沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

ミュンヘンの小さな聖堂「アザム教会」のバロック濃密空間に圧倒される

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世界最大のビール祭「オクトーバー・フェスト」で有名な南ドイツの街・ミュンヘンに、仕事の出張で一週間ほど滞在しました。はじめてのヨーロッパ!はじめてのドイツ!はじめての海外出張!と舞いあがり、時間の許す限り観光してしまった…中でもいちばん印象に残ったのは、あるクレイジーな建築家兄弟が思う存分腕をふるった小さな教会でした。

ミュンヘン街歩きは新市庁舎前からスタート

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あいにくというか下戸のわたしには折よくというべきか、ちょうどビール祭は終ったばかりの十月下旬。実はミュンヘンの前にはシンガポールに一週間いたので、寒さがひときわ身に沁みました。ミュンヘンの緯度は北海道と同じくらいなのです…。街路樹の紅葉や色づいた実がきれい。
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南ドイツの鉄道網は、ミュンヘン中央駅を中心に整備されています。街に出るために、ドイツ人の親切なおっさんに教えられながら一日乗り放題切符を買う。この切符でエリア内のSバーン(都市鉄道)・Uバーン(地下鉄)・バスなどあらゆる公共交通機関に乗れて、さらに改札もなし!たまに車内で検札があり、そのときにエリア外や日付が印字されていない切符を持っていると、相当なペナルティがつくようです。駅員の姿もほとんど見なくて、人件費は超合理的に削減されている…。
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いよいよミュンヘン市内観光がはじまるぞ!マリエンプラッツ駅の階段を上がっていくと…
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いきなりヨーロッパらしさを過剰に体現した建物が現れた!これは有名なミュンヘン新市庁舎です。
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現役で使われている建物なのだが、テンションの高い外部装飾は金網で保護されている。「新」といっても、完成は1909年です。ミュンヘンの公僕はオシャレな庁舎で働いておるのう…。
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時計塔の下に腰かけて口をアングリしているオッサンは何の物語の登場人物なんだろうか。うちの会社にもこういうオッサン彫刻をつけたら楽しいのでは?(ザ・隣の芝生)
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時計台の下にはからくり時計がついています。
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こちらにもオッサンが…なにかストーリーがあるのだろうが、よそ者からしてみればただゆかいなだけだ!
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下のほうにはドラゴンに襲われて逃げ惑う人のミニドラマまで…悪ノリしすぎだろう!いいぞもっとやれ!


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ひとしきり庁舎を眺めていましたが、キリがないので歩き出すことに。これまで東南アジアしか行ったことないので、むせ返るヨーロッパ感で混乱…。
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建物の間から見えるのはフラウエン教会のふたつのタマネギ尖塔。ミュンヘンの街は小ぢんまりとまとまっていて、徒歩で多くの名所を見てまわれますが、密度はたいそう濃いのでやっぱり一日じゃ足りなかった。
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歩いているだけで楽しいなあ…と思っていると、なにやら魅力的なショーウィンドーを発見。やはり歩いているだけではだめだ!
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というわけで、イートインでドイツはじめての食事。こ、これは…パンもチーズも、前職である小麦さんや牛乳さんの存在を感じさせるどっしり感…今まで食べていたパンやチーズはなんやったんや…。
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同行の先輩・ドシシオさんがユーロ安に乗じてパタゴニア直営店に行きたいのこと。たしかに街を歩く人たちはシンプルなアウトドアウェアに身を包んでいて、かっこいい自転車に乗っている人も多い。ちなみにドシシオさんの名前は、4歳のお子さんがオジギ草の鉢にドシシオと命名していたことによるものです。
メレ子「ドシさん、かわりにわたしは拷問博物館に行きたいです。本物の鉄の処女(若い娘っ子をトゲの生えた型にはめて血をしぼりとる器械)があるんですって!!(『地球の歩き方・南ドイツ』を見ながら)」
ドシ「よく見ろ、それはローテンブルクにあるんだ」
メ「ノォー…次の機会にとっておきますわ…」
ド「その時は一人で行ってくれ」
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果物も豊富に売られています。パンと乳製品と果物がおいしいなんて、最高にすばらしいし最高に太るに決まっている…はやく帰らないと大変なことに…。


古い教会の過剰な世界に、脳みそが洗われる!

