沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

日記

朝起きるとTwitterのタイムラインが屍の山だ。住民税の通知がぞくぞくと届いているらしい。これでは何のために生きているのか、働いているのかわからない。そんな声があふれている。
会社員であるわたしの元にも数日前に住民税額と、それを次の賞与から一括で天引きすることもできますよという人事部からのメールが届いていた。右からこんにちはとやってきた賞与が左に消えていきますといった数字が記されているようだった。
通勤の途上にも住民税の通知を受けてショック死した者たちの屍が累々と並び、それをかき分け乗り越えて駅まで歩くと、梅雨の湿気とあいまってじっとり汗が流れる。こうまでしてかき集めた税が、少しでも困っている人のため使われますようにと祈るばかり。

ちょっと前に起きたことについて書かなければならない、それ以外に出口はない、と感じているのに、仕事を終えて家に帰ると机に向かうことができない。書かなければ書かないで、ふとしたことから連想が広がり呪詛が暴れだすのに、いざとなるときつい記憶を整理し並べなおす作業に怯んでしまう。
そんな状態が、5月下旬の引っ越し前後から続いている。転居とそれにともなう膨大な作業はたしかに痛みを散漫にしてくれたが、何度考えてもやはり書くこと以外に今の心理的状況を抜け出す道はないのだった。とりあえず何でもいいから毎日書く時間を作ろうと、ブログを再開することにした。
家の壁を塗ったりうず高く積まれた段ボールを空けたり旅行の計画を立てたり、突然すべてが虚しくなったりしながら過ごしているこの日々が、多少は明るいところに繋がっていればいい。