沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

九州最高峰・屋久島の宮之浦岳は古代の墓場みたいな奇景だった

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富士山も先日山開きし、山登りに行きたい気持ちがうずいてくる今日この頃です。屋久島の旅の記録を掘り起こしながら、雨の日のまったりスポットめぐり、熱帯なフルーツパーク、そして九州最高峰・宮之浦岳登頂記やオチャメなカニの話題などをドドーンと更新していきます!

バスで島めぐり・その一 〜 ヤクザルのノミニュケーションを見た

縄文杉を見に行った翌日・翌々日の天気予報はあまり芳しくないものでした。あまり山慣れしていないので雨に降られることは避けたい…と考え、この2日はバスで島めぐりすることにしました。
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周遊用のバス券を案内所などで買えるのですが、本数が少ないのでそんなにお得でないばかりか、買うときに日付を決めて買わなければいけないのが絶妙に不便である。こんな天気の変わりやすい島でソレはないだろうよ…とブツブツ言いながら、この日は島の北部にある永田地区にやってきました。
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永田岳の登山道に迷いこんで引き返したりしながら、横河(よっご)渓谷に向かう。縄文杉などの有名なコースには人が絶えることがありませんが、ここは不安になるくらい誰もいませんね。
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うおー!なんて清らかな流れなのだ!!
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花崗岩の一枚岩とヒスイ色の水…訪れたのが秋なのでさすがに冷えるのですが、今の時期なら一人でも飛びこんでしまいそう。
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「これ全部ワイ一人のもんや〜」
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ヤクザル「ククク…それはどうかな」
メレ子「お尻がすごいセックスアピールですね」
一人でおやつでも食べて川でノンビリと思っていましたが、こいつらとか1on1でも勝てないのでおやつを出すわけにもいかず気まずいです。
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「それにしても痒くてかなわんワ」
「俺らももはよノミとってくれる嫁さんがほしいな」
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こっちの人は二人がかりでノミをとってもらっていて気持ちよさそうである。
「ノミをとるだけの簡単なお仕事ですなー」「簡単なだけあって無給ですなー」
わたしもダメな人の恋愛冒険譚に眼をランランとさせて聴き入ったあげく「メレ子だけだよ、こんな話を引かずに聞いてくれるのは…」と言われて「ダッハッハ!何言ってんの、ドン引きだよ!!!」と谷底に突き落とす簡単なお仕事などが大好きですが簡単なだけあって無給ですね…。
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「ク〜 これがほんとの蚤ニュケーション…」
立場が上のほうの人だけが相互コミュニケーションだと思っているあたり、飲みニュケーションと同じですな〜
ちなみに土壌に保水力の低い屋久島では山のほうで降った雨が突如下流に押し寄せる鉄砲水があるため、川遊びには注意が必要みたい。


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またバスに乗って志戸子まで戻り、ガジュマル園にも行ってみる。特に広くはない園内ですが、おどろおどろしい形の木がいっぱいにひしめいていて楽しいです。低地は亜熱帯の植物、高地に向かうにつれてモスフォレスト、そして荒涼とした森林限界…と多種多様な植物相が屋久島の特色です。
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気根が手でさわれるくらいのところに垂れてきている。

バスで島めぐり・その二 〜 スピリッチャル、熱帯フルーツ、鹿肉そして靴紛失事件

翌朝、宿のおばちゃんの流す大音量のNEWSの歌―誕生日なので「君のハッピーバースデ〜♪」的なやつ―でサワヤカに目覚めました。この日は前日とは反対の西南端の栗生地区に行くことに。
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この日もザンザン降るようなことはないけどすっきりしない天気。浜に行ってみましたがヤスデの大発生を知らせる看板があるばかりです。
雨足が強くなり、近くにあったあずまやに入ると何かの木を削っている旅行者の女の人がいた。
メレ子「あっ、ルアーか何かを作ってるんですか?」
女の人「これはね、わたしたちガイドの人と来てるんですけど、今日は雨でしょう。だからガイドさんが『今日は思索の日にしましょう。島で感じたことを形にしてください』って言うんですよ。わたしはウィルソン株(縄文杉へのルートにある大きな杉の株。天井の空洞がハート型をしている)に感動したので、木でハートを作っているんです」
メレ子「ホ…ホホウ…雨の日も課題を出されるとは大変ですね…」
屋久島はとにかくスピリッチャルな人の聖地だけあって、通りすがりの人からもスピリッチャルな発言を聞ける確率が異常に高い。スピリッチャルな発言に感じるこの違和感は何なのだろうか…と考えこみながら歩くことではからずもメレ山も思索の日になってしまい、さらに車で通る旅行者や島の人から「こんな雨の中を歩くなんてかわいそうに…乗っていきなさい」と超すすめられる有様であった。
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そうこうして屋久島フルーツガーデンに行く。係のおっちゃんが園内の果樹をめっちゃハイペースで説明してくれました。おかげでほとんどの果物の写真はブレてしまった…しかし途中でピタッと止まって「なんも関係ないけど…お嬢さんは歌手の○○に似ているって言われない?」と言われたのでメレ山は上機嫌でした。
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園内の案内が終ると、説明にあった果物をひととおり切って食べさせてくれる。
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猫「アンタ雨の中歩いてきて寒いんじゃないの?」
いや、特に寒くはないですが…
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猫「いんにゃ、今は寒くのうてもこれからなるはずだ。わたしをヒザにのせなさい。あったかいから」
メレ子「お前が寒いんじゃないかよ」
このあと、順ぐりに観光客に因縁をつけてはヒザにのっていました。


