title トークイベント「メメモジャ荻窪夜話」:申込受付中

www.title-books.com
関西の書店さんでもトークイベントができそうな気配です(追ってお知らせします)

書店・イベントスペースの方へ

POPデータ等はこちらをお使いください↓
メメントモリ・ジャーニー - 『メメントモリ・ジャーニー』書店用パネル・POPを作りました! | ウェブマガジン「あき地」
棺桶の展示やイベント、サイン本などのご相談もお待ちしております。

2015年の仕事

2015年の確定申告をどうにかすませたのを機に、2015年の仕事をまとめてみました。確定申告自体は本当に憂鬱な作業ですが、領収書や支払調書を整理していると去年の思い出が走馬灯のように思い出されます…。そして、副業の赤字に深くおののきます…。
ブログでは告知すら怠るようになってしまいましたが、せめて毎年3月は総括のタイミングにしていきたいです。

書籍

  • 『ときめき昆虫学』台湾版(中国語繁体字)

www.books.com.tw
(台湾のショッピングサイトに飛びます)
2014年に出した『ときめき昆虫学』の台湾版を、台湾の出版社「世茂」から刊行されました。翻訳版、しかも中国語なのでぜんぜん違う装丁になることを覚悟していましたが、元の凝った装丁や脚注も可能なかぎり生かしていただき、感動です。

連載

  • 連載「メメントモリ・ジャーニー」/亜紀書房ウェブマガジン「あき地」(2015年8月~)

メメントモリ・ジャーニー(メレ山メレ子) ウェブマガジン「あき地」- 亜紀書房
2016年夏に書籍化の予定です。サブ企画であるガーナ棺桶紀行のクラウドファンディングにも、大勢の方から応援していただき、本当にありがとうございます。
mmjtoghana.strikingly.com

  • 連載「メレ山メレ子の生きもの探訪」/『ライフスケープ』2015年1月号・5月号

自然を見つめる人の写真誌・ライフスケープ
風景写真出版の生きもの写真誌「ライフスケープ」に、生きものの不思議に夢中な人たちのことを書く連載をしていました。ライフスケープは残念ながら現在休刊という形になっていますが、また会える日を楽しみにしています。

寄稿

  • 『三田文学』2015夏季号 エッセイ寄稿「虫と文学―科学随筆の甘露」

批評家の若松英輔さんからお声がけいただき、「虫と文学」という大それたテーマでエッセイを書きました。この文章は、先日行われた北海道武蔵野女子短期大学の2016年現代文入試問題にも採用され、二度うれしい思い出になりました。

  • 「ポリタス」特集:戦後70年―私からあなたへ、これからの日本へ

この国を、複雑な幸福を守れる国にしたい
政治について書くのはほぼはじめてでとても悩みましたが、多くの方に読んでもらえてよかったです。生きもの関係で本当に真摯な活動をされている方に「自分はどちらかというと右だと思うが、あれを読んで『右とか左とか関係ないんだな』と思った」と言ってもらえたのを覚えています(すべての右や左の人が共感できる文章だということはもちろんありません、念のため)

  • 秋山あゆ子さん『虫けら様』ちくま文庫版 あとがき「「こちら」と「あちら」の幸福な往来」

虫けら様 (ちくま文庫)
秋山 あゆ子
筑摩書房
売り上げランキング: 134,344
秋山さんの漫画には、自然科学への驚きと別れの哀しさがみっしり詰まっていると思います。ゲラが素晴らしすぎたのでじっくり向き合いたくなり、鬼怒川温泉の宿でひれ伏すように読んだのをよく覚えています(あとがきの中でも、そのことについて触れました)。

  • 島野智之さん『ダニ・マニア』増補改訂版(八坂書房)帯文

ダニ・マニア チーズをつくるダニから巨大ダニまで (増補改訂版)
島野 智之
八坂書房
売り上げランキング: 379,473
ダニ愛がいっぱい詰まった名著『ダニ・マニア』の帯文を書かせていただきました。街路樹の根元にも深い森にも、そしてフランスの市場に積まれたチーズにも、小さな生きものの広い世界を感じることができる。生物学者の見ている世界は、自分が見ているそれの何万倍も奥行きがあって細部まで精巧な美しさに満ちていると感じます。

  • 楽天「それ どこで買ったの?」寄稿

srdk.rakuten.jp
イベントなどを通じて集めた、生きものグッズのコレクションを紹介しています。

講演・登壇

  • 相模原環境まつり 相模原市博物館の秋山幸也さんとのトーク「あなたにも眠る?! 虫スイッチ」
  • TBSラジオ「荻上チキ Session-22」

www.tbsradio.jp

インタビュー・対談など

  • 『Oggi』1月号 「2枚目の名刺」特集

副業などで「2枚目の名刺」を持って活動している人の特集でした。

  • Z会「さぽナビ」

ZOOM UP!「昆虫大学」学長 メレ山メレ子さん
子供のときどんな勉強をしていて、今の活動にどのようにつながっているかお話しました。

  • 『Ginza』7月12日発売号「なぜだかあなたに首ったけ!CRAZY FOR YOU!」特集

こちらも生きものグッズの紹介。
Ginza No.218 Crazy? A GO GO!

