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メレンゲが腐るほど恋したい

旅行記や生きものの話を写真多めの長大な記事で送ります

昆虫英才教育がすごい!夢の保育園を見学した

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いまや他人事のようにおぼろげな記憶なのだが、幼稚園を登園拒否したあげくに転園したことがあります。
毎日のようにある知育っぽいテストが嫌だった。説明を聞いていないからエンゼルフィッシュの形の厚紙を台紙のどこに貼ったらいいかわからず、かといって周りに訊くこともできず、放り出して逃走することもできずに途方に暮れていた。豆まきの絵を描いて先生に持っていくと「建物の外も塗りなさい」といって突っ返されるのも嫌だった。夏服・冬服・合服とやたらにバリエーション豊かな制服も窮屈で嫌いだった(これは今見たらかわいいと思うはず)。ミドリガメに食パンをあげて池の面を油でギトギトにするのが好きだったが、みんなの輪に混じらずにいると先生が横にやってきて、はみだしっ子の心を開かせようといろいろな話をしてくるのが子供心にもきつかった。負担をかけているのを小さいながらビンビン感じた。
もともと親戚の強い推しで通っていた園で、ハイソな感じは両親の好みではなかったのもあり、ずっと近くの幼稚園に転園することになった。そこは今だとちょっと許されないようなゆるい雰囲気だった。ウサギが園舎内でなんとなく放されていることがよくあり、フンが建物内に点在していた。園長室の戸棚の裏で生まれた子ウサギを、こっそりのぞかせてもらったこともある。竹で組んでもらったイカダに好きにペンキを塗って浅い池に浮かべたり、敷地内にチョボチョボ流れる水路でアメンボをとったり、鳥小屋の裏で穴を掘っていたハチをプラスチックの容器に入れて飼ったり、楽しい思い出ばかりだ。つらい記憶といえば、給食ではじめて見た納豆ショックくらいである*1
そのまま黒柳徹子のように無頼派な人生を歩んでいたらなかなか良いエピソードになると思うのですが、自己肯定感を得たことが多少なりとも協調性を伸ばしたのか、その後は自分がつらすぎない程度に従順な人生を歩んでおります。ドシェー…と、ここで終わってしまっては読者を困惑させるばかりなのですが、先日ひょんなことから「もう一度通いなおしたい!どうしても無理なら来世で…」と思うような保育園を訪れる機会がありました。子供と虫の関わりについて考える一日でもあったので、ここでご紹介します!


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ニュースレターなどでお世話になっている日本チョウ類保全協会さん。その会合でお会いした佐伯元行さんは、保育園の園長先生をされているとのこと。
「うちでは子供たちに自然に触れ合ってほしいと思って、かなりの数の虫を飼っているんですよ」
と言われたのを聞きとがめ、「ぜひ一度見学させてくださいッ」と食いついて、訪問させていただくことになりました。もちろん保育園は平日に開園しているので、有休をとって行くのである。最近は職場で有休リクエストすると「虫?虫なの?」と言われるようになりましたが、もう「私用のため」ではなく「虫用のため」と申請したほうが早いかもしれないねェ…
国立あゆみ保育園
今回おじゃまする国立あゆみ保育園さんは、国立市矢川駅近くにあります。ウキウキしながらやってきましたが、インターホンを鳴らしてロックをあけていただくなど、自分の子供のころにはなかった厳重な雰囲気と大きな建物に、だんだん緊張してきた…


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保育士さんや事務員さんたちにご挨拶して、さっそく園内を見学させていただく。虫とふれあうところを見せてくれる予定の年中・年長さんたちは運動の時間なので、まずは佐伯園長先生の虫のお部屋から。
メレ山「それにしても大きな保育園ですね〜」
園長先生「職員は看護士や栄養士も含めると30人くらいで、子供たちは0才〜5才までで80人が定員ですね」
メ「ヒェー!」
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虫のお部屋で見せてもらったゲンゴロウ。やっぱりゲンゴロウは、目がつぶらでかわいいのう…
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虫部屋には標本や写真、虫の本などがいっぱいで、ここだけでも一日いてしまいそうな雰囲気である!ゲンゴロウを探して水槽を凝視するわたし
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このあと、手ずからニボシをあげることを許されご満悦でした。


