沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

『奇貨』感想まとめ/増刷分を販売中です

『奇貨』の通販第一弾を受け取った方々がいろんな感想をネットに書いてくれて、台湾に出張しつつ貪るように読んでいたら一週間が終わりました。

寄稿のおしらせ

出張中だったのもあってSNSでしか告知できていなかったのですが、新居のカスタマイズを楽しむ様子をSUUMO「マンションと暮らせば」に寄稿しています↓
suumo.jp

『奇貨』感想まとめ

以下は『奇貨』にいただいた感想です(勝手に要約&抜粋:随時更新しています)

  • 読んで悪夢に魘されました。クローズドになっているからこそ起こりうる恋愛関係の心的外傷が丁寧にすくい出されて描かれていました。あとがきの「不幸はずっと見ていたくなる色をしている」には闇の深さに恐れつつも共感。
  • アルコールを入れた勢いで読んだ
  • 前書きで泣いたのは初めてです
  • 「悲しいことを書くのは単純作業に似ていて」という一文があり、「本物の表現とはやはり違う」と続くのだけれど、黙々と運針をするように、そうじをするように、単純作業こそが人を生き延びさせる側面もあるように思った。
  • めちゃくちゃ面白くて一気に読みました。著者への賛辞として「面白かった」が最高に合ってると思った
  • マウスポチポチクリックして金出しただけなのに、影から絞った油と目から出た血を混ぜたインクで書かれたような文章を読んでしまっていいのか?!?!?!?!
  • 文章として形にしてくれたことで、それを読んだ人の過去を少しだけ肯定してくれる
  • 本当に表現がストレート、鋭利で、正直な苦しみが表現されていて感嘆しました。過去の色々な自分の黒歴史なども呼び起こされたり、恋愛によらず共感することも多かった…。
  • 私も若い頃何度も失恋したので著者の痛みはよくわかる。が、著者の相手を追い詰めたいと思うほどの恨みはストーキングに近くなっていく。同時にそんな自らの傷を開いて中を覗き見るような筆致は、もはや文学。
  • 前半刺身包丁抉られるような痛みを感じながらボロボロ泣きすぎて、読み進める事が出来なくて、章ごとに日を分けて読みました。
  • ワイプの小窓から「ひぇぇーい!」って言いながら先の尖った長い棒でバレないように突きてぇ〜〜!!
  • 僕は非道な人間なので、アーティストたらんとすることのみっともなさを何となく理解できてしまうというか、ああなるほどこういう美意識を当人が意図していて、それが舞台裏を知る他人からこうみっともなく見えるということがあるのかというあたりを面白く読んだ。
  • 文フリに行った友達が「早く読んで!」と送ってきた沙東すずさんの『奇貨』読了。自分が立つためになんでもするすずさんは本当にかっこいい。かっこいい本。
  • 読後感がすごくて、20年前にひどい裏切られ方をしたあれこれがフラッシュバックして涙が出てきた。
  • 「傷ついたときはまず心から傷ついたことを知ってほしい」という言葉に、本当に、本当にそうだなと思う。意味とか、克服とか、癒しとか、そういうことじゃない。傷ついたんだということを知ってほしい。その気持ちが、鋭敏な言葉選びによってヒリヒリと、ビリビリと、伝わってくる。
  • 例えば、相手に殴られてへこんだ自分の身体を見せながら「ここが窪んでいるのはね、あなたの指がここをえぐったからで、ここが切れているのはね、その爪がここをかすったからで…」みたいに、丁寧に克明に痛みを書き切っていて清々しさすら感じました。フレッシュ。
  • 読み進めるうち両肺に重い霧が充填されていくような息苦しさ。濾過すまい、その前に記す、という気持ちが伝わる。
  • どす黒い過去があればあるほど感情移入して、あのとき私は、相手はどんな心理だったのだろうかと脳内検討会が始まるとんでもない本だ。
  • 擦り潰された心と身体から搾り取った血文字で書かれる痛みの記録。作家がその名を捨てるとはこういうことか…と血の気が引く。幸か不幸か淡白に生きてきたので重ねる引き出しがほとんど無くて助かった、身に覚えがあれば心臓を抉られるとこだった…
  • マンドラゴラの表紙いいね。聞いた者をも殺す悲鳴だ。
  • 半分くらい読んだところで段々動悸がし始めた
  • 70ページが『カイジ』だった
  • 「熊の場所」の展開がめちゃめちゃバクバクした。勇気がすごい。ボロボロになりながら自供を引き出すところもすごいし偉い。
  • DIVAにしか生み出せない作品!終盤手に汗握りました。本当にDIVAなので、テイテイのWe Are Never Ever Getting Back Togetherを好きな人は全員読んでよね!
  • 特級呪物との噂にびびって、少しづつしか読めないんじゃないかと思っていたら、一気読みしてしもた。 傷だらけでなお一歩も引かない闘いっぷり。読み終わって何となく猫を撫でに行った。よしよし、よしよし。
