沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

国際昆虫学会(ICE2024)@京都 参加レポート

8月末に京都国立国際会館で開催された国際昆虫学会(ICE2024)に、おみやげコーナーの世話人として参加した記録です。貴重な経験をさせてもらい、新鮮で楽しい二日間でした!
mereco.hatenadiary.com
概要や告知の記事は上記をどうぞ。
(日記の書き起こしベースなので、直接関係ない情報も多めです!)


2024年8月28日 水曜日(出展前日)
6時に起きるはずだったがアラームが鳴ったのは7時。8時半から英会話レッスンだったので焦るが、昨日あらかた準備していたのでなんとか間に合う。
14時半に会社を出て京都へ。会社にスーツケースをひこずって来ることが多くてすみません…。
東海地方が豪雨と聞き、すんなり着かないことを覚悟していたが、予定通りに着いてしまい狐につままれた気持ち。
烏丸線に乗り換え、マメコ先生に予約してもらったホテルに向かう。国際昆虫学会は烏丸線の終点にある国立京都国際会館で行われるのでホテルも烏丸御池に取っているが、御池のオシャレさにビビる。御池、こんなにハイクラスな街だったのか…いつのまにかそうなったのか…京都に住んでいたころはお金がなくて知らなかっただけかも。


お部屋でゴロゴロしていると、サラサラの髪になったマメコ先生が登場。「最近の縮毛矯正、そんなに自然でいい感じになるの…!」とわたしが感動する一方、マメコ先生は「すずちゃんどこを脱脂注入したの?!なんも変わってなくない?!」と言い放つ。実際の体感としてもなにも変わってないので答えづらいが、ただ重課金したいという気持ちがあり…という話をしながら、近所の京町屋を改装したビストロでジビエを食べる。マメコ先生はホテルとご飯やさんを探すのがうまく、これらについてはまったく調べるのが苦にならないそう。
食べながら服づくりや縫製の話を聞く。アパレルってどうやっても儲からないようにできてるな〜。でも楽しそうに学んでてすごい、今回の新作もめちゃくちゃかわいいし。

明日がイベントとは思えない優雅さで就寝。なんとか無事に終わりますように。


2024年8月29日 木曜日(出展Day1)
烏丸線に乗り、朝8時すぎに国立京都国際会館に着く。京都に住んでいたときも縁がなかったが、ずいぶん立派な建物だ。ホームページを見ると「関西を代表するモダニズム建築」とある。わたしもこの年代の建物好き!
駅から学会参加者らしき人が目につく。ポスター入れの筒を忍者のように背負っていたり、あと国籍問わずリュックがでかい。

受付に行って参加者パスを受け取る。学会全体の日程はすでに後半戦であり、オープニングセレモニーには秋篠宮一家が参加したためセキュリティが超厳重だったそうだ。我々も参加者全員の氏名リストを提出したりしたのだが、当日はわりとゆるい雰囲気だった。
歩いてるそばから海外研究者に「Nice shirt!」と声をかけられるマメコ先生。



わたしたちがおみやげブースとふれあいブースを設営するのはメインホール前のスペース。事前にスタッフが長机と椅子、それと背面パネルを置いてくれていたので、適当に並べる。だいたいのレイアウトができたら、事前に届いている荷物を取りに行く。早めに来てくれた出展者と一緒に、でかい台車で何度か往復。
いざブース設営をはじめると、周囲にいた学会参加者が次々と手元をのぞきこんでくる。国際学会参加者ということはそう、世界中から集まった虫博士。


はたしてその参加者数はどれほどかと調べてみると、下記によれば77か国から3,700名の参加者登録があったとのこと。
市民公開講座 第27回国際昆虫学会議「Women in Entomology講演会:サイエンス・昆虫学における女性研究者」「市民向け講演会:暴れる侵略者、立ち向かう昆虫学者」|日本学術会議

「第27回国際昆虫学会議(XXVII International Congress of Entomology (ICE2024)」が、令和6年8月25日(日)~30日(金)に国立京都国際会館で開催されます。国際昆虫学会議(International Congress of Entomology(ICE))は1910年からほぼ4年ごとに開催されてきた、世界各国の昆虫学者が集まる最大規模の会議です。44年ぶり2回目の日本開催となる本会議には、世界77ヵ国・地域から約3,700名の研究者等が参加予定です。本会議では、「知の統合による新たな発見」をメインテーマに、昆虫の生態、進化などの基礎分野から地球環境、農林水畜産、経済及び教育など、社会的課題への関わりを含めたセクションで研究発表と討論が行われることとなっており、その成果は昆虫学の発展に大きく資するものと期待されます。

