沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

日記(2024年6月10日~2024年6月17日)

2024年6月10日 月曜日
朝から報告会で緊張するが、特に波乱なく終了。
今日の昼も公園を散歩する。やっぱりオフィスで過ごすより疲れがとれる気がする。運動する時間がとれないぶん一日8000歩くらい歩きたいんだけど、意識的にがんばらないと達成できない。
オンラインミーティングのツールがすごく手近になったのはありがたいんだけど、席にいる人に声をかけようとしたらなにかの会議に参加してることが多くて気をつかう。
17時までミーティングまみれで、そのあと軽い気持ちで手をつけた仕事が22時までかかり、すっかりご機嫌斜めに。このぶんでは今週末また休日出勤かも。家と自分がかわいい以外に喜びがなーい!!と思いながら帰ってきたら、塗装した玄関が洗面所から見てもかわいくてちょっと機嫌をなおす。かわいい女のかわいい家(大きい男の大きい靴)。

2024年6月11日 火曜日
買ったばかりの細かいプリーツの入ったロングスカートを洗ったらプリーツがとれてしまう。困ったな…と思いながら出社。プリーツってこういうものだったと思い出すのは、つねに洗濯してしまってから。
むかしウズベキスタンで買ったスザニ(刺繍)を洗ってみたら、何度洗ってもアメフラシの出す汁みたいな紫色の水が出てきてヒィーってなったのも良い思い出です。
社内のプレゼン大会があり、部署メンバー全員で準備に追われる。結果は残念だったが緊張を乗り越えたことでテンションが上がり、ちょうどHちゃんと LINEがきたので休憩がてらこの夏の予定を調整。残念ながらHちゃんとは直近のスケジュールを合わせられなかったのだが、こんど石拾いに行こうと約束する。彼女は最近石拾いにハマっていて、磯に行くたびにキロ単位で石を拾っているらしい。
「どういうわけかズボンが落ちてくるんですよ」「理由は明らかだよ」「石のもつ、不思議なちから」「それ重力だよ」「ベルトしておけば石ちからに勝てるかな?」「重力ね」とボケつづけるHちゃん。
そこから派生してこの夏はアマモ場の生きものを見に行こうと話していたのを思いだし、ワクサカさんと宮田珠己さんに連絡。ある程度調べてみるとアマモ場での観察会に参加するにはとある結社に入会する必要があるとわかり、三人とも即決で入会手続きをする。今年のイベントに参加させてもらえるかはまだわからないのだが、結社の活動じたいが楽しそうなのでいい機会だと思う。フィールドの楽しみかたも、ひとりでやっているとどこかで行き詰まってくるし。
なんだか浮かれて19時半ごろ退社。いくつか生活用品の買い物をすませて、中華屋に寄って帰宅。

2024年6月12日 水曜日
昨日はベッドでだらだらしているうちに寝てしまい、睡眠が浅くたくさん夢を見た。実家の姉が管理している開かずの間にキングコブラがいて、鎌首をもたげた高さはわたしの胸くらいにあり、しかも広がった頸部に目があったので「そんなところに目がある?!」と思いながら猫をひっつかんで逃げる。起きてから冷静に考えたが、そんなところに目はない。
今日は月に一度の上絵のお教室。そのあと友人たちとアフガニスタン料理。楽しみである。
11時に到着して、菊花のお皿の骨描きを進める。花唐草のような絵柄なのでどこを描いているのか混乱!先生は「筆も呉須もいい状態になってきているから、この筆は骨描き専用にするといい」とのこと。多少は慣れてきたと思ったが、先生がお手本にちょっとだけ描いてくれたところを見るとやっぱりぜんぜん違う。
磯結社への入会金を郵便振替で送るため、お昼に教室を抜け出して郵便局に行く。思ったより離れたところにあったので13時ぎりぎりに戻ってきた。
教室の生徒さんたちとは毎回ちょっとずつ話すが、みんな絵付の道具にいろいろ工夫している。呉須や絵具がガラス板の縁に寄っていって周囲を汚してしまうのが気になっていたが、絵具を削るヘラや、百均のアクリルケースに切ったガラス板を収めるテクニックを知って次から真似させてもらうことに。わたしのカートもどこで買ったかよく訊かれる。
早めに片付けをして、東中野のアフガニスタン料理店へ。じゅうたんの席で楽しい。メニューもほどよい選びやすさで、料理もお酒もおいしかった。ビール、乳酒、甘いどんぐりのリキュール、赤ワインなどを飲みまくる。鶏肉とパクチーのサラダ、フムス、香ばしいナン、焼きトマト、ラグマンに羊挽肉とナスの炒めものなど。4人いるといろいろ少しずつ食べられて良い。すごくいいお店だった。
みんなてんで勝手に好きなことを話していたのと飲みすぎていたのであまり内容を覚えていないが、ZINEづくりの話になって「商業出版物にも関わっていると変にハードルが上がってしまうが、写真ガビガビ・レイアウトガタガタでもとにかく形にするべきだよ!」と言われ、ほんとにそうだな!!と思えたのでよかった。あと自称おぼこの女がおり、いつもセックスに関するキーワードが出てくると止められるのだが、いちおう気をつかって「それで致すときにさぁ……」と言った瞬間NGを出されたので「じゃあなんて言えばいいんだよ!言葉狩りだ!」と抗議した。そもそもセックスの話するなという話か。そうかそうか。
陶芸のカートを抱えて帰れたのだからそんなに酔ってはいないはずだが、帰るなり暑い!!と思い、窓を開け放って寝てもぜんぜん寒くなかった。

