沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

巨大ナナフシから蝶の幻想的な乱舞まで!雨季のベトナムの森に泊まる

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↑巨大ナナフシと遊ぶブロッガー
雨季のハノイでハスのつぼみを摘んで蓮茶を作っているところを見たり、道端でフォーを食べたり、ベトナム雑貨を買いあさったりと命のかぎり楽しんできました。中でも印象に残っているのは、ハノイ郊外の国立公園に一泊して一生分の蝶を見たことです。上の写真のように巨大ナナフシを頭にのせたり、やはり熱帯は虫天国でした…!

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ハノイに着いた日の夜、ホテルで「明日ハノイに台風が直撃するらしいんですがどうしましょう…」という電話を受けて本当にどうしましょう…死にたい…と思ったが翌日はきれいに晴れました。生きててよかった!夢をあきらめない!
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ハノイ市内は歩き回ったりタクシーで観光できますが、これから行くクックフーン国立公園というテンション高めの場所には車で三時間半ほどかかるので現地ツアーをお願いしています。ホテルが朝食つきのプランなので、朝のお弁当を持たせてくれました。ただのサンドイッチだけど、噂どおり(旧フランス植民地なので)パンがおいしい気がする…。
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三時間半はさすがに飽きるかなーと思っていたのですが、見たことのない景色ばかりすぎてまったく飽きなかった!車から写真を撮ったり五時起きなので寝たりしている間に着いてしまいました。日本語ガイドが運転してくれるのかと思いきや、ガイドとドライバーは別の人でえらい殿様旅行である。
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ガイドさんは「ワタシはクックフーンに行くのは初めてです。昨日、インターネットでいっぱい予習してきました!」と、ベトナム語でビッシリ書いたアンチョコを持っていた。ここが国立公園のビジターセンターの入り口です。
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「さすが熱帯、そこいらに蝶が飛んでるね〜」などと言いながら撮った写真。今にして思えば、この程度で喜んでいた時代がありました…。
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ビジターセンターには国立公園にいる動物の絵や写真などが展示してあります。絶滅が危惧されている霊長類の保護施設などがあるらしい。猫科の大形動物やアルマジロ、コノハムシの絵まであって胸が躍ります。コノハムシ、結局見られなかったけどきっと木の葉度が高すぎるのだと思う…きっと半径1メートルくらいにニアミスした瞬間もあったに違いない(ささやかなオプチミズム)
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霊長類保護施設を見たあと、宿泊棟に移動して昼食、午後に森林トレッキングだという。まずは霊長類保護施設に向かいます。左は英語ができるネイチャーガイドさんで、右が日本語ツアーガイドのゴックさんです。

絶滅しそうな美麗な猿たちを見る

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じっとりした熱帯雨林の中に金網の檻があって、ひとつがいずつ猿が入れられています。猿ってリスザルとか凶悪だし、あんまり動物の中では好きなほうじゃないなーと思っていましたが、さすが珍しい猿、見かけも特徴的できれいなものが多いです。ガイドさんは「この施設にはたくさんの絶滅しそうなレイチョウがいます」って言ってて、たぶん猿=レイチョウになってしまっているな…と思ったがアドバイスするタイミングを逃した。
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「お母ちゃん」
「なんだい」
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「大きくなったらお母ちゃんみたくフサフサになりたいんじゃけど、あんなツルツルになったらどうしよう…」
「安心おし」
メレ子「人間の女は人工的にツルツルにしたりしていろいろがんばってるんだよ!」
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こんなきれいな毛皮なら着ててもいいかもしれないが…
「まばらなのはよくないよねー」
メレ子「そう!まばら、ダメ絶対!」
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檻のあるエリアと森は電気柵に隔てられています。猿が森に逃げないようにしているのではなく、森に帰した猿が戻ってきてしまわないようにしているんだそうです。レンジャーが傷ついた猿を保護して怪我を治してやる棟もあるらしい。


