沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

日記(2024年9月2日~2024年9月8日)

2024年9月2日 月曜日
韓国から来た出張者ふたりを二週間部署で受け入れることになっていて、わたしがメインの窓口なので責任重大である。しかしふたりとも日本語はペラッペラだし日本には住んでいたこともあるし、なにより気さくですてきな人たちなので悪い緊張ではない。


先週、金沢を通ったときに「旅の上書き」について考えていた。
だれかと行った旅行が、そのときは楽しくてもトラウマに近い嫌な思い出になることがある、という話を友達としていて「あえて別の人とまた行くのがいちばん効く」という結論になったんだった。
わたしは金沢で「上書き」に伴われたことがあって、そしてその人はわたしにしっかり嫌な思いをさせたので、わたしも金沢で「上書き」したい。
次に金沢に行くなら、わたしもだれか別の人と上書きするか、あるいは一人でもものすごく新しい体験をしに行くのでもなければ、たぶん黒い気持ちがつきまとう。それってすごく面倒くさい。でも、今は九谷焼というフックがあるからそこまで難しいミッションじゃないかも。
そんなことを考えながら、夜は昆虫大学シラバスの構成案を作る。


2024年9月3日 火曜日
朝から洗濯をして国際昆虫学会の写真をみんなに送り、昼は昆虫大学シラバスの構成を編集者サチコに送る。バリバリ働いているかのようだが、すべて昨日やるつもりだった作業。イベント後には動けなくなるのが当たり前、落ちこんでもしかたないしかたないと呪文を唱える。落ちこまないのは無理でも、落ちこむのが通常なのだと認識する。
落ちこみついでに、気まずいお断りのメールも一通送る。元の問題がうまく解決してくれればいいのだが、難しいんだろうな…。

海外拠点から来ている出張者と、実際に資料を見ながらいろいろと話す。そのあとも明日の準備をしていたら23時近くに。会社を出ると涼しくて秋!って感じでテンションが上がる。
学会後に届いていた輪島塗の照明を開けてみたら、とてもかわいい。さっそくライティングレールに取り付ける用の金具を注文する。

2024年9月4日 水曜日
昨夜の夜中にハンターハンター38巻の電子配信が来たのだが、字が多すぎてすごい序盤で寝てた。最近の展開、読む麻酔みたいなとこある。いい映画や演奏会で寝てしまうのと同じで、面白くないのではなく気持ちよく寝てしまうんです。


しゃしゃり出るには権限がないし、黙っているには責任があることで気を揉む。自分にできることはしたつもりだが、すっきりしない。
知人にラインで話を聞いてもらってなんとか気をとりなおし、輪島塗の照明を部屋に飾った。

これはしゃれとんしゃるわ〜。漆の朱と削り出しの真鍮が一見派手なのに、うちにめちゃくちゃ馴染む。キッチンにしっくりくるのは食器でできているからか。
この場所にはちょっと明るすぎるので、フロストガラスの電球に付け替える予定。

2024年9月5日 木曜日
韓国からの出張者たちと部署のメンバーで、銀座に飲みに行く。ボスが前に行っておいしかったお店だが、キャバ嬢の同伴率が高いらしい。でも個室に通してもらったので同伴は見ていない。
しゃぶしゃぶといってもしっかりしたコース料理で、どれもおいしくてたいへん満足した。しゃぶしゃぶもたっぷりのねぎと一緒に茹でたから上品で食べやすい。
部署での「地面師たち」視聴率がかなり上がってきたのだが、韓国のNetflixでも観られるそうなのでおすすめすると「タイトルは"東京の詐欺師たち"になってますね!」とのことだった。おたがい好きな韓国ドラマと日本ドラマの話で盛り上がる。
帰りに出張者のふたりは「わたしたち、せっかくなので銀座をちょっと散歩して帰ります!」と言っていた。会社の近くだけじゃそういう流れにならないので、電車に乗る距離のお店でもてなせてよかったな。


2024年9月6日 金曜日
朝から救命講習大会があり、選抜メンバーで実技コンテストをやった。ひさびさに緊張したぜ…。でも実地でやる日が来たら、緊張どころの騒ぎじゃないよね。
採点結果は満点だったので、個人的にはたいへん満足する。

早めに会社を出て、家に帰ってなんらかの作業(めちゃくちゃある)をやろうと思っていたが、Instagramを見たら推しの九谷焼作家である田辺京子さんが「たくさん追加納品した」と書いており、フラフラとミッドタウンに向かう。
SAKE SHOP福光屋で昨日入荷された作品をいろいろ眺めて、今回はお菓子をいくつか買うにとどめる。気晴らしにすこし出かけたかっただけなのだ。
来ておいて何だが、ミッドタウンとかGINZA SIXとかの雰囲気が昔から苦手。デパートはむしろ好きなんだけど、総合商業ビルの雰囲気ってまさに「気晴らしにすこし出かけたい」という虚無の霧が天井で雲になっている気がする。副流煙が許せない喫煙者ってこんな感じかな。