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フルーツパークの近くにある仲間ガジュマルという大樹も一見の価値ありです。見よ、このダイタンなブチ斬られっぷり…
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尾之間地区には温泉もあるのですが、公衆浴場はかかり湯だけで湯船につかろうとした観光客の娘が島のおばちゃんに泣かされる戦場であるという。いわさきホテルの温泉も日帰り入浴できて海も眺められるのでオススメです。


宿に戻ると、おばちゃんが「メレ子なんか食べたいものある?」とお待ちかねであった。おばちゃんはふだんは鹿児島本土に住んでいて、民宿をやる日だけ郷土である島に戻っているのです。せっかくなので、かねてよりチェックしていた鹿料理のお店に連れて行ってもらうことにしました。

れんが屋

食べログ れんが屋

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屋久杉でできた丸太のテーブルに、鹿・牛・豚の三種盛り!地元の人にも人気のようですごく賑わってました。
メレ子「いやー、いろんなとこでヤクジカを見かけるので食べたくなっちゃって…これは屋久島産の鹿なんですかね?」
おばちゃん「ヤクジカは食べたらいけないはずだから違うと思うけど、ここは確かにおいしくて有名だね〜」
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大好きな鹿刺しもしっかりゲット!鹿肉は肉臭さがまったくなくて、肉というよりは果物みたい…とろける食感を堪能しました。
しかし帰ろうとしたときに大問題発生で、わたしの靴がない!「横にいた若者のグループがとりかえていったのではないか」と目ぼしいドミトリーに電話してもらったり、お店の人が弁償してくれるというのを必死でとめたり、代わりの靴をレンタルしようとするもどこも六時には店を閉めてたりでおおわらわの末、近所の人が「間違えて履いて帰っちゃった…」と現れて事なきを得ました。見つからなかったら次の日に宮之浦岳に登るのを断念しないといけなかったかもしれず、こういうこともあるので靴は手元に持っておかないといけない…と実感。それにしてもお店の人もおばちゃんもホントにがんばって探してくれてありがとうございました!

九州最高峰・宮之浦岳に登る

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奪還に成功した靴とともに翌日は四時に起き、いよいよ旅の目的である宮之浦岳に挑むことに。ちなみに登山口もだいぶ山深いところにあるため、車がない場合はタクシーを予約しておく必要があります。けっこう高くつくけど背に腹はかえられない。ここまで来てケチれるか!
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山道は縄文杉同様、よく踏まれていて危なさは感じませんでした。最初の名所である淀川まで40分ほど。水の透明度がすごいですね。橋から写真が撮れるだけなので、ガイドブックから感じるほど見がいのあるスポットではないのだけど…
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モリモリ歩いていくと山並みの向こうにトーフ岩が見えてきます。花崗岩が雨水に侵食されてこんな不思議な形に割れるのだと、おばちゃん達のツアーにガイドさんが説明しています。
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下の杉の立ち枯れもあいまって、すごくシュールな景色である。ネギとしょうがをかけたい…
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いきなり山道が切れて小花江河湿原が姿を現します。
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2800年前にできたと言われる高層湿原の南限です。
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珍しい植物がいっぱいあるのでしょうが地味めのが多いのでどれが珍しいかは素人目には判別が難しいです。そして奴らが荒らしている形跡がある。
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メレ子「おーい!ゆんべ食べた、お前の友達、うまかったーーー!!!」
鹿「うるせえ!肝炎にでもなれや!!!」


