メレンゲが腐るほど恋したい

旅行記や生きものの話を写真多めの長大な記事で送ります

オープンしたての「沼津港深海水族館」へ。目と舌で深海魚を味わうワンデートリップ

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「みんなシーラカンスのことを生きた化石生きた化石って言うけれど…生きた姿をおがむ機会が一生ないのなら、どれだけ前から同じ姿で生きているとしても、わたしにとってはシーラカンスは生きてないのと同じでは?」
冷え性に悩まされるあまり、そんな厭世的なグチをつぶやいていたある日。
沼津港深海水族館・公式サイト
静岡県は沼津に、深海魚を専門とする水族館が2011年12月10日にオープンしたという情報が!さすがに生きたシーラカンスはいないものの、貴重な生冷凍のシーラカンスを展示。そのほか、駿河湾で採取した深海生物などを展示するとのこと。人智を超えた姿の深海生物たちを目にすれば、この世の憂さも多少は晴れるに違いない…。

漁港で深海魚ランチをキメる

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年末のある日、東京から新幹線「こだま」で三島駅まで一時間弱、さらに東海道線で5分で沼津駅にやってきました。静岡に来るたびに、脳内のイメージよりもだいぶ東京に近いので驚いてしまいます…。ちなみに三島は東京から近すぎる日本三大清流!富士の伏流水で水遊びで紹介したとおり、日本屈指の水郷。暖かくなったら沼津と三島、あわせて訪れても東京から日帰りできますね。
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わたしが行ったときは公式サイトに所在地すら載っていない状態でしたが、バスで沼津港に向かってみると、漁港の商店街に探すまでもなく建っていました。なんだか水族館のオープンではなく、パチンコの新装開店を告げる看板のようにも見えますが、パチンコの看板を作っているところに発注してしまったのか。それかこちらが「ぱちんこ海物語」に毒されてしまっているだけかもしれませんが…ギャンブルにからきし弱いのでパチンコはやったことがないのですが、海物語ってどんな物語なんだろう?
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漁港には干物や魚の加工品を売る店が建ちならんでいます。
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おまじないの5円玉でグルグル巻きにされたウミガメに導かれるがまま顔ハメに興じてみたものの、なにやら満たされない…この気持ちは…空腹!
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せっかく深海魚を見にやってきたのだから、ここはやはり1メートルでも深い海のお魚を食べたい。しかし、商店街を歩いてみてもノーマルな魚や寿司屋が多く、あまり深海魚をプッシュしている雰囲気はないようです。お寿司じゃネタが深海魚でも、奇ッ怪な容貌を楽しむことはできないし…
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お店の前に深海魚を盛ったトロ箱を発見!
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水揚げされたときの圧力により、眼球は膨張し口から浮き袋が飛び出しています。こうなってしまうから深海生物の飼育展示は難しいんだネエ…
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ウロウロした挙句、「深海御前」なるものを出しているお店へ。いろんな種類の深海魚を一度に楽しめるそうです!そう、女っていうのはいろんな深海魚をちょっとずつ食べたい生き物なのよねー(主語が大きい)
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アブラボウズの煮つけ
水深400mに生息。なんと体の40%が脂肪でできており、体質によってはおなかを壊してしまうこともあるとか……ブリみたいに脂がのっていて甘くとろけています!
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アブラボウズの刺身
白くなめらかな見た目から、高級魚であるクエの名を騙って市場に出ていることがあるそうです。でもクエってひたすら淡泊なので、味はぜんぜん別物ですよね。九州出身なのでクエを食べる機会は平均より多かったですが、東京にきてクエがあんなに高級魚扱いされていることに違和感…不敵な面構えの巨大魚なので、水族館で見るとかっこいいんですけどね。アブラボウズを褒めようとしていたのにクエをディスってしまい、わたしも驚いています。
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▲アブラゴソ(ヒウチダイ)の塩焼き(左)と、メヒカリの揚げ物(右)
ヒウチダイは水深200〜700mに住む魚で、これも脂がのってますが食べやすい魚。
メヒカリは水深200〜300mにいます。生前は胸びれを立てて底地を移動していたようです。目が大きいので名前のとおり目が光るのかと思ってしまいますが、発光器はお尻のほうにあるそう。揚げると頭からボリボリいけるくらい骨がやわらか。
もっと深海魚のクレイジーな外見を楽しみたい気持ちもありますが、クレイジーな魚をクレイジーなまま供しているお店は思ったより少ない印象。駿河湾の底地曳網にかかる深海魚を安定して供給するのはなかなか難しのかもしれません。味には満足したし、目で味わうのは水族館でもできるからいいか。

深海生物の諸行無常を実感しよう!

