沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

閉店直前、上野の大衆食堂・聚楽台に行ってきた

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東京に住んでいた頃のメレ山は上野で遊んでばかりいました。

本郷の金魚坂で金魚を眺める→東大本郷キャンパスを抜けて不忍池に下る→ボートに乗ってカモを追いかける→蓮池のほとり「蓮見茶屋*1」の桟敷に陣取り、緑の葉に埋めつくされた池を一望→アメ横を冷やかす→ガード下に流れてヤキトリで一杯

これがメレ山の完璧な上野散歩地図であり、他の行程が入りこむ余地は一切なかった…日の沈まないうちに飲むビールは自由の味がした…しかし今、わたしは猛烈に後悔している。二回に一回はガード下を「聚楽台(じゅらくだい)」に置きかえるべきであったと…。
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まー要するに上野駅前のランドマークになっていたレトロ大衆食堂が4月21日閉店との噂を聞きつけて、閉店直前に行ってきたということです。聚楽のためだけに上京するほどクレイジーなわたしではありませんが、ちょうど閉店前日に上野を訪れる機会があったので助かりました。
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待ち合わせに重宝していた看板。
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食堂とはまったく関係なさそうなセルフシャワーを浴びるゾウのイメージ。「浴びるように飲むんだゾウ」というサブリミナルメッセージなのか…。
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閉店前日の週末ということですごい人。ここでうろたえて引き返す人も多数。
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席を求めて並ぶお客さんたち。いっぽうで店内が広すぎるため、座ったもの勝ちの非情なルールに支配される一角もあり悩ましい。わたしは一人客なので、並んですぐ案内してもらえました。
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全体的に照明が過剰で異国情緒を感じさせます。店の中に街灯…フランス語で愛を語り合いたい。ジュマペールメレコ…ジュッテーム…(超展開)
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窓側は上野駅前を見下ろす席。山手線が走っています。
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もっとも大衆食堂らしい飲み物であると思われるクリームソーダを注文。両横の人たちも大きなカメラを持って写真を撮っていました。ビデオを回している人もいた。惜しまれてるのね…。
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反対側の席は大人数用の座敷になっています。
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噴水もあって、同じく数年前に閉店した「談話室滝沢」を思い出します。滝沢はクラシックスタイルの給仕を貫ききれずに閉店したという話なので、店として求めるものはだいぶ違いますが。
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桟敷でビール飲んでみたかったなー…。
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座敷席の人用の靴ロッカー。「わしの下足札がないー」と叫んでいるお爺ちゃんもいて混乱が深まっていました。

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駅前一等地の誰でも気軽に立ち寄れるレストランとして、なお経営順調であったのではないかと思われる聚楽台ですが、建物の老朽化に伴いやむなく閉店ということです。改築完了する2010年秋に営業再開するそうですが、今のレトロな風情は望むべくもないですね。ちょっと残念です。
今まで行ったこともないのに駆けこみで写真を撮りに行って、なんだかちょっと自分で書いていてアレな感じ…でもこのお店に思い入れがある人はけっこういそうなので、写真を見て懐かしさを新たにしてくれる人がいたら嬉しいです。

▼閉店の情報を教えてくれた日記。お二人とも聚楽愛あふれる両記事で参考にさせていただきました!


上野・聚楽台 - a set on flickr -

追記

Midasさんのブックマークコメントに感動したので引用します。

集団就職華やかなりし頃のTHE東京、心の寄りどころ。上野についた中卒がまずここで何か食べ、都会の洗礼を受ける。でその後仕事で辛いことがあると再訪し、窓から駅をじっと見る。みたいな

年配の方が多かったのはそういう理由なんですね。恥ずかしながら気づきませんでした。「聚楽台 上野 集団就職」で検索すると他にも色々エピソードが出てきます。親元を離れる十代の心細さと期待をまるごと受け止めるような店だったんですね。
毎日新聞のネット版のニュースによれば

1カ月前からレストランに閉店を告げる横断幕を掲げたところ、「また戻ってきてほしい」という声が相次いで寄せられた。鶴田店長は「これだけ親しまれているので今の店の雰囲気を残してまた営業したい」と話している。

とのことなので、古さは失われてしまうとしても元のテイストに配慮して再開してくれそうですね。

*1:夏期のみ開店