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メレンゲが腐るほど恋したい

旅行記や生きものの話を写真多めの長大な記事で送ります

猫と坂と寺の町「尾道」と怪魚の町「鞆の浦」を、瀬戸内フェリーでハシゴ船旅

外出 写真 動物

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猫・坂・寺が特盛りの町・尾道と、町に高波を呼ぶ怪魚ホラー映画の舞台のモデルとも言われ、とみに有名になった鞆の浦(とものうら)。瀬戸内海に面する二つの美しい広島の港を船で行き来できることをご存知でしょうか?
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今回の旅行は尾道駅からスタートです。
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駅前からちょっと山手に入ると、瀬戸内海を見下ろす坂にこんな細い路地ばかりが刻まれています。
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坂道での主要な移動手段はカブ。
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坂の町での生活は人間にとっては大変ですが、三次元的に移動できる猫には好都合。右側の家の出っ張りにも猫がいます。
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「毎日毎日でっかいカメラ持ってきくさってガシガシガシガシ言いよるワ…すかんたらしい」
すみませんでした。それにしてもこのおかんむりの猫が乗っているところは「猫のせ台」としか言いようのない形状をしている。
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続々と湧いて出る猫たち。尾道はある冬にも訪れて寒さに震えながら「なにが猫の町だ一匹もいないじゃないかバカヤロー」と思ってたのだが、これならなるほど猫の町です。猫密度は天候にも左右されるのでしょう。


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「通り道をふさぐとこのシッポで張り倒すヨ」
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「この先は行き止まりだヨ…アンタの人生と同じだね」
猫たちがこわい!そして雨上がりの猫町はフンの臭いが少々つらい。


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ほぼどこからでも尾道水道を見ることができます。向島がすぐ近くにあって船がごんごん通り過ぎ、道そのものです。


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そういえば尾道といえば猫・坂・寺のほかに文学もあった。こちらは志賀直哉の旧居です。「白樺派」「暗夜行路」「城の崎にて」といったキーワードを国語のテスト用に覚えたことしかないのだけど、こんなスカポンタンが足を踏み入れていいものか。
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奈良の若草山の近くにも志賀直哉旧居があるけれどアレは文豪として名を成してからのもので、こっちはお父さんと不仲のときに借りていた家なのでとても簡素。でも、わたしの部屋より広いよ…このボンボンが!!
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ガイドのおじさんは嬉々としてメレ山を座らせ、「アンタここに座って、縁側の向こうの景色を見てなさい。志賀さんはここで『暗夜行路』のストーリーを練ったのヨ。今から朗読テープを流してあげるからネ、聴きなさい」と言うのだった。
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…景色はいい所だった。寝ころんでいていろいろな物が見えた。前の島に造船所がある。そこで朝からカーンカーンと金槌を響かせている。同じ島の左手の山の中腹に石切り場があって、松林の中で石切り人足が絶えず唄を歌いながら石を切り出している。その声は市のはるか高い所を通って直接彼のいる所に聞こえて来た。
 夕方伸び伸びした心持ちで、狭いぬれ縁へ腰かけていると、下のほうの商家の屋根の物干しで、沈みかけた太陽のほうを向いて子供が棍棒を振っているのが小さく見える。その上を白い鳩が五、六羽せわしそうに飛び回っている。そして陽を受けた羽根が桃色にキラキラと光る。
 六時になると上の千光寺で刻の鐘をつく。ごーんとなるとすぐコーンと反響が一つ、また一つ、また一つ、それが遠くから帰って来る。そのころから、昼間は向かい島の山と山との間にちょっと頭を見せている百貫島の燈台が光りだす。それはピカリと光ってまた消える。…

