2024年10月14日 月曜日
三連休の最終日、絶望が深すぎ!
なかなか作業が進まず。
2024年10月15日 火曜日
出社時に今年はじめての金木犀のにおいを嗅ぐ。桜の開花とかもそうだが、切羽詰まっていると「時間の経過をあらわす表現やめろ!!」と思ってしまう。
昼はゴリゴリと来週の出張用の資料を作り、夜はゴリゴリと昆虫大学のウェブサイトを作ってシラバスの原稿も確認して戻す。
やっと過集中がやってきた。今回ばかりは一生来ないんじゃないかと思った。他人事みたいに言うな。
しかしよく言われるように、過集中に頼るサイクルがそもそも良くないのである。
2024年10月16日 水曜日
昆虫大学2024のウェブサイトを公開。
朝の支度をするときにはだいたい映画を観ているのだが、U-NEXTで観はじめた「(ハル)」が、想像より不穏な映画だなと思う。
パソコン通信で知り合った男女の淡いラブストーリー。と銘打っているが、主人公の男女とは別に変な人たちがちょこちょこ出てきて、森田芳光監督なので変な人が出てきた瞬間「黒い家」になる。
夜にはシラバス用のハッシュタグ企画をツイートするが、寝る前に見たらだれも呟いてくれてなくて不安が兆す。
2024年10月17日 木曜日
画像をつけて関係ないツイートをしたりとアカウントを動かしていたら、ハッシュタグが流れ出した。ありがてえ!!
出張前なのに意外とはやく帰れてしまうが、そのぶんぼんやりしてしまう。
2024年10月18日 金曜日
できればムカつかずに生きたい、と思うとき、人はすでにムカついているのである…。『できればムカつかずに生きたい』(田口ランディ)は、読んだことはないのだがタイトルが良すぎて何度も思い出しちゃう。
今日もアメリカの出張準備。
帰ってきていったん寝てしまうが、23時ごろに起きてゴソゴソやる。おもにシラバスの校正戻し。
明日は6時に家を出て芸術激流。もう3時半だが…。
2024年10月19日 土曜日
6時前に家を出て御嶽駅へ。今日はラフティングで急流をくだりながら現代アートを鑑賞するイベント「芸術激流」である。
note.comnote.com
芸術激流チケット発売中https://t.co/rCIUYxxFpV pic.twitter.com/7QCTWv6isv
— パピヨン本田 (@papiyonhonda) 2024年9月28日
このツイートを見て行ってみたいなと思ったのでした。
明け方にラフティングの安全心得について解説する動画を見て、生きて帰れるのか?と不安になる。そのまま一時間ほど仮眠して、バスタオルなどを持って家を出た。
御嶽にはコロナ禍中のときに一度歩きに来たことがある。御岳渓谷を奥多摩まで歩いて帰ってきたかすかな記憶。を、駅に着いて思い出した。
みたけレースラフティングクラブで受付をすませ、記念品のTシャツとタオルを受け取ってスマホと財布とカメラを預けた。この日は残暑がいきなり盛り返した日で30度くらいある(この辺はもっと涼しいと思うが)。ウェットスーツに着替え、ヘルメットをかぶってパドルを手に河岸に歩いていく途中は猛烈に暑い。スタッフの方にホースで水をかけてもらっていてよかった。
川につき、首まで水に浸かってみるとすごく冷たくて、一気にフラットな心持ちになる。
漕ぎ方を復習し、ゴムボートに乗りこんだところで国立奥多摩美術館の館長の佐塚さんがお見送りのために登場。眼光鋭く、きちんとスーツを着こんで髪を撫でつけた姿が御岳の風景から強烈に浮いている。しかし、発声はラフティングクラブの人たちに負けず劣らずでかい。「二年ぶりに開催できて嬉しいです。いってらっしゃ〜〜い!!!!!」と、めちゃくちゃでかい声で見送られて川に漕ぎだす。
ラフティングの動画は落水時の対応がメインだったので怖かったが、実際に漕ぎでてみると八人乗りのボートは安定感があり、それほど恐ろしくはない。
何が作品で何がそうでないかは鑑賞者に委ねられている。漕ぎながらも必死で河岸に目を配る。
