メレンゲが腐るほど恋したい

旅行記や生きものの話を写真多めの長大な記事で送ります

チョウの異常発生と、毛が異常発生した犬を見てきた

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今年の6月、人知れず青森でとんでもないことが起こっていました…「アカシジミ」というチョウの大発生です。山の稜線をぼやけさせる勢いの小さなシジミチョウの群れは、もはやホラーでした。ひょんなことからチョウの専門家に同行し、この貴重なイベントを目の当たりにすることができたのでレポートします。青森ということで、毛が異常発生している秋田犬とその飼い主さんにもご挨拶してきました。

チョウ保全協会のこと

寄稿させていただいたチョウ類保全協会ニュースレター「チョウの舞う自然」13号が届きました。
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日本チョウ類保全協会
日本チョウ類保全協会は、チョウをバロメーターにして環境の保全活動を行うNPO法人です。お話をいただいたときは、「自然保護団体といってもいろいろあるようだし、大丈夫かしら…」という気持ちもありましたが、ニュースレター編集部の永幡さんに「クマにあげるためにドングリを山にばらまいたりはしないですよね?」と確認したところ、ものすごい拒絶反応があったのでひと安心しました。
ニュースレターは年2回発行されています。「なんとなくチョウや自然に興味がある」という人にも参加してみてほしいのだけど、ニュースレターは専門的な話題が多めで、ちょっと敷居が高いところもあったそう。というわけで、「旅先で見つけたありふれた虫のことなど、いつもの調子でやってみてくれませんか?」と言われ「いつものシロウト丸出し珍道中でいいってことですね!」と快諾したわけです。
大幅にリニューアルされたニュースレター、目に楽しく、ハイレベルな内容もがっつりおさえています。A4フルカラー・24ページのおおまかな内容は

今回はアオスソビキアゲハという、翅の一部が透明なチョウが排尿しているところをとらえた美麗な見開き写真。撮影地はベトナムのクックフーン国立公園、そう!海野さんはわたしのクックフーン国立公園旅行記を見て翌日にはベトナム行きを手配されていたんですよ!!個人的にも非常にうれしい一枚でした。

  • 津波の爪跡〜自然界に何が起こったのか〜(永幡嘉之さん)

東日本大震災の大津波は、人だけでなく動植物にも多くの影響を与えているというレポートです。自然写真家の永幡さんは、震災以降は環境への影響を調査するため海岸線を飛び回っておられます。現代は土地利用の細分化が進んでいるため、従来の大津波と違い湿地が寸断されたままになり、棲息するトンボなどの生物は後背湿地に移動することができません。そのため、局地的な絶滅が相次いでいるそうです。

  • チョウ類の生態研究の現場から〜フィンランド・オーランド諸島に生息するグランヴィルヒョウモンモドキとその寄生蜂〜(平井規央さん)

チョウに寄生するハチの雌雄産み分け行動について調査するため、アメリカの学者さんと現地で共同研究を行った様子が記されています。寄生蜂の種類についても書かれていますがこれがヤバい…

    • 年一世代の寄主に3世代にわたって寄生
    • 寄主の体内で別種の寄生蜂が争うことも
    • 一次寄主(チョウ)の体内にいる二次寄主(寄生蜂)に発生する「真の高次寄生者」と呼ばれるものもいる

と阿鼻叫喚。これらの寄生者の動向が、寄主のメタ個体群(生息地がネットワークでつながり、遺伝的交流をもつ個体群)に影響していそうだということで、なぜかはてなブックマークのメタブクマ論争を思い起こして戦慄いたしました。

  • メレ山メレ子の東方りんぷん録(メレ山メレ子)

房総を走る小湊鉄道に乗って、あるうららかな春の日にベニシジミなどを観察しに行きました。知的な文章にまざってのこの場違い感!ベニシジミ・モンシロチョウ・スジグロシロチョウなどありふれたチョウばかり登場しますが、ベニシジミのカップルを凝視して気づいたあやしい行動などについても書いています。

  • 虫たちの不思議な世界(工藤誠也さん)

ブログ「青森の蝶たち」が有名な大学院生の工藤さんによる連載。第2回目はフジミドリシジミという、木漏れ陽に青緑色がきらめく美チョウです。工藤さんのスカシバの飛翔写真が凄すぎるのでぜひブログでご確認いただきたいのですが、誌面にもフジミドリシジミの飛翔写真が掲載されています。