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美しい猿も気になるが、やはり熱帯の森林、いたるところにかわいい虫が!これはキンカメムシの幼虫だ!ボタンにしてしまいたいですね〜(「わたしってサバサバしてるので女の人から嫌われやすいんですよ〜」と自慢されたときなどにキュートな催涙スプレーとして使用)
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バッタもクモも日本にいるのよりずっとカラフルだ!オオジョロウグモ八重山でも見たけどやっぱりおぞましい!
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メレ子「カタツムリも日本のと全然違う…!ミラクル…!!!」
ネイチャーガイドさん「(この日本人は猿より虫が好きなのか…)イッツスネイル」
ゴックさん「それは『でんでんむし』ですね」
メレ子「オウ!でんでんむしの歌を聴いたんですか?」
ゴックさん「?? 日本にはでんでんむしの歌がありますか?」
メレ子の話術の拙さのせいで話がいっそうややこしくなりました。
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ネイチャーガイドさん「ルックルック」
メレ子「こんにちは?」
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メレ子「ギャーーーー!!!」
これは…日本でいうところのカマドウマの大群!!!小さいときふと縁の下をのぞいたらわだかまる異常なシルエットに震え上がり、図解して家族に説明するも誰も取り合ってくれないため、単騎出動して縁の下に虫捕り網をつっこんだ時の恐怖が甦りますね〜

昆虫王国・ベトナムと、意外とリゾートな水辺のゲストハウス

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「この日本人は虫を見せると喜ぶ」と理解したガイドさんたちは、道すがらいろんな虫を捕まえてみせてくれるようになりました。これはジンガサハムシの仲間ですね。
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その辺の木をじっと見るだけででっかいナナフシがたくさん!頭にものせ放題!
ゴックさん「日本人はだいたい虫が好きですね」
メレ子「そうですね!日本人はすごい虫が好きです!!」
テンションが上がって主語を大きくしてしまったため、ゴックさんがこれから日本人観光客に虫を薦めまくって引かれないといいのですが…でも日本人は欧米人とかよりは虫好き平均値が高そうな気がする。
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卑猥な形状の毛虫!
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アリ塚!
「いつまでたってもきれいな蝶が出てこないばかりかカマドウマなど見せられてどうなってるんだ」という声が聞こえてきますが…蝶も大量に集まるとけっこう気持ち悪いので安心してゆるゆるとお進みくださいませ。


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また車に乗って、ゲストハウスのあるマック湖というところにやってきました。予想と違って奥多摩湖なみにリゾーティーな感じである。
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この高床式の建物は、国立公園の奥に住むムオン族という少数民族の家を模したものらしい。団体さん用でしょうか。
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これが今日泊まるゲストハウスです。湖に面しています。
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ベトナムのジャングルのゲストハウスということで、虫に刺されまくりとかエアコンなしとかも覚悟していたのですが立派すぎるくらいに立派だ!
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「時間になったら食堂に来てください」とのことなので、カメラを抱えてうろつきまわる。
メレ子「もっとジャンゴーな雰囲気かと思っていたけど、奥多摩なみに整備されちょるのう…しかし奥多摩の500倍虫がいるのでアドレナリンが噴き出しますなー。おっ、白鳥ボートまであるじゃないの」
何気なくボートのほうへ石段を下りていくと…
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…!!!
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蝶たちが水たまりで一心不乱に吸水祭を繰り広げていました。
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青いのはミカドアゲハ、右の黄色くてかわいいのはオナガタイマイだと思います(「ベトナム 蝶」で必死でブログ検索して調べた)。ハー…もう死んでもいいわ…
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ワニまでいてぶちたまげましたが、これは住んでるわけではなく食べるために飼っているのだといいます。食べてみたかった(もしかしたら出された料理の中に入ってたかもしれませんが、多分イベントなどでつぶすものだと思う)


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時間になったので食堂へ。熱帯の密林体験さえできればよかったし、とにかく事前情報が少なかったのでごはんも全然期待していなかった。インスタントっぽいヌードルとかそんなものかと思っていたら、
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とても食べきれない量を出されてびっくり。ライムを絞った塩で食べる鶏がおいしかったです。ベトナム料理はライムをよく使いますが、蒸し暑い中にもさっぱりした気分になります。