この数にはたぶん我々ならず者集団は含まれていないと思うが、企業ブースや学会スタッフとして揃いの法被で活動されていたみなさんは含まれるのかな。とにかくすごい人数がいたことだけは確か。



マメコ商会のバッグや服を並べているそばから「これ買える?」というお客さんが現れる。出展者のみんなが英語のキャプションやsquareでの電子決済など、いつもと違う対応に苦慮しているうちにどんどん増えて、10時すぎには普通に店を開けているのと変わらない状態に。初日は12時からなのにィィ〜ッ!と言っても、ここは開放エリアだし、もうやるしかねえ。

日本野虫の会のブースは英語対応もバッチリ、しかし忙しすぎて目を回していた。

となりのトガシユウスケさんのブースに人が集まりすぎてテンパってる、と思ったらなんか見覚えある人が店番を加勢している。バッタ博士こと前野ウルド浩太郎さんだ!発表の出番を終えたあとは運営としてお手伝いをしていたらしい。人が足りないところにサッと入ってくれるのがありがたすぎる。
思わず「ハカセ!」と呼びかけると「今日はまわりみんなハカセだから…」と照れていた。たしかに。
参加登録者は自己紹介がてらフレンドになった人の発表時間などをチェックできる専用アプリを使っていて、ハカセはそのコミュ力でトップ10に入るくらいフレンド登録していたらしい。



たまに人通りが途切れたかと思ったら、シンポジウムやプログラムが終わるたびにまたお客さまが押し寄せてくる。
「円安メリットを感じやすいドル・ユーロ経済圏の研究者が多めに参加登録しているし、日本のような手のこんだ虫グッズは海外では見つけにくいのでよく売れると思う」と事前に聞いていたが、ほかのブースも見てまわるかぎりなかなか盛況のようでひと安心。
ちなみに研究者たちは7万〜10万払って登録しているらしい。ほとんどの人は研究費を充てているのだろうが、国際学会ってお金かかるんだな…。この辺は業界にもよるらしく、医学系とかだと製薬・医療機器会社が強力にスポンサーしてくれるようです。涙。


わたしは特に売りものもないので昆虫大学シラバスを日本語のまま引っ提げてきたのだが、思ったよりは売れていた。日本語がわからなくても買ってくれる人もいてありがたい。「This is a fun book of imaginary university」とか、中華圏の人には「昆虫大学(クンジョンダーシュエ!)」と連呼するなど、かなり適当に接客した。

ハエ目ハルカちゃんのハエ同人誌や写真プリントのミニタオルもよく売れている。

ヒトデワークスさんの蛾を刺繍したアイロンワッペン。

dubheさんの博物画をもとに制作したポストカード。


TAKEOのバラエティ豊かな昆虫食。

丸山宗利先生の著書手売りコーナー。


昆虫ふれあいコーナーと、繊細な昆虫標本を扱うためにカリカリに研がれた特製ピンセット。

日本野虫の会でも虫の目サングラスなど、ふだん売れ筋でないものが売れたそうでよかった。大半の人が海外客、しかも虫博士という状況が特殊すぎて、何が起きても「…なんか勉強になる…!」という感想になる。虫柄の服やタトゥーを入れた人も多く、文化を感じる。
あとは「たぶん要らんやろ」と思いながらレンタルしたWi-Fiが、square使用勢の命綱となった。国際会館のフリーWi-Fiが低速すぎて…。



特設ガチャガチャコーナーもあって大盛況。わたしもタマムシが欲しくて三回まわしました。いい記念になるな〜。シークレットがルリゴキブリというのも良い。


閉場の18:15まで販売しつづけて解散。商品を控室スペースにしまうか迷うが、みんな疲れていたので「…まあ布かけとけば大丈夫だろ!お客さんの治安がいいし…!」となる。
打ち上げについてはワチャワチャしたあげく、いくつかのグループに分かれて我々は四条へ。丸山先生が書籍販売のお手伝いに呼んだSさんという京都在住の女性の虫屋さんがいて、その場でスッと決めてくれたお店がとても京都らしいちゃんとした居酒屋で、一同陶然とする。