「コレはいい趣向ですね!その頃と変わらない景色なんですね〜」
興奮して近年まれな好反応を見せたメレ山でしたが、これがなんと逆鱗に触れてしまい
「なにが変わらない景色なものか!まったく変わってしまった…!!アナタ、この昔の地図をごらんなさい。坂の上から下まで、細長くそれぞれの地所が続いているでしょう。尾道は昔は海運の豪商の町だったんだ、今はサッパリだけどね。土地の権利関係が複雑なものだから線路もグニャグニャにしか引けなかったんだから、あとで見てみるとよい!」
豆知識満載で怒られ、自らの間の悪さを振り返ることであった。
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しかし最後は「ココは眺めがいいから立ち止まる人は多いけど、中まで入ってくる人はそんなにいないのよ。若いのに文学に関心があって偉いヨ」とニコヤカに送り出してくれました。わりと文学音痴ですまない気持ち…。


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こちらは旧福井家住宅こと文学記念室。
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林芙美子が幼年時代を尾道で過ごしたことにちなみ、東京での書斎を再現しているらしい。ああ…これまた森光子が前転しているイメージしか浮かんでこなくて申し訳ありません…。
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本当に景色はいい所です。
以前ここのボランティアのガイドさんに文学マシンガントークを繰りひろげられた記憶があったので身構えて入ったら、変わったTシャツを着た文学青年が「ああこの手紙は…ナントカさんとも親しかったんですものね」などと庄野潤三の交友関係について文学マシンガントーク逆ガイドで瀕死の状態に追いこんでいた。マシンガントーク、ダメゼッタイ!


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地図を見たり見なんだりしながらフラフラしていたら、ロープウェイで登るつもりだった千光寺に着いてしまっていた。
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広島といえば宮島の弥山もそうだけど、とにかくこういうでっかい岩が山肌を形成しています。
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前述の通り海運の時代は尾道は非常に重要度の高い町だったわけで、古い寺社もいっぱいあるのです。とにかく降りよう。
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ロープウェイの下にこんもりしていた緑は艮(うしとら)神社の樹齢900年の楠です。ロープウェイで日々頭上をまたがれている神社というのもなんだかかわいそうな感じがある。


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似顔絵をベタベタ貼っている家を見つけたのだが、目のバランスが一様に同じでとてもおそろしい。
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御袖天満宮の急坂。映画「転校生」でいっしょに階段から落ちた男女の体と心が入れかわっちゃうシーンが撮影されたそうです。実際に落ちたらむしろ身も心も一つになってどっかに旅立ってしまうことでしょう。
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近年ではアニメの舞台になってそっちのお客さんのほうが多かったらしいですが、前回たくさんあった「声優になる!」みたいな絵馬はほとんど見かけませんでした。


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お寺が多いということは墓もまた多いのであって、海を見下ろす墓の大群と猫のフンの臭いが強烈にメメントモリ。わたしの故郷と同じく、かつて栄えたものが死んだことを感じさせる。
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「まあまあそう言わんと…」
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鼻ちょうちんをたらしながらなだめにかかる花屋の猫。
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西國寺の山門には健脚祈願の大わらじが飾られています。お参りに来れる時点である程度の健脚は保証されたとみてよいでしょう。
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細い道を上ったり下ったりしてさすがに疲れてきたので、境内の茶屋で休憩。まだまだ寺社をめぐるよ!


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西郷寺の鳴龍天井は重要文化財です。誰もいないのでそっとお堂に入って鳴龍を一人占めできる。楽しいので手を叩きまくってしまう。


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どんなに時間がなくても行っておきたいのが浄土寺
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聖徳太子が創建したと伝えられ、足利尊氏が戦勝祈願したこともあるお寺。本堂と多宝塔が国宝に指定されています。
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一枚ずつ色の違う瓦や蔀格子が美しい。
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中坊たちが自転車を駆ってあらわれ、ハトにエサをやりはじめた。修学旅行生にも見えないけど近所の子たちなのかな?シブい遊びするなあ。
内陣もお寺の人に声をかければ拝観させてもらえます(昼ごはん時だと「もうちょっと待て」的なことを言われる)。説明がかなり急テンポで、「ここの模様は距離によって色が違う!ハイ下がってみて!もうちょっと、ハイそこで止まって!今緑色でしょ?そしたら今度前出て、そしたら赤になるね?そうしたら今度は外に出て、ちょっと進んでハイそこでお庭の写真を撮るといいね、あっスリッパは手に持ってね」みたいな感じなのでしまいに自動人形みたいなカクカクした動きになってしまいますが、見る価値はおおいにあるので困ります…。