  • 『奇貨』 読み始めたら止まらなくてソファの横に棒立ちのまま読み終えた。自分と一体化していた他者を丹念に引き剥がしていて良い すごかった。122ページが特に好き 「くたばれ♡くたばれ♡」からの「そう、あなたたちです。」 そう、あなたたちなんですよ
  • これはただの失恋立ち直り物語ではない。受けた傷に対してこれでもかという程向き合い、分解し、言語化されていて、読んでいて苦しかったけれど、嫌な苦しさではなかった。すずさんのかっこよさにしみじみ惚れてしまいました。
  • 私は痛みを逃したくて向き合わない方法をとるが(きっと多くの人がそうだと思うが)、すずさんはドカンドカンぶつかりに行って出口の穴を開けようとする姿勢。自分の心の中の恨みも憎しみも自尊心も隠すことなくまっすぐ観察していてすごいな
  • 大きな傷は見た目は治ったとしても後遺症は残る。心も同じ。深い傷と症例を見せていただきました。心から大好きだった気持ちが伝わってきました。信じていたものが崩れ去る時の、血の気が引く瞬間。そして見ないようにしていた違和感のピースがハマっていってしまう絶望。ぐうつらい!
  • 沙東すずさんの『奇貨』めっっちゃくちゃすごい本だった…。失恋体験によって生じた傷をこれでもかというくらい高解像で言語化していく内容で圧倒された、、元恋人とのなれそめはメレ山メレ子時代の著書『こいわずらわしい』で読んでいたが、その恋がこのような形で終わりを迎えていたとは。失恋の最中にいる人が、相手からの言葉を一つひとつどう解釈し、どのような時間を生き、心身がどのように揺れ動いているのか、こんなにも生々しく垣間見させてくれるものはそうそうないと思う。読みながら自分も過去の失恋が生々しくよみがえり、ちょっとぐったりしてしまった。『こいわずらわしい』とセットで読むと本書の迫力がさらに増すのでぜひ
  • ヘビーな内容に血の気が引きつつ先が気になり読む手が止まらず。最後に沙東さんがとった行動には驚いたけど、私も過去に同じ様な行動をとっていたことを思い出した。辛い経験と己の気持ちを冷静に鋭く言語化し本に纏めていて凄いとしか言いようがない
  • 面白がって冷笑する人、口を塞いでくる人、友達に距離を置かれる描写は辛くて毎回泣く
  • 感情を爆発させ、自分の物語を再構築していくところは、昔の自分に対して赦しが得られるようで、嬉しくて涙が出た。
  • 新しい文章が読めるのは嬉しいけど、これは喜んでいいことなのか、しかし文章が好きだ! という気持ちでごちゃごちゃになり、最後に「立ち直りの物語」が明確に拒絶されて痺れた。
  • 『こいわずらわしい』〜『奇貨』、読了。本でも映画でも、他人の恋愛についてこんなにも生々しく辿ったのは初めてだと思う。こんなに生々しい感触のまま言葉に落とし込める才能と、言葉にしようとする胆力に圧倒される。物書きの凄味を感じると共にフュリオサを思い出した。
  • 読み始めてハッと気がついたら頭が締め付けられるような感覚が… 奇貨を読んで一番思い出したのが猫が死んだときのことであれ以上受け入れ難いことはなく、受け入れてもいないし今だに立ち直りもしていないしその必要ももはやないと思っている
  • すごい本。おもしろいって言っていいのか分からない。朝ポストに入っていたのを鞄に入れて、帰りの電車で開封して読み初めて乗り換えのホームで立ったまま読了。 “それ聞く?“それ言う?”の言葉の応酬、裏返ったオセロを一つ一つ反芻する将棋の感想戦の様な下り、推理小説か?(これ読んでいいのかな..)という気持ちで読み始めたが頁をめくる手が止まらない。手に汗握るラスト。恋愛バンダム級が違いすぎて未知の格闘技を見ている気持ちになる。拍手。 終盤一文字一文字がタイプライターで打たれているみたいにガシャーンガシャーンガシャーンという効果音と共に響いてきた。弾丸かよ。筆者の心の叫びを受け止めたせいか(到底受け止め切れる重量じゃない)読んでいる途中からすごくカラオケに行きたくなった。
  • 彼との会話にダメージを受けながら、私もすずさんみたいにちゃんと話をすればよかった理由も聞かず話さず泣いて終わった過去の経験を思い起こしながら一気読みした。
  • 私は痛みを逃したくて向き合わない方法をとるが(きっと多くの人がそうだと思うが)、すずさんはドカンドカンぶつかりに行って出口の穴を開けようとする姿勢。自分の心の中の恨みも憎しみも自尊心も隠すことなくまっすぐ観察していてすごいな
  • 「心底どうでもいい。」のところが響いた(複数)
  • 「バカのバタフライ効果」にウケた(複数)
  • 自分がされたことを思い出した(多数)
  • 自分がしてきたことを思い出した(多数)
  • 自分の内面と向き合うことで他人の内面も曝しだす手順が書いてあった。私自身は、この中の「おそるおそるツイートにいいね」した登場人物だった。その時イイネしたツイートは、腹と頭に巻いたサラシにダイナマイト仕込んだ人みたいな言葉だと思った。ここには人が人に寄せる思いの変遷がある。心変わりや軽薄さを自己愛の物語化しようとする欺瞞を、サラシ腹巻ダイナマイトの言葉がそれを吹っ飛ばして不恰好な事実を剥き出しにしていく。どっちに力があるかなんて言うまでもない。この本はたくさんのひとを打ちのめしながら力を与えるんだろうな。