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さらに、園庭にはチョウの温室が!
オオゴマダラスジグロカバマダラツマグロヒョウモンリュウキュウムラサキ、シロオビアゲハ、ナガサキアゲハなどのチョウがいるそうです。いいなあ…わたしもいつかリッチになったら自分の温室がほしいものだね…
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あとで園児たちに見せるのかな。
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リュウキュウアサギマダラの幼虫。
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こっちはリュウキュウアサギマダラのさなぎ。成虫もさわやかな水色をした、大きくて美しい蝶ですが、さなぎのこのパールみたいなのをつけたおめかしぶりは何なんだ!
ここでは植物専門で来られているという女性が、温室の手入れをされていました。
女性「園長先生、もう○○(なにかの食草)がないんですよ。とってきてください!」
園長先生「はい…今日メレ山さんを虫見に案内するから、その時とってきます…」
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チョウ温室の横にはクワガタ部屋も。
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選ばれし年長さんたちが、当番制でお世話をしているという。
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年長さんたちは責任感にあふれた面持ちで、水を霧吹きで吹いたりエサをかえたりしています。これは重大任務やで…
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おっ昆虫ゼリーだ、と思って写真を撮っていたら、子供たちが
「たべちゃダメなんだよ!」
「死んじゃうんだよ」
「すごいくるしい」
と口々に制止してくれて、ホームセンターに練炭を買いにいった人みたいになった。園長先生は「死なないし、そんなこと教えてないのに…」と苦笑していたけど、たぶん食べないように子供どうしで注意しあっているうちにそういうことになってしまったのであろう。


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お世話がひととおり終ったところで、園児のみんなにカブト虫・クワガタを回覧してみることになりました。ちなみに園児のみなさんの写真撮影については、園長先生が事前に保護者の方々に連絡していただいております。本当にありがとうございます。
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先生「カブトムシさんだよ〜」
園児「フオオ…」
殺到してもみくちゃになる外骨格動物!ヤメテ〜!みたいな雰囲気を想像していましたが、意外とみんな緊張している様子。そうだよね、外国のクワガタやカブトムシって、あまりにかっこよすぎて黒船っぽいよね…。でも興味はものすごくあるみたい。
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一匹ずつ順番に回覧。
先生「えーと、これはなにクワガタさんだったかなー」
園児A「ディディエールシカ〜」
園長先生「うお、将来有望だな!!」
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メレ子(ハッ、よく見たらディディエールシカクワガタ、絶賛交尾中…まだ性教育にはちょっと早いと思うがそのへんの質問が出たらヤバい!先生が困っちゃったらどうしよう…)
先生「ああ、クワガタさん結婚してるねえ」
児童が疑問を投げかけるまでもない速さ!さすがすぎる!
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ちょっと慣れてきたところで手持ちに挑戦。
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「おもい…」
すべてが桁外れの生きものを前に、みなぎる緊張感…
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「(爪が)いたい…」
勇者たちが次々と名乗りをあげるも、基本的にはさわるのが限界の様子。興味はあるようなので、慣れの問題かな。
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子供たちと虫の距離感についていろいろ言っているが、わたしと子供たちとの距離感もまだまだ空いている…虫以上に見慣れない生きものの登場を、子供たちがどう思っているのかとか考えるとつい気後れしてしまうのである。ここに伺うにあたって、いちばんの懸念事項は「メレ山の子供経験値が低すぎる」ということであったが、はたして仲良くなれないまま終わるのか…


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温室じゃないところにも、虫を呼ぶための配慮があります。
メレ子「先生、この積んであるのは何ですか?」
園長先生「園庭の落ち葉を掃いたり余分な枝を落としたものを、ごみに出さないでわざと積んでおくんです。下の方からだんだんいい土になって、カブトムシやカミキリムシにももちろんいいんだけど、蝶や蛾にもこういう枯葉の下で冬を越すものがいるんですよ。いろんな虫のすみかになるんです」
メ「なるほど!食草を植えるだけじゃなくて、隠れ場所を作るのもバタフライガーデンの極意なんですね〜」


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次はいちばん年長さんである5歳児が集う「ゆり組」に移動して見学させてもらう。園長先生が「僕も幼いころは絵を少し描いていたんですが、彼も芸術家なんですよ」とおっしゃっていたとおり、マグネットと絵を組み合わせた虫の学習をしています。
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しずかに見学していると…
先生「じゃあ、今日は虫のことを教えてくれる虫の先生が来てくれましたー!みんな、ごあいさつ練習したよね?」
園児「しってる!『めれやまめれこ』だ!!」
メレ山「ヒッ」
先生「呼び捨てにしないの!じゃあみんなでごあいさつしましょう」
園児たち「「「め れ や ま め れ こ さん こ ん に ち は 〜」」」
メレ山「あわわわわ…こ、こんにちは…」
虫界のさかなクン的なご紹介にあずかり、頭が真っ白に…どうしよう、この期待に満ちたまなざしをどう受け止めたらいいの…わたしは虫博士界に出入りしてるだけで、ぜんぜん虫博士じゃないんだよ…脳内を「さかなクン」「しょうこお姉さん」「くまモン」など、子供たちの人気者が次々とよぎる。この日ほど彼らになりたいと思ったことはなかった!!