  • 「モチイエ女子web」特別対談

雨宮まみさんの本『自信のない部屋へようこそ
』刊行を記念して、マンション購入について対談しました。
雨宮まみ×メレ山メレ子 特別対談

そのほか

  • 風カルチャークラブ・昆虫観察会

www.kaze-travel.co.jp
mereco.hatenadiary.com
6月に福島県只見町で、昆虫観察の一泊ツアーに講師として参加しました。
『ときめき昆虫学』を書いたのがきっかけで、中野の旅行社「風カルチャークラブ」さんとご縁ができ、何度か昆虫観察会を開催したのですが、わたし自身は講師ができるような知識量はとてもありません。只見の観察会については、昆虫標本師の政所名積さんとダブル講師という形で開催させてもらいました。風カルの嶋田さん・水野さんのツアー設計力もさることながら、虫屋の生態を体現してくださる愉快な常連さん(みずから講師を務められる虫屋が常時3人以上いる…)もいて、政所さんのお力で初心者にも優しいすごくいい空間に育ってきているので、わたしは今後はお客さんとして楽しく参加させてもらおうと思っています。そして「このツアーはワシが育てた」と言いつづけるんだ…。
親子で参加してくださったイラストレーターの熊野友紀子さんによる感想まんがが本当に素晴らしいので、ぜひお読みください!
こどもと虫旅行ってみた その1 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ
こどもと虫旅行ってみた その2 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ
こどもと虫旅行ってみた その3 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ
こどもと虫旅行ってみた その4 | 熊野友紀子のイラスト・デザインカタログ


こうしてみると、特に幸せな仕事の多い一年でした。
2016年は書籍『メメントモリ・ジャーニー』の刊行と、年内の「昆虫大学」開催を目指していきたいと思います。

連載「メメントモリ・ジャーニー」リンク集

隔週木曜更新で亜紀書房のWebマガジン「あき地」に連載中の「メメントモリ・ジャーニー」リンク集です。
全15回更新予定・2016年夏の書籍化を予定しています。

第1回 世界は移動を拒んではいない
旅ブログをはじめてからの変化、人生について、そして芽生えた死への興味について。

第2回 生者と死者の島
西表島のシオマネキの群れと、与那国島の広大な墓地群のお話。

第3回 標本づくりという弔い、そして伝染する好奇心
骨格標本作製サークル「なにわホネホネ団」の活動を通じて、動物の死体に宿る新たな価値のこと、そして知的好奇心の強い人からどんどん伝播していく活動の広がりについて書きました。

第4回 越後妻有、怒濤のセンチメンタル
大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ。作品から伝わる旧コミュニティの崩壊や故郷の記憶、不在感に最初はちょっとあてられてしまうが、そんな中にも未来や変化を感じる強烈な瞬間があって…というお話。

第5回 自由なハリネズミの巣箱
家や居場所の話について。

第6回 魂の向かう山、死後の住所
ミステリースポットのイメージだった恐山は、とても美しい場所でした。宿坊や、青森県美の化け物展についても。

第7回 旅人とスピリチュアル
わたしのひとり旅の天敵と呼んでもさしつかえない「旅に多くを求める人たち」について。

第8回 移動してもしなくても、世界は混ざって変わりつづける
長崎県の五島列島に散らばる宝石みたいな多様な教会群のお話です。

第9回 老いに立ち向かうための戦車
秩序のない現代にドロップキック的なものをするための戦車として、ガーナで自由な棺桶をオーダー制作することにしました。

第10回 ガーナ棺桶プロジェクト・帰還報告

第11回 遠くに行く人のお助けマン
生きものイベント「いきもにあ」への参加を通じて、生きものを介して出会った人たちのことを考えました。

第12回 ガーナ棺桶紀行(1) 大きなお守り
何がどうして西アフリカで棺桶を製作することになったのか。

第13回 ガーナ棺桶紀行(2) ポテトチップス・コフィン
何がどうしてポテトチップスの棺桶を製作することになったのか。

第14回 ガーナ棺桶紀行(3) フェスティバル・オブ・リビング・シングス
日々着々と進む棺桶製作の様子。

第15回 ガーナ棺桶紀行(4) 人生を捨てさせる装置
ガーナを離れ、隣国トーゴを抜けてベナンへ二泊三日のクリスマス旅行。ヴードゥー呪術とトラブルにまみれた忘れがたいショートトリップ。