台風10号が近畿にむけて北上中の情報を受け、急遽関西脱出をはかった丸山先生と、別のブースで取材対応などをしていた動画作家の平井文彦さんが、東海道新幹線が止まって戻ってくる。
今回のサブコーナー立ち上げ人で、運営やイベント会社との各種調整もしてくれたNさんに「今日のピンセットと吸虫管の売れ行きはどうでした?」と訊くと、「ウーウー!!」と唸りはじめる。学会参加費をまかなうために(あんなに働いてるのに参加費も…!とわたしは衝撃を受けた!)たくさん作ったのに吸虫管も思ったほどには売れなかったらしい。その後も他の人が「お客さんが来すぎてテンパってしまい…」などと言い出すたびにウーウーになってしまってかわいそうだった。いつもイベントでは完売作家なのに…海外研究者、吸虫管使わないのかな?直で吸ってぺッてしている…?(※その後二日間ではそこそこ売れて、オーダーの問い合わせなどもあったようです。良かった~)
企業ブースに出展していたさとう甲さんも参加してくれたり、ふだんのイベントとはすこし違う顔ぶれの飲み会になって楽しい夜だった。
というわけで、なんとかつつがなく初日終了。


2024年8月30日 金曜日(出展Day2)
イベントの二日目というのは(初日の客入りさえよければ)かなり気が楽なもの。二日めは9時から開場と言われているが、昨日は結局12時開店のはずが朝から休みなく全体設営してものを売っていたわけで、今日は何時からやるかは各店舗にまかせる!と思って10時すぎに到着。
しかしsquare電子決済勢がわたしのレンタルwifiを使えず、到着までテザリングでしのがせてしまった。虫博士の朝は早い。

国際会館は宝ヶ池などが近く、周囲の緑が濃い。オニヤンマがスズメバチを路上でむさぼっていた。


台風のニュースもあるし、虫博士は国に帰っちゃった…?と思っていたが、二日目もどんどん来る。わたしが虫の本を書いたりしていた頃からすごくひさしぶりの再会もあり、感慨深かった。
昨夜はGala Dinnerで「台風が来る前に京都を離れるから参加費(二万円近い)を返金してくれ」と事務局に言いにくる人が多くて大変だったらしい。お料理も用意してるのに返金は無理だろうけれど、たしかに一銭も戻ってこないのもつらいのは分かる。
だんだん集中力も切れてきて、みんな英語どころか日本語もおぼつかなくなってきた。わたしも昨日はがんばって「Take a look!」とか言ってたんだけど。

トガシユウスケさんデザインのハエトリグモのソフビを買えてご満悦のわたし。研究発表もなにか見てみたかったけど、その暇もなかったしどこで何をしているのかも把握できていなかったな…。


マメコ商会の新作、秋山あゆ子さん『こんちゅう稼業』のコラボアロハシャツもめでたく完売。あまりにかわいいので、完売報告をここでするのが勝手に心苦し…。でもわたしもしっかり入手した。
[
大阪自然史センター[はくラボ]も、二日目に急遽追加納品を行うほどの売れ行き!


北九州・魚部のオンセンゴマツボトートバッグと手ぬぐい。昆虫ではないが、わたしの故郷である別府温泉に産する陸貝グッズとあっては買わざるを得ない。



奇蟲専門店・Terminal Legsさんのブースで販売されていた狂気の陶ムカデ作品。作家さんは今はまっとうな猫ちゃんの作品を作っているので、名前は出さなくて良いらしい。店長の外村さんがある日噂を聞きつけて工房に会いに行ったら「Terminal Legs」と書かれた文鎮みたいな作品があって、「そのうち来ると思ったから作っておいた」と言われたそうだ。ムカデ好きは惹かれあうってこと?なんだこのエピソード。

TAKEOのブースにあった「昆虫料理の知育玩具」。こっちもこっちでなんなんだ。翅をむしったり脚がとれたりと、料理のディテールに配慮したつくり。佐伯さんがサンプルをラオスに持っていったら、ラオスの子たちは昆虫食が日常なので平常心で遊んでいたそうである。
この日は学会最終日でもあるので16:00閉場なのだが、片付けをはじめてもお客さんが引かない。嬉しいが…。

特に横のトガシユウスケさんのブースはずっと囲まれていて、デザインの強さを感じる。今回のために日本の昆虫シリーズを作られているのも大当たり!
気づけばトガシさんのブースにもうひとり法被を着た虫博士が入って、流暢な英語で対応している。マメコとわたしは「そんな手があったのか!ずるい!」「我々にも通訳をよこせ~!」とブーイングした。次々と有能な虫博士が手伝ってくれるの、人徳とはいえ妬ましい。



閉会のセレモニーを少しだけのぞく。次回は南アフリカ・ケープタウンでの開催とのこと。エクスカーションは捗りそうだけど遠いよ〜!国際昆虫学会は四年に一回だそうなので、毎回日本でやってほしいくらいだが実際には44年ぶりの開催だったとのこと。そのときも会場はここだったそうだ。
参加前はいろいろと手探りすぎて不安だったが、終わってみれば楽しかった。Nさんや当日スタッフ、イベント会社のみなさんにはたいへんお世話になりました。