先生「じゃあメレ子さんに虫の質問をしてみよう」
メレ子「オオ…」
園児A「なんのむしが、いちばんすきですかー!」
メ「えーとえーと…ハッ、今はアゲハチョウを飼ってます。いもむしがとってもかわいいですよ」
園児B「どんないろ〜?」
メ「赤と青と黄色と黒のまだらで、とってもきれいなチョウだよ!」
園児C「ふつうのアゲハかぁ〜!」
メ「ウッ…そうなの…」
これはハードモードすぎる…死にたい…と思っていると


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園児D「ありさんかってるの〜!」
園児E「たまごもうんだの〜」
メレ子「えっ、ほんと?見せて見せて!!」
園児のみなさんに披露していただくモードになったことで難を逃れました。
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この箱にアリさんが入っているという。「そっとしておいて(ハート)」「たきめのさん」「たまたまちゃん」うん…君らに訊きたいことがいっぱいあるよ…
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先生が飼育箱を開けると、子供たちがバーッと集合、ものすごいことに!先生が「(アリの入ったケースを)そっとさわって、ね!」と懇願するも、ぜんぜん聞いていない。クワガタやカブトムシよりも小さいからか、普段からふれあっているせいか、遠慮という言葉は辞書にない状況。
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子供たちが弾丸のようにアリについて説明してくれたのですが、結局ほとんど情報を得られなかった…しかし「このアリはワシが育てた」という星野仙一的な誇りをもっていることが伝わり、とても楽しい気持ちになったし、わたしが子供たちをえらいなーと思ったことも彼らに伝わったのか、ここからぐっと親密さが増していろいろ話しかけてくれるようになったのでよかったです。
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壁にはアリ観察の様子も掲示されています。園長の佐伯先生は、高校生のときはアリを専門にされていたのだそう。それでこうしてアリを飼うことになったのですね。
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アリの名前は民主主義的多数決で決定されたそうだ。先生によれば「『たまたまちゃん』はたくさん卵をうむようにという願いをこめた名前らしいですが、『たきめのさん』はちょっと由来はわからないです…」とのこと。名前とはこういうものという固定観念から、まだ自由なんでしょうね。


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ゆり組をおいとまし、となりの4歳児がつどう「らん組」へ。ここではダンゴ虫のお絵かきがはじまろうとしていた。
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まずは対象をじっくり観察。「ダンゴ虫のおうちは?」「はっぱー」「葉っぱの色は?」「くろ」「ちゃいろ」
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画用紙が配られ、いよいよお絵かきタイムに突入。おっ、お嬢さん早いしうまいねえ!
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下のフカフカした土が気になるのか、そこから描く子もいる。
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持ってきて見せてくれるお嬢さんも!
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メレ子「まんなかのは??」
園児「じぶん」
メ「なるほどー!いいね!なかよしだ!!」
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最初は黒や茶色を使っていた子たちも、だんだん多色を使いはじめるのは、自分の好きな色でいとしいダンゴ虫を描いてあげたいと思っているのではないか、と見えた。
写真を撮りわすれたのですが、四角いものをいっぱい描いている子に「それなーに?」とたずねたところ「だんごむしのうんこ!!」という答えが返ってきてビックリしました。わたしも小さいころからダンゴ虫にはずいぶん遊んでもらった(いっぱい殺した)けど、フンが四角いなんて初耳だよ…!
検索すると、生きもの写真家で「イモムシハンドブック
」の著者としても有名な安田守さんのブログ
イッカク通信発行所>自然観察な日々の過去記事に、ダンゴ虫のフンの写真が載っていました。
オカダンゴムシふ化幼虫フン
たしかに、ものすごくきれいな長方形…普通は土と同化してしまって、なかなか気づけるものではありません。
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資料として使われていたこのダンゴ虫の写真絵本にも載っているらしく、子供たちは「ダンゴ虫のフンは四角」というこのエピソードが大好きなんだって。豪華なカブトムシやクワガタもいいけれど、子供がはじめに出会っていとおしく思う虫はやはりアリやダンゴ虫なのだなー、そして身近すぎると思っていたダンゴ虫にもまだまだ知らない驚きがたくさんあるんだなーと、自分の子供のころのことも思い出してしんみりした。
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「わたし、レンズを交換するタイプの女なんです」
レンズをダシに4歳児と仲良くなろうとするブロガー。自分でもよくいろんなところにぶつけていて打痕まみれなのでそうそう壊れないっぽいのですが、あとで先生たちから「あのときはヒヤヒヤしました…」と言われました。