ギフチョウなどの全国各地の保全活動レポートも充実しています。リニューアル2号目で震災の影響などもあり、当初予定を数ヶ月遅らせての刊行となりましたが、とてもすてきな会誌です。
ちなみに連載タイトルをなかなか決められず、ツイッターに「チョウに関する連載タイトルが決まらない…」と書いたところ

  • チョウのちょうっと良い話
  • 蝶帖
  • メレ子蝶々
  • チョウ能力少女メレ子
  • 食べるとこが少ない虫、蝶

など、珍奇なタイトル案をたくさんいただきました。どうもありがとうございます!
入手するには保全協会に入会いただく必要があるのですが、この機会に興味をもたれた方は入会してみてはいかがでしょうか?入会方法・年会費等の詳細は、日本チョウ類保全協会公式サイトにてご確認ください。

アカシジミの大発生を見に行く

そんなご縁で、永幡さんには新潮社「旅」の連載のアイデアをいただいたりとお世話になりっぱなしです。永幡さんは世界のブナの森というブログ名からもわかるように、世界のブナ林やロシアの昆虫をメインに活動されている山形在住の自然写真家です。もともと幅広く活動されていたのですが、震災後は上述のように、さらに忙しくしておられます。そんな中でも松島の奇跡的に津波被害をまぬかれた池を案内していただく計画を立てていたのですが、その予定を週末にひかえて電話がかかってきました。
永幡さん「大変なことになりました…」
メレ山「あ、松島行きむずかしいですか?」
永「今週松島に行けないのは行けないんですがとんでもないことです、どちらも一生に一度の風景ではありますが…メレ山さん、すみませんが青森に行き先を変更できませんか?」
メ「?????」
大興奮の永幡さんのお話によれば、

  • アカシジミというチョウが青森で大発生している
  • すごく珍しい現象なのでトップシークレット
  • 行かなければ一生後悔する

とのこと。ニュースレターでもアホ担当のわたしが、そんな貴重な機会に同行してよいのだろうか…と思いつつも、青森で集合させてもらうことになりました。ちなみに一次情報をくれたのは、ニュースレターにもご登場の工藤さんことze-phさんで、空港に父子で迎えにきていただきました!ブログ「青森の蝶たち」は実はお父さん:忠さん(celaさん)と息子さん:誠也さん(ze_phさん)の親子で運営されているのです。ゼフさんは蝶界のサラブレッドやで…


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青森空港についたのは土曜日の15時ころ。空港から車を走らせ、とある山道で車がとまりました。6月末の青森の空気はとてもさわやかですが、道なき道を登るイメージで山登りのかっこうをしてきたわたしがキョロキョロしていると…
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「ウワー!」
梢のあたりに、すごい数のオレンジ色が!!
celaさん「アカシジミは樹上性のゼフィルスで、夕方に活発になるんですよ。今はちょっと遅いですが活動時間帯です」
メレ子「こんなに!こんなにたくさん〜!!!」
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下を見てみると、こっちにも点々とチョウたちが落ちている。
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メ「みなさん交尾中ですね〜。車にひかれちゃう!」
celaさん「くっついちゃってるので思うように動けないんですよ。ちょっとわきによけてあげよう」
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メ「これがウワサのチツケイレンってやつかあ」
アカシジミ夫妻「虫はわりとそうですよ」
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celaさん「それにしても明らかに小さいのや形成不全の個体が多いね」
ze_phさん「ハチなんかの寄生者が増えてないっていうのが不思議だねー」
実は去年もこの場所で大量発生は起きていたのですが、普通は天敵も増えて翌年まで続かないところ、今年は去年と比べものにならないくらい多いそうですから不思議です。
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周囲にはふくらみかけのリンゴ畑が広がっています。
celaさん「本当にこんな条件の悪い場所になぜこんなにいるんだろう、不思議ですねえ」
メ「条件悪いですか?思ったよりひらけたところだけど、のどかな雰囲気ですが…」
c「リンゴ畑で今も殺虫剤を噴霧しているでしょう。チョウは昆虫の中でも環境の変化の影響を受けやすい生き物ですからね。最初にこの場所がアカシジミの発生スポットだとわかったのは、農家の方が役所に『なんだかオレンジのチョウがたくさん湧いてるんだけど、農作物に害はないのか』と問い合わせたのがきっかけなんですよ」
メ「気持ちはわかりますね。アップで見ればかわいいんだけど、こんなにたくさんいると…」
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それにしてもわたくし、そもそもアカシジミを見たことがなかったので、すごいけどありがたみが実感できているのかどうか…ウウ、真のチョウ好きにしばかれる日も近い…
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山形から永幡さんがようやく到着。青空をバックに写真を撮れなかったことを非常にくやしがっていましたが、明日もチャンスはあるということで気を取りなおし、路上を歩いてる個体を本気の姿勢で撮影されていました。