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湿原を過ぎたあたりからだんだん道が険しくなってきます。
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花之江河から一時間、黒味岳分かれを過ぎて、名前のとおり平たい投石平(なげしだいら)に到着しました。
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白骨樹と花崗岩の森林限界が見渡す限り広がっています。まさに奇景ですな〜
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かねての計画ではここでお弁当を広げるはずだったのですが、風がビュンビュン吹いていて非常に寒いためあきらめました。おやつはたっぷり持ってきてそこここで食べてるからいいんだもんね。
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屋久島は500mlPETしか持ってなくても補充できる水場があるのがうれしい(と後日お父ちゃんに言ったら、鹿の寄生虫などの感染のおそれがあると怒られましたが)
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頂上へあとひと息の尾根道は、なんだか古代の巨人族の墓参りをしているみたいでぜんぜん退屈しません。いくらでも歩けそう!同じ高さでも眺望がきかない山はもっと歩きにくいんだろうな。
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上のほう、ちょっとガスってきちゃったみたいだけど大丈夫だろうか。
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あと130m!!!!!
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うおおおおお
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ついたああああああああああ
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なああああああんも見えやせえええええええええええええええんんんんn
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いいんだ…わたしは…頂上を極めるみたいな形式的なことに喜びを感じる女ではないはずだ!とりあえずそこの人、シャッター押してください…
登山口から約五時間の道のりでありましたが、まあ何も見えないところに座っていても寒いだけなのでせめて投石平でお弁当の残りでも食べようかしら…とサクサク来た道を戻る。
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鹿ファミリー「ウププ、我らをバカにするからこういうことになるのじゃ」
メレ子「鹿なんだから馬鹿にされるのは当たり前だろうが!」


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戻る途中で、行きに前後していたツアーの一行と出会う。
ガイドさん「オッ、姉ちゃんえらい早いじゃないの!それじゃ時間余っちゃうよ」
メレ子「頂上がガスってて時間つぶそうにも寒くて…登山口に迎えがくるのは五時だしどうしたもんですかねー」
ガ「じゃあ横の黒味岳にもついでに登っていきなよ!それで時間がちょうどいいくらい」
メ「マジで!」
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豚もおだてりゃということで黒味岳に登ることにしたのですが、ロープを登らなきゃいけないところも多くてけっこうおそろしい道のりでした。
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40分ほどヒーコラ言いながら頂上にたどりついてみると…
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宮之浦岳とさっき通った投石平が足下に一望できる!イェーイみんな見てるー?
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こんなでっかい石もあってテンションが上がります。屋久島クロニクル・巨石とわたし。島全体が花崗岩の岩盤であることがよくわかりました。
正直ひとりで宮之浦に登れるかどうかはちょっと不安で、数ヶ月前から関西の山で日帰り登山したりしてたのですが、景色がすばらしかったこともあってあまりヘバらずに帰ることができました。今後も無理しない程度にいろんな山に登ってみたいものです。雨具などもちゃんとしたものを先日買ったしねー


宿に戻るとおばちゃんがお風呂をわかしていてくれて、最後の夜ということでNEWSのDVDを流しながら焼きうどんとビールをふるまってくれました。
おばちゃん「どうメレ子、山Pはステキでしょう?」
メレ子「そうですねー、亀Pも山Pもステキですねえ」
おばちゃん「亀PはKAT-TUNだよ!…それにしてもメレ子は気が強そうだけど素直でいい子だねえ。うちの息子の嫁にくるかね?」
メレ子「い、いや、わたしトロくさいんで到底つとまりませんよ…」
おばちゃん「そうかい、そんならダメだね」
5秒で嫁候補の座をおろされました。

おまけ:もだまを探して

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翌朝、船が出るまでの時間はずっと泊まっていた安房の町を散歩することにしました。
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?? もだまって何だろう。

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メレ子「あなたがもだまですか?」
犬「…」
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これももだまじゃなさそう。
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しばらく行くと、小さな空地があって真ん中にカニがたたずんでいた。
メレ子「あなたがもだまですか?」
カニ「…!」
テッテッテッテッテッ(※註:カニが逃げ回る音)
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…テッテッテッ
カニ「フー、逃げた逃げた…ここなら大丈夫や!」
メレ子「お前は孫悟空か!!」
帰ってから検索したところによると、モダマ(藻玉)は世界一大きなエンドウマメ状の種子ができるマメ科植物で、空地にニョロニョロ生えてたのがそれらしいです。とりあえずすごいボケ体質のカニが見られたのでよしとしよう…。


屋久島はひととおり楽しんでしまった印象ですが、次に訪れるとすれば山小屋に泊まって縦走してみたいですね。今はベトナムの国立公園で虫探しすることしか頭にないけれど!沖縄旅行の続きも鋭意更新していきたいので、しばらく熱帯っぽい日記がメインになるかと思います。