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教会がたくさんあるミュンヘン。まずは新市庁舎の近く、ミュンヘンでいちばん古いという聖ペーター教会に行ってみました。
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上部の採光を得て晴れやかな色彩の天井画と、すごくゴシックな感じのくすんだ金色の天使や聖人たちが対照的だなあ。
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「イヤーッ!飲みものからヘビが!どないしょう!!」
という場面なのだろうか?そう言わずグイッと!
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人の災難は知らぬげにふたまたのラッパを吹く天使さん。
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地球の歩き方』には、「小さいながら濃い教会」としてアザム教会も載っていました。せっかくなので足を向けて見ると、たしかに一般の住宅に並んで見落としてしまいそうな小さな玄関口になっています。しかし、ひとたび入口をくぐると…
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…なんたる濃密空間…!
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狭さを感じさせないというよりは、すきまなく埋められた過剰なモチーフの数々に、生き物の胎内に取りこまれたかのような心持ちになりました。最高すぎる!
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この教会は、アザムという画家と彫刻家の兄弟によって建てられたもの。私邸の横に自腹で建てたので、いろいろな制約なしに酔狂のかぎりを尽くすことができたのだそうです。ワイにはこんな酔狂をやる財力もクレイジーな脳ミソもないのがくやしいのう
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バイエルンの紋章と、ラッパを吹く天使
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ここの天使さんたちは、人の形をしているが人の理を超えている酷薄な感じがとてもいい!祭壇上の黄金色の窓も、異様な迫力がある。
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告解室の上の髑髏にからまる蛇、突き倒される罪人?など、なにかとおどろおどろしい雰囲気…
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死神「ホレホレ、生命の糸をチョキンといってまうどー」
天使「アンギャー!」
敬虔な気持ちを呼びおこすというよりは、なんか…楽しくなってきちゃう…
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小さな教会の中に告解スペースがいくつもあるのも不思議。ドシさんは「それぞれ良いことと悪いことと普通のことを報告するスペースなのではないか」と自説を述べており、そんなイモ欽トリオみたいな構成になっているものかどうか疑問ですが一理ありそうです。
それはともかく、この教会はミュンヘンで間違いなくいちばん印象に残るスポットになりました。アザム兄弟はドイツの後記バロック様式を代表する人たちみたいなので、ほかの作品も見てみたいです。アザム教会はちょっと見つけづらいですが、マリエン広場からもそう遠くないのでおすすめ!


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教会めぐりの締めくくりに、街を一望できるというフラウエン教会の尖塔に登ってみることに。
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ここの方がいわゆる教会のイメージに近いかも…
「悪魔の足跡」と呼ばれる変わった敷石があるそうですが、探すのを忘れていた。
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塔に上るのには入場券が必要。けっこう並びます。小さなエレベーターの前でビール腹のおっさんが行列を整理しているが、このおっさんが同乗しなければあと二人ずつくらい乗れている気がする。
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ここが尖塔の上。おしゃれな旅ガールやカップルが景色を楽しんでおります。
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お散歩コースが丸見え!左が新市庁舎で、マリエン広場をはさんで右がペーター教会の尖塔です。
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窓によってはルネサンス様式の双塔の影が街並みに落ちているのが見えます。黄色いティアティアーナ教会のさらに向こうにも行ったから、かなり歩いたんだなー
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ミュンヘンの郊外には工業地帯が広がっています。BMW博物館などもあるらしいが、わたしは自動車にはうといもので…。手前の芝生は、ミュンヘンの人たちの憩いの場である英国庭園。

ヴィクトアーリエンマルクトでお買い物

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腹ごしらえをしたければまず足を向けるべきは、新市庁舎のそばの常設市場「ヴィクトアーリエンマルクト」です!
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これからクリスマスシーズンを迎えるからなのか、色鮮やかなリースがたくさんある。持って帰りたいくらい愉快だけど、検疫を通れないねえ…。
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乾燥キノコも売られている。その垂れ幕はかわいいけど毒キノコの王様や!
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各種おつまみもそろっております。というわけで
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デュンケル・バイス・ビア、ビッテ!(黒ビールの白いやつをくれ!)」
黒ビールの白いやつってなんだと思うのだが、ドシさんがそれが名物だというので頼みました。基本的に食べきれない量が出てくるので、わたしのようなものが注文する際には「クライネ(小さい)」と言うとよいらしい。しかしわたしは下戸なので、赤パプリカのピクルスにチーズをつめたやつのほうがお気に入りです。左の白ソーセージも、噂に違わぬフカフカした食感!
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しかしサア、やっぱりビールって暑いときに飲むモンではないのー?外気温が10度を切ってるのに外で飲むのは無理してねー?日なたの席から順番に埋まってるってことは、実はみんな観光客で無理しちゃってるんではないの?という疑念がぬぐえない(下戸の発想)
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話しかけると硬直していた兄妹。
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妙にリアルな動物グッズを売っている店で、思わずアヒルを買ってしまった。日本ではカントリー風味のグッズは避けているはずなのに…いまは会社の机の上でよく転倒しています(なかなか直立しない)
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一面にハチミツくせえ店があり、こちらでもハチの巣型のせっけんを購入。これは…日本のオシャレな雑貨屋で売っていたらやはりだまされてしまう程度にはオシャレでは?いや、どうかな…ヨーロッパでは、日本で自分なりに築いたつもりのダサ店アンテナが折れてしまうことがわかりました。