湿地とカシワ林の虫たち

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アカシジミが活動するのは夕方なので、翌日は朝から弘前周辺の虫スポットをめぐることに。岩木山をのぞむベンセ湿原に立ち寄りました。十三湖も近いこの地域には、たくさんの湖沼が広がっているのです。
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東北の湿地ということで、生き物いっぱいだった山形のじゅんさい池を思い出します。これは近年珍しくなりつつあるコウホネ(河骨)の花。
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そのコウホネを食べるカワホネネクイハムシは金属光沢がおしゃれ。葉っぱの表面に白い食痕を作ります。
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目盛りが入ったモノサシトンボ
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水生昆虫のタイコウチも手にとらせてもらいました。永幡さんがあまりにもたくさん虫を見つけてくれるので、写真におさめきれていない。
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永幡さん「まだお見せできてない虫があります…メレ子さんはルリセンチコガネなどのピカピカした虫がお好きなんでしたよね?オオルリハムシというハムシなんですが大きくて宝石みたい、そして日本海側でとれるものは本当に青藍色で美しいんです!」
メレ子「ホー、たとえばそれはこんな感じですか?(そばにいた米粒くらいの青紫色の虫を見せる)」
永「こ、これは…オオルリハムシはこんな小さくて汚い色ではないですよ…いま、強く『本物を絶対にお見せしなければ』と思いました!!」
メ「ガ、ガーン…」
時間の許すかぎり探していただいたのですが、この日はとうとう見つかりませんでした…(でも後日、山形で見つけていただきました)。永幡さんの虫に関する熱意がすごすぎるので、わたしはちょっと旅先の虫を適当に愛でているだけで虫ガールとか呼ばれて申し訳ない、そもそもガールですらないので路傍の石コロとかだがそれはそれで鉱物好きの人に申し訳ない、森羅万象の奥深さは無限大だ!


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次は津軽の屏風山砂丘のカシワ林へ。ここは砂丘の上にカシワが生えているという、非常に特殊な地形の地域らしい。
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日本海の風に耐えかねて、とても樹高の低いカシワ林。林冠をこんな風に一望できるなんてとても妙な気分…
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でも足元には砂浜の花が咲いている。
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日本海だー!もう向こうに見えるのは北海道の大地!!
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虫エリートのみなさんはカシワアカシジミ(キタアカシジミ)という、アカシジミの親戚的な貴重なチョウをぜひ撮りたいと思っていたのです。celaさんの秘密のスポットに移動し、ついに羽化したての美しい個体を発見し大興奮。わたしもがんばって撮らせてもらいましたが、これは昨日イッパイいたのとは違うんですか?昨日のはクヌギやコナラにとまっていた、今日のはカシワにとまっている、ザッツオールとしか思えないんですが…わかっちゃいたけどワイ、落ちこぼれや…カシワアカシジミはロシアではよく見られるチョウですが、本土ではすごく数が少なくなっているんだそうです。