あと、封筒に描いたマンドラゴラちゃんを切り抜いてしおりにしてくれた方が多数。とても嬉しいです。たくさん描いたので若干こなれてきたよね。

増刷分の注文・発送について

satosuzu.base.shop
増刷分が無事納品されましたので、今までご注文をいただいた分について順次発送を進めています。12/2(土)までに注文いただいたものは12/3(日)に発送完了予定です。
83s.shop
「はちみせ」さんでも現在SOLD表示ですが、在庫を補充します。あと2千円で送料無料なのになー!という時などに。

扱ってくださるお店・書店さんがありましたら、mereyamamereco@gmail.comまでご連絡ください。送料はこちらで負担いたします。


自分が書いたものを自分以上に重く受けとめてくれる感想を読みながら、思い出していたのは「ものを書く人間は、みんな嘘つきです。」という言葉だった。

わたしだけに見えたわたしだけに都合のいい話を書き殴り、人目に晒して知らないだれかの共感を買うために整えるなかで自分にも見えないくらいこまかい嘘をつき、書き終えた頃にはすべてを忘れてどうでも良くなっているのが、わたしにとって最高の結果だと思う。
(『奇貨』まえがきより)

まえがきにこれを書いたときから、この言葉がずっと心を離れなかった。亡くなった雨宮まみさんが『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』の書評によせた冒頭の一文だった。
spur.hpplus.jp
わたしが書いたものを読んだとしたら雨宮さんなんて言っただろうな、と考えていた。なんか不謹慎なジョークを飛ばしてくれただろうか、と想像しているところに、雨宮さんの連載『40歳がくる!』が7年ぶりに刊行されるというニュースが流れてきた。
amamiyamami.hp.peraichi.com
ぼろぼろの状態で春に40歳を迎えて、自分なりにけりをつけたあとにこの本を手に取れることは、個人的にはとても嬉しい。正座の心持ちで読みます。