沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

葉桜の吉野山で猫兄弟に道を説かれる

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三月に東京に引っ越したのですが、関西(おもに奈良)への郷愁断ちがたく、春の吉野山に行ってきました。あいにく桜はほとんど終っていたのですが、いろんな花が咲いていてとても気持ちよかったです。
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近鉄吉野駅に着いたのはもう夕暮れ時。宿は吉野山の中にあるので、電話して迎えにきてもらいます。
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夕食を一時間後にしてもらい、しばし宿のまわりを探索。いつのまにか日が長くなったなー
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1キロほど上の吉野水分神社まで行ってみようとしたんですが、日が沈んでしまったのでふしょうぶしょう戻りました。
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じゃらんで安かった宿を適当に予約したら、ごはんが値段から想像できないほど豪華!抹茶塩つきの天ぷらがおいしい。「太鼓判」というお宿です。昼もいろいろ旅行してまわって疲れていたので、あっという間に寝てしまいました。
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朝はまず近くの竹林院の庭を見にいきました。日本好きの外国人が来たら泣いて喜びそうなたたずまいの旅館です。
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吉野山の奥のほうにも気になるスポットがあるので、竹林院前のバス停から奥千本まで行って徒歩で下りてくることにしました。停留所に数台のマイクロバスが停まっているので、道端の虫などを撮りながら発車を待っていると…
「このおっちゃんが上に行くからな、車に乗せてもらい」
「アラ〜お嬢ちゃんでっかいカメラもって勇ましいな。ほんならお手手つないでいこか!」
ガビーン…バスに乗るのが一人だけだったので、いつのまにか地元のおっちゃん達に話をつけられていた!もっとビジネスライクに輸送してもらわないと気まずいよ…
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しかし「金峯神社の下まで助けちゃるで〜」と、バス停から急坂をのぼったところに車をつけてもらえたのでラッキーでした。おっちゃんは「西行庵もええとこよ〜がんばって登ってみ」との言葉を残して華麗に去っていった。ありがとう…おっちゃん…
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おっちゃんのすすめに従い、西行庵に向かいます。
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朝の無人の広場にシンプルライフすぎる小屋が。
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京を守る武士だったが世をはかなんで出家した西行さん。この庵には3年ほど住んでいたそうです。わたしが仮に世をはかなんでも練炭を炊くことくらいしかできないのでうらやましい。
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花の下にて春死なむ〜
修験道の開祖・役行者が修行の果てに蔵王権現を感得し、その姿を彫りつけたのが桜の木だったそうです。そこから桜を御神木として献木する人が増え、1300年かけて今のような桜まみれの吉野山になったといいます。ソメイヨシノじゃなくて上品なヤマザクラが多いのがいい。
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すこし離れた場所には西行が歌に詠んだ苔清水も。うん…たしかに苔から清水が出ていますね…(若干なげやりな感想)


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次に昨日たどりつけなかった吉野水分(みくまり)神社へ。名前どおり水分けの神様で、みくまりが「みこもり」になまって子授け祈願も担当されているようです。三つの屋根が連なった本殿が壮麗。
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宮司さんが出てきて「かけまくもかしこき…」と朗々ととなえはじめ感動しましたが、聞いているうちに「ナントカカントカの病気を…ナントカカントカの就職が…」と、祈願を頼んだ人のお願いを神様に伝言タイムになっていた。神様も大変です。


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昼過ぎの電車に乗らなくてはならないので、サクサクと山道を下ります。あの茶色くて巨大な屋根が金峯山寺蔵王殿か…。
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道沿いには吉野葛や草餅を売るみやげ物屋や食堂が並びます。このお店は山野草の無人販売所のようですね。
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クワガタやマンガもなぜか売られていて楽しい。越冬したクワガタを見ると『クワガタクワジ物語』という本を思い出します。すごい大事に育てて長生きさせるんだけど、ある日うっかりバルサンかなんか焚いて死んじゃうんだよ…*1


