旅ブロガーとしてライバル視しているid:matsukazutoさんが、スペイン旅行の素晴らしい日記をたくさん更新していて腹立たしい…。*1わ、わたしだっていっぺんきりだけどヨーロッパ行ったことあるんだかんね!ミュンヘンにね!ということで、今回は南ドイツでもっとも有名な観光地のひとつ、ノイシュヴァンシュタイン城をご紹介します。米ディズニーランドの「眠れる森の美女の城」のモデルになったという*2美しい城ですが、作った王様はディズニー的なものとは対極に位置する性格だったらしいのが面白い。
出張時は到着が土曜早朝であったため、土日は思いきり観光したのであった。土曜のミュンヘン街歩きについては、すでに書いたこちらの日記をごらんください。そして日曜、郊外の駅からミュンヘン中央駅に向かう。8時くらいだったと思うけど、まだ陽が出ていない…。
ロマンチック街道を走ってリンダーホーフ城やノイシュヴァンシュタイン城をめぐるミュンヘン駅発日帰りバスツアー、いろんな旅行会社が催行しています。日本で申しこんで行くと安心です。ミュンヘン駅構内で売っていたサンドイッチとコーヒーを買ってバスに乗りこむ。それにしてもサンドイッチがおいしい…。
ミュンヘン市街を抜けると、わりとすぐにアウトバーンの横に牧草地帯が広がって牛やら馬やらにテンションが上がる!
車窓から見える山が峻厳すぎておそろしい。
夢のぼっち飯を演出する小城・リンダーホーフ
最初の目的地・リンダーホーフに到着しました。駐車場から宮殿までの小道を歩く参加者たち。
白鳥「主なきあとの城を守るのは我らがつとめ!」
白「具体的に言うと、カールかかっぱえびせんのひとつも持ってないようなイエローは通せないのよ」
メレ子「あっ、白とびしちゃったんでちょっと待ってください」
白「アンタわたしの話きいてんの?」
メ「鼻にケサランパサランみたいのついてますよ。取っていいですか?」
うーん、それにしてもカツーンと寒さが冴え渡る景色だな〜。
あらゆるものに霜がついている。滞在中、クモの巣におりた霜がたいへん美しかったのを覚えています。
リンダーホーフ城の前。班に分かれて順番に入るので時間までそこいらをうろついてろ、との支持を英語で受ける。日本人が多いので、城内ツアーは日本人でひとまとめにされて日本語解説してくれるそうです。
宮殿の前には池と彫刻を配した階段がある。日本の公園とかでこういう空間を見ると人工的すぎて舌打ちしながら通り過ぎてしまいますが、もったいないので一応登ってみましょう。
「あなたも鯉で水芸やってみんさいよー」
「え、遠慮しとくわよ…」
上から見るとこんな感じ。規模でいうと城よりもお屋敷っていう感じだが、お屋敷というには装飾がクレージー…。
リンダーホーフとこの後行くノイシュヴァンシュタインは、どちらもバイエルン王ルートヴィヒ2世によって建てられた城です。美青年で芸術を愛したそうですが非常にエキセントリックな性格で、いろいろあって無理やり精神病扱いされたのち、幽閉先の湖で水死しています。
こっちも陽が当たりきってない場所には霜が薄くおりている。これはわたしの手形じゃありませんですよ。
室内は残念ながら写真撮影禁止でしたが、中もロココ調極まれりってな感じの非常に豪華なものでした…たぶん…(2011年の10月に行ったので、細かいとこはあまり覚えていない)どうやら周囲にテーマの違う小宮殿が点在していて、秘密の洞窟やらムーア風の東屋など、むしろソッチが見どころであるらしい。キーッ!検索してみたら、小宮殿は冬季見学できないという情報がありました。写真は宮殿の裏口から出たところ。
「魔法の食卓」と呼ばれるものが、いわば究極ぼっち飯システムで面白かった。ルートヴィヒは夢想家の人嫌いで、使用人に給仕されずに食事するため、下階で配膳した食卓をエレベーターで上の階に上げる仕組みを作らせたんです。平民なりに想像するに、王族には食事も大事な社交外交の機会のはず。お客さんどころか使用人にすら会いたくないとは、なかなかのコワモテです。部屋でオニギリでも食べてろよと思いますが、金の使い方がスケール違ってかっこいい。わたしもぼっち飯はわりと好きなので自席でごはんを食べていますが、早く公園で肉まんを食べられる程度に暖かくなってほしい。
受難劇の村で散策
リンダーホーフを出てそう時間もたたぬ間に、なんだか牧歌的な村にやってきた。と思ったらバスが停まって、ガイドのおばちゃんが「ここで休憩しておみやげを買うがよい」と言います。よくわからないままバスを降りましたが、後から調べたところ、オーバーアマガウという村らしい。民家の壁に描かれたフレスコ画と木工彫刻で有名らしいです。
フレスコ画にもおみやげ屋も見てみるものの、あまり興味が持てないので普通の人家があるほうに歩いて行ってみる。人口5千人の小さな村です。
あまりにも静か。冬季はここを離れたり、あるいは避暑用の別荘だったりするのだろうか。後ろの峰にはスキー場のゲレンデも見えます。
気温は日本の感覚でいうと真冬なのに、植物は秋でございという感じにしているので戸惑います。ちなみに本当の真冬は車が雪で隠れたりするらしい。
簡素な教会。
このベンチでおばあさんが二人座って話していたのだが、写真を撮りたいなあと思っていたらどこかに行ってしまった。よく見ると、ここで近所のうわさ話とかをするのはためらわれる感じのベンチである。
