メレンゲが腐るほど恋したい

旅行記や生きものの話を写真多めの長大な記事で送ります

明日から使える性知識

今メレ子は『ふたりエッチ』を読み耽っている。ひたすら『ふたりエッチ』を読みつづける。すでに膝の横には読破された12巻がそびえ、「メレ子の上を通り過ぎて行った本達ですわ…」といった風情を醸しだしている。

正直苦痛だ。交尾中の男が終始半笑いっぽいのが特につらい。ページをめくりつつもさまよい出す思考…ホワンホワンホワ〜ン

(読むエロに必要なのはテクよりもシチュエーションじゃん?主人公の二人が新婚夫婦という時点で背徳感とか障害とか、そういうスパイスは排除されまくりな訳で…この漫画はエロトリビアに特化してるので文句をつけるのは筋違いとはいえ、やはりストーリーのあるエロが読みたい。

たとえば母の遺志を継いで後宮に上がった娘が側室たちの抗争を潜り抜け正室に成り上がるまでを描く『チャングムの痴態』。対立派官宦の指と舌を駆使した超絶技巧に墜ちる女官…とか…!

または大学オケで繰り広げられるサークルクラッシュストーリー『のだめ姦タービレ』。楽器の技巧と女の扱いをリンクさせることでキャラクターに個性が生まれる。見所は舞台での遠隔操作による強制絶頂。これはSODに企画書送らないけませんわ…!)

思わず綻んだ口許を見逃さない男がいた。「わ〜メレちゃん、ふたりエッチ読みながらニヤけてる、やらしーい」「つーか、読みすぎだろ!さっきから!」「宅飲みで漫画読むなよ〜」そう、ここは友人の部屋。中央のテーブルでは鍋をつつき終えた男達が、不毛な議論を繰り広げている。メレ子はそばで眠ってしまった家主の女の子に目を落とし、ふくらはぎを隠すように上着をかけ直した。

「なあ、メレ子どう思う?」「何を?」「“頭がいい”って本当はどういうことかなあ」舌打ちしないだけ自分は丸くなったと思うメレ子であった。こういう議論を避けるあまりの『ふたりエッチ』だったのは誰も知らない。「皆さんよろしいんじゃないですか?偏差値も高いし」「違うよーそういうさあ、試験とか数字に出ない頭のよさ」「記憶力だけとか言われたくねぇよな」「お前とかさ、いかにも頭の回転早くね?」「いやいやいや、お前もこないだのグループディスカッションよかったわー」

ギラギラした格付け合いが気持ち悪い。やっぱり終電で帰ればよかった…しかしこのアパートは駅から離れていて道順に自信がなく、一緒に帰る人を逸したことが悔やまれる。

ひとり暮らしの部屋で昨日初めて目にした黒い小さな影が、メレ子の帰りを遅らせたのだった。でもゴキブリは議論のための議論も安い武勇伝もしない。

「寝てる女の子には毛布をかけてやるのが本当の頭のよさっしょ…」「メレなんか言った?」「ううん」メレ子は家主に断りなく布団を探し出し(クレヨンの箱のにおいがする)、眠っている女の子にかける。クレヨンの夢を見るかもしれないが、風邪を引くよりはましだろう。

メレ子はため息をついて、『ふたりエッチ』14巻を手に取った。長い夜になりそうだ。ただ一つの救いは、『ふたりエッチ』は32巻まであるという事実である。

ふたりエッチ 32 (ジェッツコミックス)

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