河原の石を集めた台座に寝転んで、でかめの石を体の上でこねくり回している人。赤い風船を持って、双眼鏡でこちらを凝視してくる人。巨石に登りそうでぜんぜん登らない動きを繰り返す人たち。ビンゴゲームみたいな真っ赤な丸が並ぶ謎のオブジェ。そして、ほんとに一瞬しか見えない川合玉堂の虎の絵。このいかにも現代アートな面子の中になんで川合玉堂がいるんだよ、と思うが、実は近所に玉堂美術館があるのだ。それにしてもこんな狂った野外イベントに、よく絵を貸してくれるな。
その辺の釣り人や流れついたゴミも、なんだか作品に見えてくるのがいい感じだ。いつもこれくらいの緊張感を持って日常を過ごせたらいいのに。
でかい岩の上に菅笠をかぶった侍みたいな人が立っていて、ボートが岩に寄せられると侍の股間から水が発射され、我々に振りかけられてギャーギャー騒ぐ。楽しい。これは高嶺格の作品かな。
印象に残ったのは山川冬樹の作品。目の前の川にスモークが流れ、犬のような鳴き声がいくつもこだまする。そして、川中にある岩の上で囚人服のような縦ストライプのパジャマを着た山川さんが、それに呼応して遠吠えを繰り返す。
ボートが岩にごつんとぶつかると、山川さんが吠えながら四つん這いでボートに乗りこんできて、さっと戻っていった。作品の背景を知らなくても呆気にとられる強度がある。
ちなみに、翌日Twitterを見たら山川さんが足を複雑骨折してた。基本的にはお元気とのことです。かわいそう…。
激流で右足を複雑骨折しました。山川は元気です。ありがとうございました。 pic.twitter.com/GZyRXjDrXw
— 山川冬樹 (@yamakawafuyuki) 2024年10月19日
河岸でなにか焚いていると思ったら、いきなりひとりずつに鹿肉の燻製が配られた。これは「うんこと死体の復権」の関野芳晴の作品。だと思う。
バナナの葉に載った黒ずんだ肉に塩がふられている。噛むとギシギシとした歯ごたえがあり、皮の部分のぜったいに噛みきれない強度に驚く。朝はやく家を出て、おなかが空いていたので単純に嬉しい。鹿肉の繊維が強すぎて、めちゃくちゃ歯にはさまる。
スマホもカメラも預けてしまったが、写真を撮ること自体は特に禁止されておらず、隣の人は首からさげた防水ケースのスマホでパシャパシャ撮影していた。なぜTG-6を持って来なかったのだろうと悔やむ。
そろそろ終盤かなという辺りで、ラフティングのガイドさんが船内のロープにカラビナでスピーカーを引っかける。
「多摩川、高麗川……」からはじまる詩の朗読が流れる。川の音もあって半分くらいしか聞き取れないが、その不穏さも気にいる。これは吉増剛造の詩だった。
5.5キロの川下りを終えて、河岸にボートをつける。八人乗りのボートを、へっぴり腰の初心者七人も含めて御しつつ、作品鑑賞のタイミングもはかってくれるガイドさんは凄い。ちなみにチケットは一万三千円だが、前回は赤字だそうである。おそらく今回も赤字なのではないか。
最後も館長が岸辺でお出迎えをしてくれた。「軍畑駅の国立奥多摩美術館にも行ってみてくださいね」とのことであった。
マイクロバスでラフティングクラブに戻り、着替えて解散する。澤乃井酒造とかいろいろ寄りたい場所もあるが、急いで電車に乗り、ふた駅離れた軍畑駅へ。
軍畑駅は無人駅で、これまた鄙びた佇まいである。テングタケの菌輪や婚姻色に染まったジョロウグモの雌の腹部に秋の雰囲気を感じながら歩いて行くと、国立奥多摩美術館があらわれた。
国立奥多摩美術館といっても、国立でもないし奥多摩でもないし美術館でもないらしい。製材所の建物をアトリエにして、たまに展示をやっているようだ。展示名がGoogleマップに登録されてしまい、そのままそう名乗っているそうである。
「昆虫」なのにクモやアンモナイトをフィーチャーしたり、「大学」なのに大学を名乗るイベント「昆虫大学」をやっている者としては親近感を感じる。「国立」を名乗るのもいいな。昆虫大学もこれから国立昆虫大学にしようかしら。国立(くにたち)でやると思われたりして面倒なことになりそうだが。
館内にはいくつか作品が展示されており、ここではじめて芸術激流のコースと作家のマップを見ることができた。
ファミリーレストランの絵本作品『ペコちゃんとアナコンタ』も素敵だった。売られていた絵本、買えばよかったな。
館内には売店があり、豚汁やドリンクが売られている。