2024年9月7日 土曜日
今日は某・磯結社の夕暮れ観察会。がんばれば陶芸工房とハシゴできるかとも思ったが、結局工房をキャンセルしてしまう。
一週間遅れで散乱したイベント荷物を整理して、ギリギリで家を出た。
開催地は千葉なのだが、埋立地にある海浜公園で、「夕方にはバスもなくなるので車でおこしください」とのこと。当然車はないので、駅からタクシーで行く。ここで帰りのタクシーも予約しておかなかったのが悲劇を生むこと。
集合場所に行ってみると、今回は会員限定のイベントではないためか、ほとんどの参加者が親子連れだった。会員さんに前回の観察会で撮った写真をお送りしたことのお礼を言われ、照れる沙東。

砂浜に出てみると、まあまあの荒波。ウィンドサーフィンの人にはありがたいらしいが、水が濁るとわたしたちには不利である。


この辺の干潟は40年前くらいに作られた人工干潟なのだが、土も落ち着いて良い感じになって来ている。富津あたりの生きものが分布を広げて来られたらもっと良い環境になるので、会の方々が魚礁づくりなどをがんばっているそう。写真は流れ着いたアマモ。

ハギみたいな魚だけどギマというらしい。味は悪くないがトゲが網に絡まるので漁師からは嫌われる。

今日は夕まずめの満潮を狙って堤防から岸壁採集をするそうだ。堤防にはがっちり柵もあり、お子さんには危険な岸壁採集もやりやすい雰囲気。



水中に照明を下ろして、集まってきた生きものを掬うスタイル。よく見つけられたな!ってくらい細いヨウジウオ。

トウゴロウイワシかな。磯のいつメンである。イワシ系は何種かいたらしいが、これ系の魚を見分けられる気がしない。

サッパ、いわゆるママカリ。このあと水槽の小さきものたちをどんどん食べていた。

ちっちゃいシャコ。

カゴカキダイかと思っていたが、コトヒキの幼魚だそう。

子供たちが網で生きものをすくう係を奪いあっていた。後半はめちゃくちゃゴカイが集まってきた。寄せ餌にもなりそう。

マハゼかと思ったけどビリンゴ。

プラケースに子供が群がっていないタイミングを見て、観察ケースによけては写真を撮って戻す。みんなで集めた生きものをひとところに入れるスタイルは撮りっぱぐれがなくて便利だけど、生きものがどんどん弱っていくので罪悪感がある。
20時ごろにつつがなく終了し、駐車場にて解散。戻る途中からずっと配車アプリでタクシーを探していたが、Uber・DIDI・GOのどれでも見つからないので歩くことに。会員のどなたかに頼めば駅まで乗せてもらえたかもしれないが、そもそも車で来るよう念押しされていたのにあつかましいし…。
埋立地を歩くのはなかなか怖かった。人通りはほとんどなく、物流倉庫がたくさん並んでいる。街灯がないところを走って駆け抜けると、クモの巣の切れはしがついてくる。それくらい歩行者がいないってことだ。
30分歩いて、なんとか鉄道駅にたどりつく。行きも帰りも、移動中はたまった日記をずっとアプリにつけていた。冬の夜磯観察会は年齢制限があるそうだし、岸壁採集ではないから適度にばらけて観察できるんじゃないかな。そちらも申し込むつもり。


2024年9月8日 日曜日
ひさしぶりの美容院。ほんとは二週間前には来たかったくらい髪がのびていた。
美容院で使っているめちゃくちゃ胡散臭いのにめちゃくちゃ綺麗になるドライヤーについて「このまえネットで話題になってましたよ」と話したら、来月新製品が出るらしい。ドライすればするほど髪が綺麗になるそうで、心がぐらついてきた。でも16万円くらいするんだって…。
同じ会社でドライヤーだけじゃなくていろんなものを出しているが、すべて説明はこの調子らしい。せっかくなので、ドライ時に使う頭皮の美容液を買ってみる。美容師さんがぜんぜん売り込みしないので訊くまでわからないことが多いが、効果に納得する前に売り込まれても「太陽?波動???怖っ…」としかならないよね。


帰りに代官山ミナペルホネンに寄って、秋物のセットアップを買ってしまう。お値段はここでは言いたくない。でも、何年も前に買い逃したことをいまだに悔やんでた生地なんだよね…。
そろそろ食生活と運動を見直して体型を変えることに。孤高の引き締まった体を手に入れる!そしてフィールドでも身軽に動けるようになる!


夜は直近の写真と日記を整理するだけで一時くらいまでかかってしまい、今週末やるつもりだった昆大シラバスの見本稿に入れず。来週でなんとかしてみせる…!