第16回 ガーナ棺桶紀行(最終回) 棺桶パーティとヤギの骨
棺桶完成を間近に控え、お祝いをすることになった棺桶工房。金主・メレ山は、メインディッシュのヤギを市場で買ってくるように言われる。

第17回 新しい故郷
故郷の別府に帰って思うことと、これから作る新しい居場所の話。

旅と死について考える新連載「メメントモリ・ジャーニー」をはじめます

本日オープンした亜紀書房のウェブマガジン「あき地」にて、新連載「メメントモリ・ジャーニー」をはじめました。www.akishobo.com

ウェブマガジン「あき地」について
「あき地」は株式会社亜紀書房が運営するウェブ連載媒体です。子どものころに日が暮れるまで友だちと遊んだ「あき地」のように、出入り自由で、開かれた表現の場になることを願ってつくられました。ふらっと立ち寄って、好きなだけ作品と遊んで、遊び疲れたらおうちに帰る。そんな親しみやすい場所をめざしています。
トップページのバナーは漫画家高野文子さんの手作りアートです。あき地に遊びに来た子どもが、お花を摘んでいる風景だそうです。撮影は川瀬一絵さんにお願いしました。
このウェブサイトに咲いたたくさんのお花(作品)たちは、最後には単行本という形でみなさまのお手元に届けられます。
末永く、みなさまにお楽しみいただける場となることを願っています。


メメントモリ・ジャーニー - 世界は移動を拒んではいない | ウェブマガジン「あき地」
このウェブマガジンにてわたしが植えるお花は、どちらかというと巨大なウツボカズラに似ており、虫や小動物などいろんなものを飲みこんでときには消化しきれずに吐いたりしながら旅と死について考えていく予定。
前作『ときめき昆虫学』の編集者・田中祥子さんが、「亜紀書房でもなんかやりましょう!」と声をかけてくれたことからこの連載をやる運びになった。サチコさんはわたしよりずっと気合の入った旅好きで、ぜひ旅モノを読みたいと言ってくれたのだが、どうせ書くなら自分にとっても読んでくれる人にとっても強烈なフックのある旅モノにしたいなーと数日ぐるぐると考えつづけて、「そうか!旅と死だ!!!!!」と思いついたときは、会社からの帰り道で



大事なことなので2回ツイートしてしまうほどしっくりきた。

どこへ転がっていくのかよくわからないままボリュームだけはある隔週連載をはじめてしまったのだが、見たことない色の信号花火打ち上げるんや!という気持ちだけはしっかり持って書いていきます。よろしくおつきあいください。

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」東京都現代美術館

P7269678
いろいろと物議を醸していた企画展ですが、わくわくして脳みそに涼しい風が吹くような展示だった!
「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」は都現美の夏休み企画展で、ヨーガン・レール、おかざき乾じろ、会田家(会田誠、岡田裕子、会田寅次郎)、アルフレド&イザベル・アキリザンの作り出した4つのスペースをめぐりながら「○○はだれの場所?」と考える、というもの。
www.mot-art-museum.jp

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蔡國強展「帰去来」横浜美術館

Untitled
横浜美術館に蔡國強展「帰去来」を見に行った。写真は大ホールに展示された「夜桜」という作品(これだけは写真撮影可能)。
美術の知識はほぼゼロだが、京都国際芸術祭で見た「農民ダ・ヴィンチ」(中国の農民発明家が作ったギリギリな感じのロボット群)がすごくかわいかったので、横浜市美術館に来ると知ってずっと楽しみにしていた。今回の展示は、火薬を使った作品がメイン。いずれも大物ばかりなので、点数は十点くらいと少ないがいずれも迫力がある。
会場は老若男女で賑わっていた。99匹の狼のレプリカがうねり舞う作品「壁撞き」をフライヤーで見て「これは行かねば!」と思った人も多そう。中国・日本・ニューヨークと拠点を変えながら大きなプロジェクトを手がけている人気美術家だけあって、五感への訴求力がすごい。北京オリンピック開会式の視覚効果監督として超豪華な花火の演出をしたり、日本の桜や花札、中国の白磁といったモチーフはすごくベタで、一歩間違えたらすごくダサくなってもおかしくないと思うんだけど。
今回の展示の制作風景を撮ったものと、これまでのポートフォリオを現在から過去にわたって逆に振り返る「巻戻」の二点の映像も見られる。火薬を使った作品の製作風景には「これはマッドマックスや~!!」と鳥肌が立った。会場にはまだ、かすかな煙のにおいが漂っている。
映像を見ているとき、前で見ていたおばさまが花火や火薬が炸裂するたびに「ファッ?!」とか「まあ~」って小さく言ってたのが愛おしかった。
Untitled
ホールの2階では、作品を裏から見ることができます。和紙のところどころに、火薬で空いた小さな穴が空いている。