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しあわせそうに寝てる年少さんや
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給食の時間にも乱入アンド激写!
ふだん子供さんを撮る機会というのはないに等しい(あってもいろいろとセンシティブな問題が…)なので、とても楽しかった。ちなみにわたしも職員さんのお部屋で、同じお給食のメニューをいただきました。おいしかった〜!


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お昼のあとは園のまわりを見せていただいてから、ちょっと園長先生と虫見に出かけることに。
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実は、園のまわりもとてもいい環境なのである。園庭のすぐ裏に清流が流れているのだ!とはいえ、ふだんは事故などあってはいけないので施錠されていて、夏の間だけみんなで水遊びができるのだそう。
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大都会・国立にこんなきれいな風景があるなんて!
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実は園のすぐ近くには「まま下湧水」という清水のわきでる場所があり、東京の名湧水57選にも指定されているそうです。みんなでお散歩に行くにも最高の場所だなあ。
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園の裏手にはジャコウアゲハの幼虫―奇怪な姿から「お菊虫」とも呼ばれる―がいっぱい!
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寛政7年に姫路城下にこの虫が大発生し、さなぎが後ろ手に縛られた女に似ていることから「皿屋敷のお菊の亡霊が祟っているのだ」と人々は考えたという。想像力がたくましすぎます。皿屋敷のエピソードっていわゆる江戸番町の「番町皿屋敷」だけでなく各地にあるんだなあ、というのも驚きですが、女中が無実の罪で手討ちにされるようなことってわりとありがちだったんでしょうね…


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そのあと、狭山丘陵まで園長先生と虫見に行きました。
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朝鮮半島からやってきた外来種のホソオチョウ。美しい姿ですが、要注意外来生物です。フィールドガイド 日本のチョウ: 日本産全種がフィールド写真で検索可能によれば、人為的に持ちこまれて放蝶され、九州〜東北で見られるチョウになってしまったそう。ジャコウアゲハと同じウマノスズクサを食べ、繁殖力が強いので影響が危ぶまれています。
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丘陵地や熱帯魚屋さんをめぐっていただき、とても楽しかったのですが、帰りは渋滞にまきこまれたりして、園児のみなさんとの集合写真に間に合いませんでした…
帰ってくると、ちょうど園を出るところだった年長組らしきお嬢さんが
「めれ子さん!なんでいなくなっちゃったの?もっとはやくかえってきてくれたら、もっとおはなししたかったのに…」
と声をかけてくれて、すまないと同時に彼女のコミュニケーション能力の高さに圧倒されました。わたしなんか、小学校出るくらいまで家の来客時には隠れてたんよ…なんていう完璧な対応なんだ!


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帰ってくるのが遅かったため、年長のゆり組さんで残っていたのは4人のガールたちのみ。すると彼女たちが、「プレゼントがあるのよ」となにかを持ってきてくれた!
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なんとそれは、ゆり組のみんなが思い思いにチョウの切り紙に名前を書いてくれたお手製の寄せ書きでした…見学にきただけで何もしていない怪しいブロガーにこんなにしていただいたことと、ちゃんと全員にお礼が言えなかったのが申し訳なくて、帰り道もふくめて何度も泣きそうになってしまった…。本当にありがとうございました。せめてもと、残ってくれていた子たちと記念撮影。
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「めれやまさん!あくしゅしようよー!」「おどろうよー!!」
5歳のガールたちの作り出す若いグルーヴに飲まれるブロガー。それにしても君ら、大人すぎるよ…。
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子供たちと仲良くできるかドキドキしていたのですが、優しくしてもらえてうれしかった!(6倍近い年の人間とは思えない感想ですみません…)園児のみなさん、お忙しい中時間を割いていただいた職員の方々、そして佐伯園長先生、ほんとうにありがとうございました!

*1:ちなみにこの傷はまだ癒えていないが、パリ在住のクマムシ研究者である堀川大樹さんがみんな納豆菌を甘く見ない方がいい - むしブロにて、納豆の危険性を告発しているのを見て、これは生存本能からくる正当な拒絶反応であると確信しました