ミュンヘンで食べたもの大集合

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せっかくマルクトの話をしたので、ここでミュンヘンで食べたものを総決算します!上に載せたような果物の屋台があちこちにあって、円高ということもあり、新鮮な果物を安く買えた。特にこのラズベリーは1パック1ユーロで、食べながら歩くと幸せな気持ちに…
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主菜はやはり肉とイモのみで構成されている率が高い。これは出張中、お昼に連れていってもらったドイツカフェのごはんです。ちなみにお昼どきのあいさつは「マールツァイ!」というそうで、チャイムが鳴るとみんなマルツァイマルツァイ言いながら出ていく。
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オーガニックっぽいイタリアンレストランのラヴィオリ。これもどっしりした小麦でおいしかったなー
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このギリシャ料理の店は現地でネタ扱いされていた。「マールツァイ!どこにお昼に行くの?」と訊かれて「グリーク!」というと「ノォー…オォ…グッド…マルツァイ…」って言いながらドイツ人が後ずさりしていました。これはビフテキらしいが、見た目以上の味わいとかはゼロよ!
写真には写っていないけれど、ランチのドリンクは「アップルショーレ!」と頼むことが多かったです。リンゴジュースを炭酸水で割ったものなんだけど、国が消費を奨励しているという話もきいた。
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「ドイツのパンがすべておいしいと思ったら大間違いだ!」と身を挺して語る、ホテルのレストランのバンズさんです。朝のバイキングは豪華だったのになぜ…
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ある日、ギリシャ料理から後ずさりした彼が夕ごはんをアテンドしてくれました。ちなみにわれわれの会話は英語で行われていますが、わたしの英語は非常に残念です…
リヒャルト(仮名)「明日は僕が案内しよう!ドイツって感じのところがいいよね〜」
ドシシオ「リヒャルトは、前回われわれのボスがここに出張してきた際に日本料理を所望したため、ドイツ料理を紹介できず非常にフラストレーションを感じているのだ…」
メレ山「オウ…」
リヒャルト「伝統的なバーバリアン料理の店がいいだろう。バイエルン衣装のウェイトレスがサーブしてくれるんだ」
メレ山「グッド!ドシさん will be satisfied」
リヒャルト「ノー!そんな店じゃないの!ガールはso farだから!」
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たしかにバイエルン衣装を着たウェイトレスたちはいたのですが、われわれのテーブルについたのは岩みたいな顔をしたオッサンであり、まったくウェイトレスと絡む機会はなかった。ドシさんは「ガールイズネバーカミング…」とコメントしていました。そしてごはんはとってもおいしいが超ヘビー。小麦粉とじゃがいもをまぜて蒸したお団子やソーセージ、外をカリカリに焼いたダックなど、やはり肉とイモと炭水化物です。
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「大どろぼうホッツェンプロッツ」に出てきたザワークラウト!キャベツの漬物だったとは…わたしが小さいころに勝手に想像してたのは、チーズ風味のヨーグルトみたいなものでした。
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デザートもおいしいけど重いよ〜
ふとリヒャルトのお皿を見ると、彼はひとにイモ団子や肉をしこたま食べさせておいて自分はサーモンとか涼しい顔で食べていた。なんてやつだ…。
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基本的にコンビニみたいなお店はないのですが、ガソリンスタンドのショップで見つけて買った生ジュースが最高に濃くておいしかった。たしか2ユーロくらいしたけど、日本でも売ってほしい…。
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お土産はガイドブックにも載っている「ライジーファー」というチョコレートの老舗の板チョコ。とんでもない種類のチョコが揃っています。左下のココナッツがもうジャリジャリに入ったやつがおすすめです。

夜の楽しみ、ウィンドーショッピング

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ごはんを食べて外に出ると、お店は閉まっているが街は明るい。ミュンヘンは夜のウィンドー・ショッピングができる街なのです。飾り窓とかそういう意味じゃなくてよ!(うるさい)
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伝統的なバイエルン衣装のお店。これは家族の礼装っぽいけど、ミュンヘンギャルがオクトーバーフェストで着るようなのはもっとギャルギャルしていて、要するに日本の成人式の着物みたいな扱いらしい。
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ライカやらベンツまでが並ぶきらびやかなショーウィンドー、こんな高価そうなものをきれいに展示していては強盗ホイホイでは…?と心配になりますが…ミュンヘンは、ヨーロッパでも有数に治安がよい街なのだそうです。
ここまで書いただけでも、出張とは信じてもらえないかもしれませんが…まだロマンチック街道古城めぐりツアーと強制収容所の話をしていない、と書いたら、次回は出張の稟議が下りるのであろうか…

おまけ・ミュンヘンのいじらしい犬

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ヨーロッパではよくあることなのかもしれないが、大きい犬をたくさん見かけました。
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デパートなどにもいっしょに入ってきて、他の犬と会っても動じない。小さい犬が人の多いところに連れてこられてオドオドしてるのを見るのは苦手なのですが、これなら踏みつぶされる心配もないしいいなあ。
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と思ったら、やはりノミの心臓の大型犬もいるのだった。スーパーでおみやげの物色をしていると、なんか店の前で犬がキュンキュン言っている。
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「ご主人どこ行ってもうたんや…」
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「(ソローリ)主人に会いたし、命は惜しし…」
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「ハー、毎週引き裂かれる思いやわ〜」
わたしの大好物、スーパーの前でご主人を待っている犬。取り乱してる系は日本でも珍しくありませんが、1歩踏みこんではためらっているところを自動ドアに挟まれていたのでかわいかったです。ご主人…ご主人は秒速で買い物をしてあげて!