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では、深海水族館に入館してみましょう。この中でラブカやメガマウス、フクロウナギにキャスモドン、ヌタウナギリュウグウノツカイや頭部がスケスケのデメニギスに会えると思うとワクワクするね〜!(ハードルを上げすぎてもはや業務妨害


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さっそく中に入っていくと、いきなり現れた白い巨大ダンゴ虫!ミギャー
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30センチほどもある白く堅そうな背中、サングラスのような三角目、そして不必要に蠱惑的な脚つき…これは大王具足虫(ダイオウグソクムシ)です。トップバッターにコレが来るなんてにくい演出!
駿河湾にこんなのがいるなんて夢がある…と思いましたが、ダイオウグソクムシが大西洋・インド洋の水深300〜2000mに生息し、体長50cmに育つのに対し、日本にいるのはオオグソクムシで水深150〜500m・体長12cmと、ちょっとスケールダウンしております。ちょっとスペックにうるさい感じになってしまい、「これだから三次元の女は…」と言われてしまいそうですが、深海をテーマにした記事なので水深へのこだわりは死守したい。いずれもダンゴムシの親戚で、深海の掃除屋として名をはせています。
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「うおー!いますぐダイオウグソクムシにスリスリしたい…分厚いアクリルの壁が憎い!!」ともどかしい思いをされている諸兄におかれましては、ちょっとサイズは控えめになりますが、タイなどの魚の口に寄生する「ウオノエ」が類似品となります。お魚の口内にひそむエイリアン夫婦を激写で紹介しておりますので、ぜひ食卓でじかに愛でていただければと思います。
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今年のお正月帰ったときも、煮つけの口から登場してました。


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アカザエビ(水深200-400m)
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▲ショウグンエビ(水深2-30m)
あれ?なんか浅くないか?


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▲深海ナマコ
水深は忘れたけど深い。よしよし。
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▲アデヤカキンコ(水深5-30m)
やっぱり浅い!かわいくしたってだまされんぞ!


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すっかり水深厨と化して息巻いてしまいましたが、よくよく見てみるとこれは浅い海の生きものと深い海の生きものを比較するコーナーらしい。なるほど!こうすれば深海の生きものを当社比半分で充実の展示をすることができるぞ!やったね!
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深海生物の展示が多分ものすごく難しいであろうことを考えると、そんな意地悪なコメントをしてしまってはいけないのでしょうが…新江ノ島水族館では海底の硫黄噴出孔に住むサツマハオリムシや鉄のウロコを持つ貝スケーリーフットを見たことがあり、名前に「深海」を冠しているここに激レア深海生物を期待してしまっていたんですが、規模がぜんぜん違いますものね…。
12月限定でメンダコの展示があるとのことでしたが、公式HPのニュースリリースでは数日の間に「メンダコ入荷しました」「メンダコ死にました」「メンダコ再入荷しました」的なメンダコの生死情報が矢継ぎ早に更新されており、わたしが行ったときにはもはやニュースを更新する気力もなく全滅していました。ちょっと諸行無常すぎるので、生体にこだわらず深海生物の標本や映像や実物大模型などを充実していってもいいのでは?大きさを感じるっていうのは、こういう施設でしかできないことだしね…。
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駿河湾に捨てられた廃棄物が漁礁になっているという展示(ゴミを捨てろというメッセージではないはず)
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あ、ヌタウナギいた!うれしい!
グレートヌタのチョーク攻撃 - 蝉コロン
珍妙なライフサイエンスブログ「蝉コロン」さんの上記リンク記事によれば、ヌタちゃんはグソクムシ同様に死肉大好きなスカベンジャーだと思われていましたが、積極的に獲物を襲うプレデターの嫌疑がかけられているそうです。たしかに殺し屋の口をしている。
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あと、個人的には添え物っぽい扱いで入っていたウミグモに興奮しました。やはりとっちらかった形状の生きものが好みです。