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ひとつ谷を越えたところにあるので迷いましたが、如意輪寺にも思い切って足をのばしてみることに。日陰にはシャガの花がたくさん咲いています。
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後醍醐天皇自作の木像、特別公開中ですよ〜」
なにやら神々しい白猫さまが客引きしている。
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白猫さま「また道に迷った若人がひとりやってきたようじゃな。なまねこなまねこ」
メレ子「いや、特に迷わずに来れましたが…」
白猫さま「人生の道のことを言うておるのじゃこのスコタンが。しかし拝観すればうぬの頭の霧もなんぼか晴れようぞ」
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人間みたいな顔をした白猫にボロクソ言われるがまま拝観受付に向かうと、ここにはよだれかけをした黒い猫が!
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「この鐘ならしたらビックリするかしらね〜」と、観光客のおばちゃんにおなかの横の鐘をチーンと鳴らされても平然としている。
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よだれかけ猫をなでくりまわしていると、お寺の人が「きたなくてすみませんねー。朝お風呂に入れたんですけど、すぐホコリまみれになっちゃって…なんかまだ微妙に湿ってるし。ホラ、外で乾かしてきなさい」とのこと。お寺の猫だけあって逆らわずに沐浴するのか…。白猫とよだれかけ猫はきょうだいだそうです。
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拝観を済ませて出てくると、白猫さまがカナヘビにねらいをつけています。
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「わしは寺のものじゃによって殺生はせんのじゃ…決してカナヘビをつかまえそこねたというわけではない…それはそうと今から瞑想に入るのでジャマはせんように」
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よだ猫「ん?ぬしは道に迷うておるのか?人生相談にでも乗っちゃろうか?なまねこなまねこ」
メレ子「いや、間に合ってますが…」
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メレ子「…それで『どこに行ってた』っていうから『ちょっとトイレに』って言ったら『違う。”いつものお前が”や』って言うんですよ…何なのその陶酔系のお説教は…っていうかいつもの私をどんだけ知っているのかって感じですよね〜」
よだ猫「フンフン」
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よだ猫「まあ人間のことは猫にはよくわかんないけど、マタタビでもなめたらええんと違うかな?」
メレ子「ガビーン!」


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猫に突き放されたので、みやげもの街のほうに戻ってきました。次に訪れたのは藤井利三郎薬房。役行者が作ったとされる胃腸薬『陀羅尼助丸』を売るお店のひとつです。登録商標の三足蛙の木像がかっこいい。
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お昼ごはんに食べた柿の葉寿司が少々あやしかった(前日に買って食べ時を失っていた)ので、いつ必要になるやもと思いひとつ購入。ちなみに柿の葉寿司は、自分にとって買うことが自然すぎるのでいつも撮り忘れるのですが、奈良に行くと必ずといっていいほど食べています…柿の葉寿司はおいしいなあ…。


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後醍醐天皇南朝の拠点にしたり義経静御前と別れを惜しんだり、豊臣秀吉が花見をしたりした吉水神社です。いろいろ面白いものがありますが、写真撮影もとくに禁じられていないおおらかさ。
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役行者が従えているのは前鬼・後鬼という夫婦の鬼です。わたしが吉野のあとに向かう天川村・洞川(どろがわ)地区の人たちは後鬼の子孫だという伝説があるそうですよ。いいなあ…わたしも鬼や天狗の血を引いてみたい!


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そしてついに国宝の金峯山寺(きんぷせんじ)・蔵王堂へ。檜皮葺きが美しく、建築のことはよくわかりませんがすごくかっこいい…。吉野・大峯山系は古来より知られた霊峰で、役行者蔵王権現を感得して桜に刻んだのち、大峯山寺本堂と金峯山寺蔵王堂にそれぞれ祀りました。それで大峯山寺を「山上の蔵王堂」、金峯山寺を「山下(さんげ)の蔵王堂」と呼んだそうです。
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これまでに6回焼失しており、今の蔵王堂は豊臣家の寄進で1592年に建立されたものだといいます。柱には杉や松から梨など、さまざまな木が使われていますが、なんとツツジの柱まであります。信じられない…ツツジにこんな巨木があったなんて…。今じゃ到底お目にかかれませんね。


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帰りはロープウェーで吉野駅まで下ります。桜が満開のころにはとてもロープウェーには乗れないくらい人でごった返すそうですが、いつかまた来てみたいものです。
このあと旅は大峯山のふもとにある洞川(どろがわ)温泉につづくわけですが、それはまた別の記事で!


吉野山 -a set on flickr-

*1:おぼろげな記憶なので違ったらすみません…