なんとか発送や片付けを終え、撮影ブースで記念写真。さらに学会の記念グッズが配られていたので、我々もおすそ分けをいただく。扇子や手ぬぐいにトートバッグなど、グッズも充実している。


東北新幹線は止まったままで、東海地域の雨がひどいらしい。台風からの逃れ方はそれぞれで、東京行きをあきらめて飛行機で福岡に帰る者あり、車で帰る人に乗せてもらう者あり。わたしは土曜に戻る予定なので、サンダーバードで敦賀に向かって北陸新幹線の大回りで東京に戻ることにした。



二日目の有志による打ち上げも四条で。みんな服が虫柄!二軒目にも行って23時半ごろ解散。明日無事に帰れるかな…。


2024年8月31日 土曜日(帰京)
荷づくりをして九時半ごろに宿を出る。マメコ先生は東京に向かうのをあきらめ、関西で数日過ごしてから帰国するそう。
今日も東海道新幹線は止まったまま。サンダーバードと東北新幹線は昨日の朝のうちに予約してあるが、ほんとに帰れるのか。かといって京都の天気が荒れていたわけでもなく、むしろ東京で大雨が降っているというから台風の実感は薄い。
小雨で折りたたみ傘を出そうとぼんやりしていたら、ホテルの人にビニール傘をいただく。コンビニからスーツケースを送り、できるだけ身軽に帰ることに。どこかで足止めをくらってもなんとかなるだろう。

京都駅からのサンダーバードは女性専用席が取れたが、ありがたいなと思ってふと検索したら、できた経緯が出てきて一気に気分が落ちこむ。事件は知っていたけど、サンダーバードだったんだ…。


一時間半かけて到着した敦賀駅は人であふれていて、自動改札もいったん止めて乗り換えの人を通したりしている。キオスクにもトイレにも列ができている。
ほんとは伊勢で遊んで帰ろうかと思っていたくらいなので、まっすぐ戻るのがなんとなく悔しくて敦賀駅で一時間半も間をとってしまった。とりあえず駅前商店街に出てみると、メーテルやヤマトの銅像が並んでいる。

松本零士って敦賀出身なのか〜。言われてみれば北国っぽさがあるかも。と思っていたが、いま検索してみたら違った。久留米だった。
www.tsuruga.or.jp

かつては東京とパリを結ぶ「欧亜国際連絡列車」が敦賀港駅を経由して走り、敦賀は「日本でも有数の鉄道と港の町」でした。1999年に敦賀港開港100周年を記念して、市のイメージである「科学都市」「港」「駅」と敦賀市の将来像を重ね合わせて、「宇宙戦艦ヤマト」のブロンズ像12体、「銀河鉄道999」のブロンズ像18体の計28体のモニュメントを敦賀駅から気比神宮までのシンボルロードに設置しました。

つまり…零士と敦賀の関係は…無関係ってコト?!


しばらくウロウロしてから駅前の芝生広場へ。「ちえなみき」という本屋とブックカフェの複合施設があったが、ちょっと入ってみたら選書が充実していてびっくり。勉強や休憩のスペースもふんだんにあって、わたしが敦賀の学生なら毎日入り浸りたい。
chienamiki.jp
ここで時間を使いすぎて、広場前のレストランでへしこのパスタを食べていたら時間がなくなり、必死で走ってはくたかに飛び乗ることに。

せっかく北陸新幹線に乗るなら小松の千圃堂にも行ってみたかったけど、土日は休みなんだよな…と思いながら車窓を眺めていたら、30分ほど走ったところで、加賀温泉駅でいきなり停電して急停車。迂回ルートでも無事には帰れないのか…もう加賀温泉に泊まっちゃうぞ?!と観念しかけたが、対向電車の異音検知による急停車だったらしい。結局は30分後に復旧して走り出したのだが、エアコンも停まっていたのと隣が大柄な白人男性だったので、とにかく暑かった。もともとあまり車内が冷えていなくて、汗が気持ち悪い。
もう加賀温泉に泊まったほうがよかったのかもしれない…いや、スムーズに泊まれたか知らんが…と思いつつも、一時間遅れで東京に到着。無事に帰れたことをもっと喜ぶべきである。
それにしても東海道新幹線の迂回ルートにもなるなんて、北陸新幹線の別のありがたさを身をもって知った。ほんとは北陸にもちゃんと遊びに行きたい。