シーラカンスミュージアム

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建物の2階はシーラカンスミュージアムになっています。このシーラカンスは「よく来たな」的なことをおじいさん声でゴニョゴニョ言っていたが、生きた化石だからって各個体がおじいさんというわけでは…と思いました。
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シーラカンス(剥製)「フフフ、本当の年は秘密だが、われわれの寿命は60年とも100年とも言われているぞよ」
メレ子「魚のくせにモッタイつけよってからに…」
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シーラカンス(生冷凍)「しかも年月による変化がほとんど見られないので、外形的に年齢を判断するのは難しいのです!メレ山さんにおかれましては嫉妬の炎に焼かれるかもしれませんが」
メレ子「う、うらやましくなどないわ!幼魚から晩年にいたるまで変わりなくゴツゴツしとるだけじゃろうが!」
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メレ子「わたしもアンタを魚市場で世紀の発見してみたりしたいわ〜」
シーラカンス(生冷凍)「お前はfacebookで小中学校時代の友人でも発見して共通の話題がないことに絶望でもしとるのがお似合いだわ」
メレ子「生きた化石アーリーアダプターっぽく煽られた!」
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メレ子「アンタ、なんでこんなラブホみたいにライトアップされてんの?見づらいんだけど」
シーラカンス(生冷凍)「真面目に回答すると、ここ作った人に聞いてほしい」
七色に光るのはラブホのお風呂だけで十分だよ!
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シーラカンス研究者の研究室?を再現?した空間もありますが、もっとシーラカンスの謎やオモシロエピソードがつまった空間になることを期待したい!
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メレ子「やはりゴツゴツ…ウロコに年輪が出ないため年齢肌というものが存在しないとはいえ、これなら再春館製薬のCMに煽られているほうがマシというもの」
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シーラカンスへの一方的な勝利を宣言し、意気揚々と沼津を後にするメレ子でありました。帰りのバス停にバスへの呪詛が刻まれていたのが印象的。
せっかく「深海」というすごくワクワクするキーワードを冠しているので、いろいろな意味でディープな方向に突き進んでほしいなと思います。とはいえ、まだオープンしたてなので今後の充実に期待したいです!

雑誌「旅」最新号のお知らせと、休刊について

旅 2012年 03月号 [雑誌]
旅 2012年 03月号 [雑誌]
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新潮社 (2012-01-20)
虫と旅に関する連載「むし旅Japan」を連載させていただいていた隔月誌の新潮社「旅」ですが、現在発売中の2012年3月号をもって休刊となります。


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連載4回目にして最後の「むし旅」は、『〜奈良で虫たちの「あをによし」を探す旅〜 神奈備の青い宝石と、危険な赤い星』と題し、奈良公園でルリセンチコガネを探してきました。
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ルリセンチコガネはわたしの原点とも言える虫で、これまでもいろいろなところで取り上げてきましたが、森の中で本腰を入れて探してみると出るわ出るわ、虫探しの喜びを本誌では歴史上の発掘になぞらえて語るというわかりにくさ2乗の構成となっております。


「むし旅Japan」は初の商業誌連載で、「虫と人とのかかわりをテーマにした旅行記」という内容は、わたしにとって予想以上に楽しいものでした。ネタも意外と集まるもので、とても力を入れて書いていただけに、休刊となったことはとても残念です。
鹿児島のくも合戦など、人には好かれにくい虫も取り上げさせていただいたり、素敵なページデザインと自由に書ける場を提供してくださり、また角田光代さん・酒井順子さんと鼎談させていただいたのも本当に光栄な体験でした。ものすごく読みこんでいただいているのが伝わる校閲も、いつも楽しみにしていました。編集者Fさんをはじめとする新潮社の皆様、また「旅」を手に取ってくださった方々、編集部経由ではげましのお手紙とかわいい虫ハンカチを送っていただいたRさん、ありがとうございます!
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ちなみに刺繍作家のtamaoさんとコラボして作ったミツバチブローチは、休刊後も新潮オンラインショップで販売を続けていただけることになりました。かわいさ致死量のブローチ、わたしも愛用しています。
新潮オンラインショップ メレ山メレ子×tamao ミツバチブローチ


連載は終ってしまいますが、「むし旅」は自分自身とても気に入っている企画でやりたいこともまだまだたくさんあるので、形を変えてでも続けていければと思っています。どんな形になるかわかりませんが、今後もお付き合い&情報提供などもいただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします!


沼津港深海水族館 -a set on flickr-