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海ぞいの商店街を通って駅前に戻る。尾道といえばラーメンの町でもありますが、中でもいちばん有名な「朱華園」には長蛇の列が出来ていました…。


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尾道駅前の港から、鞆の浦へのフェリーに乗る。春から秋にかけて、高速船「ジュゴン」が土日祝限定で就航しています。千光寺のロープウェイ乗り場の下の桟橋からも乗れますよ!
時刻表等はこちらを参照→尾道〜鞆の浦 海上クルーズ
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乗客はわたし一人。ワクワクするなー!と思っていたら、エンヤの歌が大音量で船内に流れはじめ、非常に気分を害した。
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ブロガーの怒りをのせて船は走り、尾道大橋をくぐりぬける
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瀬戸内名物、造船会社のドック。手前の船はにらいかないだから、沖縄の船なんだろうなあ。
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そうして小一時間ほど船に揺られていると、鞆の港が近づいてきました!しかしなんだか不穏な雰囲気だ。
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鞆の浦に到着!


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そろそろ暗くなってきたので、本日の宿を目指して歩きはじめるがここも路地が多い町なのでたちまち迷う。車もこう見えてビュンビュン通ります。交通トラブルを解消するために港を一部埋め立てて架橋する計画があって裁判になっているんだよね…。港の看板もその関係のものでしょう。
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海沿いのホテルにチェックイン。眼下には対潮楼で有名な福禅寺があります。明日行ってみようっと。
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夕暮れの港と、鞆の浦のシンボル・常夜灯。


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翌日はうってかわって快晴!それはともかくこの顔ハメは…右はいいとして、左の穴に顔を入れたら怪魚に首級をあげられた人になってしまう。
港でレンタサイクルを借りて、いざ出発です。
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対潮楼からの眺め。朝鮮通信使が「日東第一景勝」と賞賛したというエピソードが残っています。でも逆光でうまく撮れなかった…。
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鞆の浦にも、尾道ほど派手ではありませんが寺社めぐりコースがあります。安国寺の仏像は国指定の重要文化財
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「アンタも物好きやねー。ペロリ」
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海上安全の神様を祀る沼名前(ぬなくま)神社。
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夏の蝶がいっぱい飛んでいます。
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「絶好の産卵日和なの〜」
そこに卵を産むのはオススメできない!


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さらに絶景を求めて坂の上の医王寺へ向かいます。
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鞆の港が一望できる!「風待ちの港」と呼ばれるのが納得の形状。


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そして再び港に戻ってきました。鞆には古い家並みが残っていて保命酒という生薬を売る店先に漢方の香りが漂い、歩いていると楽しい雰囲気。でも車通りがかなり危険で、観光に従事していない住民には架橋敷設に賛成の人も多いようです。このままでは観光地としても微妙だし頭の痛いところですね…。
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荷下ろしのために江戸時代に造られた石段「雁木(がんぎ)」。今では残っているところは少ないそうです。
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排水に群れる魚たち。普通逆だと思うけど温かいのかな?
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サヨリもウロチョロしている。


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商店街の奥から見つめる怪魚を尻目に、
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保命酒味のアイスで喉をうるおしたのでした。
陽射しがだんだん強くなってくるこの季節、まだまだ瀬戸内を歩きたおしたい!


尾道から鞆へ -a set on flickr-

*1:尾道城は歴史的背景ゼロの城を模した展望台です。90年代に閉鎖されて廃墟となっています