毛が異常発生の犬とそのライバル、浜辺の対決

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弘前から鯵ヶ沢までは目と鼻の先…というわけで、わたしのせいで見物人が異常発生していて申し訳ないことでおなじみの先生を訪ねさせていただきました。
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あいかわらず局地的に毛が異常発生しているわさお(旧名レオ)先生。「わさおの秘書」こと公式ブログ管理人でもある吟さんに前夜ご連絡したところ、急なお願いにも関わらず駆けつけていただきました。
先生の最近のお気に入りはヌイグルミで、小屋の中は死屍累々です。見学者は先生が本来は猛獣系の方だということを肝に銘じていただき、マナーを守ってほしいです。
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わさおのお母さんこと節子さんもお元気そうでした。仔猫の里親をお世話しています。わさおの前にも何頭もの犬を育てていただけあり、相変わらず無類の動物好きです。昨年は鯵ヶ沢メロンを10個も送っていただき、ありがとうございました!
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「なにワシらのスイートタイムじゃましてくれちゃってんの?」
先生は非常にイヤそうですが、特別に砂浜の散歩に同行させていただきました。
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節子さんにうながされて海に入ってみたものの、そこまで乗り気ではない様子。
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わざわざゼフさんのそばに行って水を切る先生。さすがです。
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かと思えば、ものすごい念入りに汚すッ
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一同「ドヤ顔…」「ドヤ顔だ…」
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おそれおおくも先生とのツーショットを企てる野良ブロガー
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一見ちょっといい感じに見えますが、先生の耳が寝ているのはイヤなときのサインですし、一瞬かすかに唸っていたのをわたしは聞きのがさなかった。
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わさお「アンタちゃんとイカ焼き買って食べたの?」
メレ子「あ、あとでかならず…モチモチしてておいしいですよね…」
わ「ワタシのがんばりがイカの売り上げに意外とつながってないという事態が憂慮されているんだよね。アンタの泡沫ブログでちゃんと言っといてくれる」
メ「ハイ!先生のお姿だけ拝んでイカを買わないなんて、とんでもない不届き者です!」
さすが、映画でクマと戦ってただけのことあるワ…あのシーン、試写会で観たときはアゴがはずれたけど、もうあのシーンしか思い出せない…


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散歩を終えて軽トラにふたたびわさおが積まれたそのとき、お母さんがすごい勢いでわさおを叱咤しはじめました。え?え、何?
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吟さん「あっちからきた軽トラのラブラドールがわさおのライバルなんです。この前もケンカをふっかけようとして、お母さんになまら叱られて一日へこんでたんですよ」
メレ子「え、でも…」
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節子さん「わさお!!!いげねって言うたでしょ!コラッ」
わさお「!」
メレ子「!!!!!」
ほんとに叩いてはいないものの、めっちゃ怒られてる…
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節「わさお!お手!!」
わ「…(ショボーン)」
メ「実際にケンカしたわけじゃないのに、そんなに怒られるんですか…」
吟「さっき腹の底から唸っちゃいましたからねー。わさおも壮年期ですから、しつけが大事な時期らしいんですよ。お母さんも全力で向き合うから大変です」
メ「そうなんだ…」
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見にくる人の安全を守るためにわさおがすごくしつけられているのを見ると、どうしても「来る人のしつけは大丈夫なのかな?」と思ってしまいますが…節子さん・吟さんらのたいへんな努力のおかげでで元気に暮らせているようです。
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見学の方は大声を出さない・手やものを出さない・ペットを連れてこないなど、マナーを守ってご見学くださいね。あと、砂浜や海鳥やわさお以外の美しい風景とイカ焼きもよろしくお願いいたします!

アカシジミふたたび

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そんなこんなの過密スケジュールで、すっかりいい時間に…昨日のポイントにふたたび向かいます。一本の木に群れているわけではなく、ほとんど山全体の樹上にアカシジミが乱舞しているのである。
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正直ちょっと気持ち悪い!ハエみたい!というと、ハエ屋さんからも投石されそうだ。
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かろうじて、岩木山をバックに見られるポイントも…しかし前日より曇りがちで、太陽を逃した永幡さんの口惜しさもひとしお。
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ゼフさんに「フキの葉ミメシス(隠蔽性擬態)」と評されたわたしのパーカー
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やがてどうでもよくなり、座りこんで眺めはじめる一同。たぶん一生に一度の光景を前にしてのくつろぎタイム…この日は口づてにゼフさんの大学のお友達・先生など、数人が訪れてなごやかな雰囲気でした。ちなみに当初はトップシークレットだったこの大発生、新聞などでも報じられ、わりと早くオープンになりました(広まりきる頃には活動も盛りを過ぎていましたし)。
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目をつぶっても残像がちらつくような光景、貴重な機会に同席させていただき、ありがとうございました!


大発生に関するプロの写真は下記をごらんください、というか最初からこちらを見ていただいたほうがよく伝わった…!

  • 永幡さんのブログ:

アカシジミの大発生 | 世界のブナの森

  • ze_phさんのブログ:

青森の蝶たち::アカシジミの大発生2年目
青森の蝶たち::アカシジミの大発生(動画)