豚汁は野菜になかなか火が通らなくて…とのことだったが、恐縮しながらがんばって細切りの野菜を探してよそってくれた。豚汁とハートランドの瓶を前に、製材所の無骨なイスと机に向かっているとなんだか楽しい気持ちになる。美術館美術館してない場所で作品を観るのって、気負いがなくて楽しいな。かなり大勢の人たちががんばって場を作っているのも見てとれて、なんだか心が洗われる。
その辺に積まれている廃材も、なにかわけのわからないものを作った名残りっぽいものが多い。終わらない文化祭みたい。
のんびりしていると、食堂スタッフの男性が「おもち…食べますか?」と訊いてくれて「いいんですか…?」と言ってしまう。これからストーブで焼くらしい。
電車を一本遅らせて、豚汁のスープに浮かんだ焼き餅をいただいてから失礼する。ごちそうさまでした。
電車の乗り換えもスムーズにいって、16時半くらいに家に帰り着く。やはり6時に家を出ると一日が長いな。
17時すぎに集荷が来て、いきもにあの荷物を三箱渡す。
すこし仮眠してからまた外に出て、レイトショーで「破墓/パミョ」を観に行く。アメリカ出張に行く前にどうしても観ておきたかったのだ。キービジュアルがすごく良くて、特に経文の入墨をびっしり腕に入れたイドウォンがあまりにも気になっていたのだった。
出てくるのは魔を祓う巫女(ムーダン)の男女の師弟と、風水師とキリスト教徒の牧師?の四人。まずムーダンはある富豪の一族から依頼を受け、後継ぎに代々かけられた呪いを解こうとする。先祖の墓に原因があると踏み、手を組んでことに当たる四人だったが、その墓には想像を超える忌まわしい仕掛けがあり…というお話。
何を書いてもネタバレになってしまうのだが、かなり好きな作品。今年ベストかもしれない。だんだん露わになる墓の真実もかなりおぞましく、韓国(と日本)の歴史に深く関わるもの。なにしろ四人のビジネスライクで、でもお互いへの信頼はあるという関係性が良い。
ムーダンの師弟が特に最高で、恋愛ではなく信頼をベースに姉巫女にくっついてまわり、時に身体を張って守ろうとするイドウォンが良すぎる〜。登場人物の過去が本当に最低限しか描かれないところがまた想像をそそるし、観る者への信頼も感じる。これはNetflixでドラマシリーズ化もありうるんじゃないかな、というかしてほしいですね…。
2024年10月20日 日曜日
深夜のフライトでアメリカ出張である。
朝から洗濯機をまわして荷づくりをし、昼はちょっと外に出て出向者からの頼まれものを調達してくる。
午後はシラバスの作業をちょっと進めた。編集サチコ氏のえんぴつを確認して、自分からもコメントがあれば足して寄稿者に修正をお願いする。サチコ氏のえんぴつはおそろしく的確で、わたしは自分の原稿にえんぴつを入れてもらって手を入れていくのが畑に畝をつくるみたいに好きな作業なんですが、みなさんはいかがですか。
時間になったので家を出る。なにか忘れものをしてないかいつも不安。海外に行く前はいつもこう。
空港で同行の後輩と合流し、すんなり搭乗する。サンフランシスコ国際空港行きの飛行機は隣のシートが空いておりラッキー。通路側のおじさんがすかさず真ん中のシートを荷物置き場にしていたのにはちょっとイラッとする。
映画は見ないで、Kindleでホラー小説を読みながらわりとすぐに寝落ちした。
約10時間のフライトを経て、日曜の16:30に空港に到着。日付変更線を越えているので日曜のままという事実に慣れない。
サンフランシスコ国際空港からホテルにタクシーで向かう。エアポートタクシーで行ったらどえらく高かった(帰りにUberで払った金額の三倍)。運転手は上機嫌でいろいろ話しかけてきたが、今思えばそらそうよという話である。
ホテルの道路を隔てて向かいにスーパーと数軒の飲食店があり、いったんチェックインしてからサブウェイみたいなサンドイッチ屋に行って今日の夕食を買う。
部屋に引っ込んで、Netflixを流しながら原稿の戻し作業を続けた。ホテルは快適だが、とにかく乾燥していて耳と鼻が痛い。
昆虫夜学の抽選応募フォームも作成して、SNSでアナウンス。
24時ごろに眠りにつく。