実はこの村では10年に一度、世界最大規模の受難劇(キリストが磔刑にかけられて復活するまでを描く劇)が上演されるそうです。されるそうですって言っても、受難劇というジャンルをいま知ったのであまり気の利いたリアクションはできない。あ、でもこちらのサイトによれば、出演者2千人、上演時間5時間だって、なんだか凄そう…。
面白そうな感じの雑貨屋さんなどは軒並み閉まっていた。あ、日曜だからか。
とにかく天気が良いのでどこを見てもすがすがしくて、地元の人に見られたら「何気ない日常切り取りすぎだろwww」と笑われそうな写真ばかり撮ってしまいました。基本的には曇りがちで、こんなに晴れた日が続くのは珍しいことらしい。
狂王の山城、ノイシュヴァンシュタイン
オーバーアマガウを去って、いよいよノイシュヴァンシュタイン城が見えてきた。
ここで自由時間、何時までにバスに戻ってきてねー、ゴハンはこのあたりのお店で食べるといいけどスムーズに出てくるのはこの店かな、などを英語でじっくり解説され解散。自由行動度合いが高くてありがたい。
ノイシュヴァンシュタインに登る前に、駐車場のすぐ上にあるホーエンシュヴァンガウ城にも行ってみましょう。
ホーエンシュヴァンガウ城は、ルートヴィヒ2世が幼年時代を過ごしたお城。ルートヴィヒ2世が心酔した作曲家・ワーグナーのオペラで有名な「ローエングリン」の白鳥の騎士伝説はこの土地を舞台にしています。ルートヴィヒは大人になっても騎士伝説の妄想から出てこない子になってしまうのですが、そのルーツはここにあるという見方が多いようです。
しかし、いくら豪華でも薄暗くて撮影禁止の室内より、すばらしい田園風景に注意が向いてしまいます。牛さんや馬さんがミニチュアみたいだ!
ホーエンシュヴァンガウ城から来たほうとは逆の山道を下りていくと、
冗談みたいな色の湖が姿をあらわします。
カモでさえ、不忍池にいるのより数段お上等に見える…
ノイシュヴァンシュタイン城へは、ここから30分くらい坂道を上ります。交通手段は徒歩か馬車のみ。
こんな感じでポニーが頑張っております。京都の人力車みたいな感じで、よく訓練された観光地感がみなぎっている。
ポニーのフンにあこがれのフンコロガシなど来てやしないかと目を皿にするのですが、冬ということもあってか特に何も発見できず。除雪車ならぬ除フン車が道をくまなく清掃しています。
ズーン
ズズーン
あっ、大規模改修中ではないか。
チケットを見せて、電光掲示板に整理番号が出るのを待つ。世界的に有名なわりにドイツ人にはそこまで人気がない観光地らしいですが、たしかに風情はないですね…まあ、世界的に有名な観光地ってみんなそんなもんだよね…。
あっちの吊り橋からの眺めが特に有名らしいので、後で押さえておかねば。
ヘリが飛んできたので山岳事故かと思ったら、どうやら事故を想定した訓練をしているらしい。
こんなとこまで寄せるんだ…天候がいいとは言え恐ろしい!
無事に吊り下げ完了
ちょっとだけ吊られてみたい。
ようよう順番がきて城内へ。日本語のボイスガイドをもらって、英語ガイドの指定の場所で音声を聞きながら回ります。ルートヴィヒ2世、適性がないのに王族に生まれたのには同情するけど現実逃避しすぎアンドお金使いすぎ…これは周囲がやっきになって精神病扱いしようとするわけだ。プロイセンへの賠償金を抱えているのに建築にのめりこんで、中世やフランスのロココ調を模した城をバンバン築城*3。贅を尽くした大広間でワーグナーに作曲されたオペラを上演するも、お客を招くわけではなく観客は一人だけ。執務大嫌いなのに憧れるのは中世の伝説の騎士やら太陽王ことルイ14世。わが身を振り返って心折れたりはしないのだろうか。これは確かにシンデレラのお城ではなく、人を寄せつけないイバラに囲まれた眠れる森の美女のお城なんだなあ。
周囲からアカン子判定されたルートヴィヒは、適当な診断書をでっち上げられて廃位され、幽閉先の湖で医師ともども水死体となって発見されます。彼は妄想を具現化した城に自分とともに滅びてほしいと思っていたようなのですが、彼の死から4ヵ月後にはノイシュヴァンシュタインは一般公開されていたそうです。
それでは最後に、吊り橋からの眺めを堪能するとしましょう。
ドヒーッ!!!!!
こっちでした
生きている間は側近にも国民にも金食い虫扱いされたであろう王様ですが、このレベルでトチ狂える人ってあまりいないから貴重だなーと思いました。この田園風景がなかったら、お城単品だともっと退屈してるかもしれませんが…。
帰りはロマンチック街道の風景をずっと見ていました。
「牛サーーーーーン!!!!!」「馬サーーーーン!!!!!」と心の中で叫んでしまう。
自転車で走っている人もいた。バスツアーは楽だけど、好きにこの辺で途中下車して適当なところでお弁当を食べられたらさぞや楽しかろう…。
玄関口で身を寄せ合う牧場猫
いつまでも見飽きない風景であった。
ミュンヘンに到着。お疲れ様でした!
もうレストランとかを探す気力がなくて、夜もサンドイッチを食べたのであった。これもとにかくパンとチーズがどっしりしてておいしかった。この国に長期滞在することがあったらサンドイッチばかり食べてしまいそう…。