2024年6月13日 木曜日
磯の秘密結社から、振込確認と入会の連絡がくる。いや、別に秘密の結社ではないんだけど嬉しいな。入会すると江戸前の海苔がもらえるそうです。
母が福岡県大牟田市の出身なのでわたしにとって海苔といえば有明海苔なのだが、どうやら有明の民はそれぞれ独自の海苔入手ルートを確立しており、贈答の折には高級な海苔を持って現れるが、どこで買ったのかについては頑なに口をつぐむらしい。それだけいい海苔を仕入れるルートは限られている。
ある年の冬に、母の生家に住んでいる長姉の家に遊びに行き、このあと別府にいっしょに帰ろうというときに姉が「母に頼まれた海苔を取りに行く」という。車に同乗していくと、なんの変哲もない住宅街の民家の前に、海苔を取りにきた車が3台くらいぎゅうぎゅうに停まっているのだった。
姉が海苔ブローカーの家に予約した海苔をとりに入っていったので車で待っていると、しばらくして姉が海苔を巻いたお米を頬張りながら出てきたので爆笑してしまった。
有明海の生態系は本当に危機に瀕していて、聞くのがつらいニュースばかりだ。海苔の入手ルートをむやみと教えられない気持ちもわかる。海苔やムツゴロウ、ワラスボに空が埋まるほどの海鳥たち、そのほかのすてきな生きものがみっちり詰まった海になんとか戻せないものだろうか。結社はもともと東京湾某所の環境保全活動をしているところなので、そんなことも考える。
仕事は相変わらずあまり進んでいないのだが、夏の予定が徐々に埋まって気持ちに張り合いが出てきた。秘密結社の観察会だけでなく、夏の佐渡島にも行くことに。楽しみすぎる。めりはりつけて頑張ろう。
夜、寄稿記事の修正箇所の戻しと夏のイベントの準備作業を少しだけやる。夏のイベントは一般向けではないので、何をいつどこまで告知したらいいのか計りかねていますが、またお知らせします。

2024年6月14日 金曜日
今日はミーティングも少なくて、一日作業に集中。とはいえ、ほんとうに集中力が要る作業は日曜に丸投げするつもり。最近はBGMなりBGVがないと集中モードに入れない。
顔に疲れが出てきたので、なにかに重課金したい。昨年は糸リフトでたいへん満足したので、今年はレーザーとか当てたい。
このまえの飲み会で美容施術やってる勢とやってない勢がいて、やってない勢から「もともときれいな人(わたしのことだよ!!)は若いときに近づけたい気持ちになるの?!」と訊かれたのだが、若くない人が美容施術やっても若いときに近づくわけではないんだよなあ。でも手間暇とお金がかかった工芸品みたいな雰囲気になる。年齢なりのすこし疲れた感も悪くないんだけど、あばら家じゃなくて古民家を目指したい。あばら家が鏡に写ると自分の疲れが増すので。
Twitter(Xとは言わない)の仕様変更で、他人のいいねが見られなくなってSNSがざわついている。他人のいいねを確認するのが趣味だったので残念だが、自分へのいいねだけが見られるならたとえば「食事に誘っていい人はいいねしてください」と書いて、いいねしてくれた人の中から話してみたい人を誘うことができる。そんなことを考えてたら、友達からラインが来て「"いいね欄は雄弁"の時代が終わってしまいましたね…」と書いてあり、思わず笑顔になる。
元恋人が別れ話の最中にしていたいいねに血が引くほど怒ってしまい、その話を友達にしたら「"いいね欄は雄弁"だからね…」と言われたエピソードに基づく。詳細は『奇貨』を読んでください。「いいね罪が適用できなくて寂しい…!」と返したが、いいね欄が雄弁な時代、ぜんぜん終わったほうがいいな。
帰宅後、明日上絵するお皿の図案を考える。やりたいことにまったく絵が追いついてこなくて笑ってしまう。上絵が上手になればいいなと思って線を引く練習をはじめたのだが、やらんといけんことが多すぎる!
秘密結社から入会の証としてたくさんの海苔が届く。海苔にひみつグループのQRコードが貼られていたので、さっそくスマホをかざしたがリンク切れだった。機密性が高すぎる。
海苔→有明海→ムツゴロウを連想して観察できる場所を調べる。5、6月の干潮時が適しているらしいので来年行ってみようかな。

