メレンゲが腐るほど恋したい

旅行記や生きものの話を写真多めの長大な記事で送ります

”ダムの女王”白水ダムほか、「水の文化遺産」をめぐる旅

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こんにちは…最近とんとご無沙汰ですみません…実はスピリッチャルアイランド・屋久島に行ったり九州をブラブラしていました。屋久島→鹿児島→阿蘇とまわって大分の実家にたどりついたのですが、大分でもいろいろ行っておきたいところがあり、父の目につくところにさりげなく『九州遺産』の本を置いておくなどして車を出させることに成功しました。機関車庫の廃墟や謎の巨大ブランコをめぐった夏の大分ドライブにつづき、今回は「荒城の月」の舞台・竹田を中心に大分の用水路文化遺産を見まくるドライブです。

音無井路十二号分水(円形分水)

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まず向かったのは、ひっそりと棚田が広がる竹田市宮砥(みやど)地区。農道脇にある円形の妙な施設が円形分水です。
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田んぼの刈り取りはほとんど終っています。ほんとは青々とした田んぼに囲まれているほうがフォトジェニックなのに…でも水が出ているだけよしとしたい。
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円形分水(円筒分水)は文字通り、田に水を分けるための設備です。この円形が平等に水を分ける秘訣。
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大谷川という上流の川から水を取って約2kmの暗渠(あんきょ・トンネル)をくぐってきた水を、サイフォンの原理で円筒の中央に吹きあげます。まずこの水路を引くのが想像を絶する難工事であったらしく、江戸時代にこの水利計画を藩主に提案した須賀勘助は工事の失敗を自責して切腹している。その後明治時代に再着工され、この時も復旧しようとした人が私財を投げ打ったあげく破産して土地を追われたりと、壮絶すぎるエピソードが…。この場所はちょっと小高くなっているので、頂上部分に水を引いて一帯から安定した収穫を得ることは住民たちの悲願であったらしい。
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大正時代末になると、源流から他の地域も取水するようになったために音無井路の水が足りなくなり、水争いが絶えなくなりました。そこで円形分水を設置。外側の円筒外周に空いた分水窓を経由することで、中央から湧き出した水が割合に応じて三つの分水枡に注がれ、それぞれの幹線水路に流れていきます。
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ツルハシを持った須賀勘助の石碑。工事にたずさわった人々の苦労もグッときますが、今もゴンゴン動いて田に水を送っている円形分水のシンプルな造形には美しさが感じられます。
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音無井路十二号分水(おとなしいろじゅうにごうぶんすい)

大事な用水施設なので見学は近隣を汚さないように気をつけて

白水堰堤(白水ダム)

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この白水(はくすい)ダムはダム好きのあいだで「ダムの女王」「日本でいちばん美しいダム」と呼ばれるダムであるという。すごい…ダムに女王があるなんて…ダム王子とかもいるのだろうか。
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ダム湖のほとりから見る白水ダム。ダムの前に降りる階段は立入禁止になっていたので、また車に乗りこんで対岸までまわってみました。
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こちら側の岸には盛り土がしてあり、どうやら駐車場ができそうな気配。最近の見学者増加に対応しようとしているのでしょうか。
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右岸は裾に水を逃がす階段状。
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左岸はゆるやかな曲面。
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正面を流れる水も細かく砕けて白いレースみたいな模様を作り出す。この規則的な水流模様を転波(てんぱ)と呼ぶそうです。一点を見ていても視線が下にひきずられて頭がおかしくなりそう!!あと、サブリミナルで「お皿にしきつめられたスケスケのフグ刺を食べたい」と思ってしまい、危険…。
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なぜこのような優美な水の流れをもつダムが生まれたのか?竹田は大分県の西南部に位置し、熊本県阿蘇山のお膝元にあります。この辺の土は阿蘇の火山灰土で地盤が弱く、普通に水を落としたのでは水圧で施設が痛んでしまうのです。そこで水の衝撃を分散する工夫を随所にほどこしているというわけ。意外なところから生まれた、徹底した用の美ってヤツですね!