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昼食を食べてからさっそくトレッキングに行くのかと思ったら、午後のツアーには一時間ほどあるそう。ガイドさんたちも休んでいる間、さらに湖の周囲を探検することにしました。これはワニのいる囲いで吸水していたシロチョウたち。
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脱皮したての巨大バッタ。10センチくらいあって超立派なのですが、残念なことに肝心の後脚が脱皮に失敗して片方もげている…転職をきっかけにキャリアアッpとかなんとか人間に例えてうまいこと言いたい気持ちに駆られますが、なんだか暗くなるのでやめておきましょう…
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湖を一周しながらさらにいろいろな蝶を撮ってまわったのですが、これを見つけたときは興奮しました。翅の一部がスケスケになっているスソビキアゲハです。吸水しながら断続的に水を排泄している。ポンピングというらしいです。人間も夏とかこれができたら涼しそうだ。
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左がシロスソビキアゲハ、右がアオスソビキアゲハ。尻尾が長いため、飛び方もすごく不思議な感じでした。
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アゲハ、シジミ、シロチョウなど似た種類で集まりたい気持ちがあるように見える。
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蝶たちが、飲めや歌えの無礼講(俳句)

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非常に満足してゲストハウスの近くに戻ってくると…なんか宴会の気配!
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最高に絵にならない…が史上最高の密度で蝶たちのキャンプファイヤーが!
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とにかく息を殺してじりじり近づきます。
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「今日はわたしのおごりということで無礼講で飲んでくれたまえ」「本当に無礼をはたらくとガン切れする奴に限ってこう言うのはなぜ…」
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「課長のコール、古すぎてのろうにものれないんだよねー」
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「ミカド山とシロチョウ子どこいった」「二頭で雑木林にフケたよ」「シロチョウ子ちょっと狙ってたのに…」
メレ子「楽しくなさそうなことでは人間の飲み会と大差ないな!」
蝶「「「「「ギャーーーー」」」」」
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思わず感想を口にした瞬間、蝶たちはみんな逃げ去ってしまいました。それにしても蝶は人工物から吸水するのが好きなのね…湿度とかがちょうどいいんだろうか。
この時点でもはや気分は余生すぎて森に何がいようが驚かないという気持ちでしたが、やはり森でもいろいろとビックリさせられてしまったのでした。

熱帯雨林のトレッキングとシロチョウの大量乱舞

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いよいよ熱帯雨林へのトレッキング。基本的に観光中は待機していたドライバーのマインさんも一緒に行きたいということで同行することになりました。酔狂すぎるコースを案内させてしまっているので、ちょっとでも楽しんでもらえてるのなら何より…と思った。
このツアーは通常はハノイからの日帰りで「巨大樹に出会う旅」として催行されています。熱帯の森でゆっくり虫探ししてみたかったのと、同じニンビン州にあるタムコックにも行きたかったので、メールで見積をもらって一泊ツアーにしてもらいました。巨大樹への往復は3時間弱で、ガイドなしで歩いているベトナム人カップルも見かけたので、決まったコースを歩いてる限りはハードなジャングルというわけではないのです。
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さっそく出てきたいかついナナフシ
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樹にツルが巻きついているように見えますが、この植物は樹本体を覆いつくし、やがて中の樹が朽ちて空洞になってしまいます。絞め殺し植物です。女たるものこうありたいものですね…
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「これは上がオスで下がメスです。女が強いの、ベトナムの女と同じです」とのこと。ベトナムの女性は強い、というのはガイドブックにも書いてありましたが、3泊5日の日程ではそんなディープなところまでは実感できなかった。
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森ゴキブリ。やはり人家にいるものの数倍気立てがよさそうです。
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雨季のベトナムはスコールが怖いし、「雨の森にはヒルが出る」と脅されて、この日のために大枚はたいて買ったゴアテックスを着こんでいるメレ山。しかしエアコンのきいた車内から外に出た瞬間メガネが曇るほど湿度が高いので滝汗が流れます。ネイチャーガイドさんは半袖で普通に歩いている。
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3、4匹は見かけたキノボリトカゲ。森ゴキブリを食べているのだろうか。
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やはり生き物を見つける技術はネイチャーガイドさんがピカイチ。この葉っぱがつまった穴はネズミの巣だそうです。他にも1キロにわたって生えている植物について教えてくれたり、シナモンの仲間の葉を揉んで匂いをかがせてくれたりと植物知識も豊富。


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巨大樹まであと一歩というところで休憩所みたいになっている場所にやってくると…
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山おやつのホワイトチョコまで置いてあって至れり尽くせりですね〜。それにしてもカタツムリの種類が豊富です。
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わかるようなわからんようなエコメッセージと、ベトナムのヤングによる落書き。
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やっと巨大樹に到着しました!
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1000年樹と呼ばれる巨木です。周5.5m、高さ45mにもなるとのこと。
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しかしメレ山の視線は巨大樹よりもその囲いにとまった不思議なシジミチョウに釘付け…Zeltus amasaという蝶のようです。こんな羽衣みたいなシッポ、飛びにくさ全開だろうに…実際そよ風でもつらそうにしていた。
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これはジャングル・クイーンと呼ばれる蝶らしい。