2024年6月15日 土曜日
陶芸教室にまじめに通い続けている。今日は有志で上絵をやる予定なので、以前この教室で本焼きまで終えたお皿を持参。
W先生はにかわの代用のゼラチンなど上絵のための道具をいろいろ用意してくれていたが、声をかけてくれたUさんはガス点検のためにはやく帰って、三人で上絵を受講。わたしは今まで習ったことと照会しつつ、ふだん使っている五彩とは違う絵具も試せて良かったが、最近入会で上絵初体験の人はしばらくやってみて「もう大丈夫です!」と宣言していた。
先生は金沢に九谷焼を習いに行ったこともあるそうだが、現地ではあらゆる工程に従事するたくさんのパートタイマーから作家まで、とにかく産業として関わっている人ばかりなので「東京の人はこんなめんどくさいことを趣味でやるの?!」と言われたという。むしろこんなめんどくさいこと、趣味じゃないとできません。
お皿に波とわさおと岩木山の絵を描きたいのだが、きちんと図案を作らずに見切り発車ではじめた結果、かなり不本意な状況に。一度拭いてやり直すと思う。でも、教室にちゃんとした絵具がたくさんあっていろいろ試せそうなのでかなり楽しみ。
先生に勇気を出して「慣れてきたら好きな時間に工房を使っていいとのことですがそろそろ…」と切り出したら、「じゃあ来週カギを渡しますね」とすんなりOKが出てうれしい。成形時に翌日様子を見たいものもあるし、上絵は準備と片付けに手間がかかるので時間に追われずじっくりやりたい。
先週作ったタタラは暑すぎるせいか、まだまだ柔らかい気がする。急激に乾燥するとひび割れの原因にはなるんだけど。
教室後、間に合いそうだったので恵比寿のギャラリーへ。田辺京子さんの展示を見に行く。絵付の道具が重い。
相変わらず田辺さんの作品は「基本を完全に習得した人がここまで無茶できるのか?!」感がとてつもない。軸をあえて外して踊るバレリーナか。上絵の知識が多少ある状態で見るとより楽しめる。
転写シートも遊び心のある感じで使われているのだが、「この古代エジプト文明っぽい転写シートとかも市販されているんですかね…?!」と思わず口に出すと、ギャラリーの人が「エジプトやヨガモチーフのものは田辺さんオリジナルのものだそうですよ」とのこと。手がこんでいる〜。この価格でよいのか、実質タダなんじゃないかという気持ちに。
同じく田辺さんのファンである母に写真を送りながら見て、最終的に宇宙人の描かれた小さな壺を買う。
帰宅後、材料だけそろえて放り出していた刺繍パネルを作る。ウズベキスタンで買った馬が刺繍されたスザニを、木製パネルにタッカーで留めるだけ。壁にプッシュピンを打ちこんで掛けて完成。
作業部屋もかわいくなってきて、あとは作業をするだけ!という状況です。作業しろ!

2024年6月16日 日曜日
休日出勤しようかしらと思っていたが断念。断念しました!平日のリズムが掴めないな〜。定時後にモニタを持ってどこかに引きこもれたらいいのにな。
貸し倉庫やクリーニング屋、百均、洋服の直しなど、近場にあちこち行って用事をすませる。友達の作ったZINEを読みながらソファで寝落ちしたら、友達が出てくる夢を見た。
まだ数日しか続いてないのだが、直線と丸を引く練習をやっている。
https://x.com/voqn/status/1498135074285719555
習慣化アプリで30日励まされながらやってみるつもり。上絵が多少でもうまくなるといいな。
陶芸ノートを作るようになってから記憶が定着しやすくなった。一回書き留めるだけでもだいぶ違うし、忘れてもまた見ればいいという安心感がある。