円形分水と白水ダムはおおいた麦焼酎二階堂のCMにも登場しています。
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ダムと向き合うメレ父「なんかああいうレトロとかいうのは好かんな」
叙情っぽいCMの作りに文句を述べているが、奇しくもCMに出てくる帽子の人と似た恰好になってしまっている。
ところで白水ダムはダムではありません。さっきまでダムダムダムダム言ってたのに何言ってるのコイツ…と恐怖されるかもしれませんが、高さ14メートルとダムにしては低めなので規格上は堰堤(えんてい)になるそうです。渇水時・増水時は繊細な水の流れは見られないので天候に左右されやすく、アクセスも最悪ですが、この美しさは一度体験してみてほしい…。

白水堰堤(はくすいえんてい)

岡城跡

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分水とダムを見たらお腹がすいたので、岡城のふもとで昼食をとってから岡城史跡へ。広大な石組みの跡だけが残っていて、すごく兵どもが夢の跡って感じ…
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紅葉は今週末が見ごろかねー
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岡城を舞台に「荒城の月」を書いた滝廉太郎の像。父はよく幼いメレ山を車に乗せては果てしなくドライブし、パチパチと写真を撮っていたので、この像も見たことがあるはず。車酔いしてゲロを吐いていた記憶しかないけれど…。でもいま旅行好きなのはその頃の刷りこみかもしれませんね。
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真冬のように寒かったのと雨が降ったせいか地表から霧がたちのぼり、風雲!岡城といった気配。
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竹田はトンネルを通らずにアクセスできないくらい山に囲まれたところで、城跡からは九重連山が見える。高所恐怖症ぎみの父は「こんなところに城作らんでもいいやないか」とブツクサ言っています。
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秋草や メレ子の夢は 夜ひらく

岡城跡(おかじょうあと)

岡城でもらえる地図に円形分水・白水ダムのアクセス情報もあるので参考にするとよいかも

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岡城が広大すぎて小腹がすいたので、城下町の和菓子屋でお菓子を買いました。
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餡をクレープ地で包んで焼いた「三笠野」の焼きたては皮がパリッとしている。「荒城の月」は黄色がかった白あんが淡雪(メレンゲ)に入っていて、上品な味わいです。

沈堕発電所

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最後に立ち寄ったのは沈堕(ちんだ)発電所跡。沈堕の滝のすぐ下にあった発電所の遺構が、見学歩道を整備されてけっこうしっかりと残っています。この発電所は明治時代に豊後電気鉄道会社が大分〜別府を走る電車の動力源として建てたもので、この鉄道会社が今の大分交通の母体になってるみたい。
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沈堕の滝の近くまで寄ってみたら…連日の雨で増水しており大迫力!ドードーいう音がうるさいくらいです。案内板によれば、雪舟室町時代にこの滝を見て「鎮田瀑図」という水墨画を描いたというくらいの滝らしいが、県内での知名度はいまひとつ。滝の上部にあるのは九州電力が作った取水堰。今は明治期の発電所跡の下流で発電事業をしています。
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発電所の外壁と寒さに震えるメレ山。「大分は九州だからコートいらないんでしょ」とか言ってくる奴は認識を改めろよ…そもそも大分が九州にあるという知識があやしい人もいるかと思うけど…石造りのアーチは状態がよく、今でも使えそうなくらい。
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ダムから水路を通してきた水が、壁上部にある穴から管で発電機のタービンに落とされていた。
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「工事請負 東京電業社 社主 中島平太郎」「明治四十二年四月十六日竣工」などの字が見てとれる。
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駐車場には発電機も展示されていました。これは実際には縦に置いて使うらしい。
全体的に設備がとてもよく残っているので、水力発電ってよくわからない…と思っている人(メレ山)の頭の電球も点灯しました!ピコーン まさに大人の社会見学って感じですねー

沈堕(ちんだ)発電所

  • 1909年(明治42年)竣工
  • Cランク近代土木遺産
  • 大分市より国道502号線を東へ12km、県道三重野津原線に入り約1km


大分は水が豊富で、また近代以降まったく発展していないこともあり(ドーン)、治水・利水系の土木遺産がこれ以外にもたくさん残っています。ほとんどは車で行かないと見られず、道のりも険しいものですが、「創意工夫ってそれ自体美しいナー」と実感できるものばかりでした!
↓今回も参考文献は『九州遺産』。フルカラーの素晴らしい写真と、情熱と豊富な知識に裏打ちされた簡潔な説明文で、土木遺産へのロマンティックが止まりません。

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竹田 -a set on flickr-