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「おつかれ!ジャングルおいしかった??」
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「ジャングルは食べ物じゃないよ」
「へぇー」
森の入り口で異業種交流を強いられるわたし。雨具は結局脱いでしまいましたが、ヒルとの異業種交流はなかったのでよかった。


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7500年前の人骨が見つかったというコンモーン洞窟にも連れて行ってもらいました。
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コウモリやカタツムリもいるけど、意外とカラッとしていて奥行きも広く、確かに住みやすそうな雰囲気。そういえば森の17キロ奥には少数民族の住む家があって、17キロ歩く体力があればステイもできるのだそう。この公園、引き出しが多すぎる!
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鍾乳石セッションに参加させられるメレ山。このあと懐中電灯をすべて消されたのですが、自分の手も見えない完全な闇でおそろしかった…。


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車での帰り道、ゴックさんがいきなり「とめてください!!!」と叫んだので忘れ物でもしたのかと思ったら、なんと道端に蝶だまりが!
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うわああああ
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撮るだけは飽き足らず、ミーハー心でにじりよるわたくし。蝶に囲まれて写真を撮るなどというファンシーなシチュエーションですが、戦場カメラマンみたいな格好なのが悔やまれる。
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ゴックさんが「蝶が羽ばたいたところを撮るべきだ」と主張、実際すごいことになりました。ゴックさんの行動がどんどん虫好きのひとのそれになってきているのですが、この一日で虫が好きになってきたのか、ガイドとして有能すぎるのか(たぶん後者)
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ハズレ馬券のごとく舞い狂う蝶に終盤はちょっと恐怖すら感じましたが、なかなか見られないものを見た!大満足の一言でした。

羽アリのはばたきで朝も早起き!

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ゲストハウスに戻り、シャワーを浴びて休憩したあと夕食。これも到底食べられない量。横のテーブルにいた欧米人四人組と同じ量だったので、人数に関わらず定量でごはんを出すという微妙な効率化が推進されている。
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食堂は窓も扉も開けっ放しなので、虫が飛びこんできたり犬がテンション上がってたりしてにぎやかです。
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湖畔には日本のより強い光で明滅しながら飛ぶホタルもいました。夜具を見ると蚊帳がセットになっていたので、「虫は見当たらんけどねー」と言いながらさっそく吊るしてみる。これは楽しい!


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朝方、なんかバタバタうるさいので目が覚める。わずかな灯りも森の中では巨大な光源となってしまったようで、羽アリがたくさん不法侵入して床でジタバタしているのであった…いやはや、蚊帳があって本当によかった!
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朝の散歩で見つけたトンボは触角が蝶みたい。とにかく蝶やバッタが多いけど、甲虫のたぐいはほとんど見かけませんでしたね。もっと森の奥に行けばまた違うのでしょうか。

大量の蝶に出会うには

これを読んで自分も大量の蝶や巨大ナナフシが見たい!と思った方がどれだけいるのかわかりませんが、こたびの手配窓口を書いておきます。
スケッチトラベル
ハノイホーチミンにデスクがある日系旅行社です。ベトナム情報を検索していたら、ベトナムスケッチの在住者・旅行者口コミがけっこう参考になったのでそのまま問い合わせて申しこみしました。一泊でクックフーン国立公園とタムコックという景勝地をめぐるプランを見積もりしてもらったら一人200ドル弱でした。ちなみに航空券と宿泊も、ラヴィプラスという姉妹サイトで手配しています。変則的な問い合わせにも丁寧に答えてもらえたし、上記のとおり安心して楽しめたのでおすすめです。
関連リンク:自然と歴史に抱かれて ニンビンの休日ベトナムスケッチのクックフーン国立公園に関する特集ページ
ベトナム北部はいま雨季なのでクソ蒸し暑い上にスコールも降りますが、蝶が活発でベトナムの国花・蓮が咲きまくるのもこの季節。雨季ならではの楽しみもたくさんありましたので、ひきつづき大容量で更新していきたいと思います。


Vietnum-クックフーン国立公園 -a set on flickr-