沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

喉に魔が棲む

先月からずっと喉の調子が悪くて、菌なのかウイルスなのかは知らないが、とにかく魔が棲みついている。もともと風邪はいつも喉からひくほうなのだが、抗生物質を処方されて数日飲むと劇症は収まるものの、朝起きるとまた喉に違和感が……という感じ。口にテープを貼ったりマスクをして寝たりと、乾燥を避けるためにあらゆる手段は講じているのだが。
9月に入ってからもそれが続いていて、市販薬でごまかしていたら熱が上がりはじめ、結膜炎の症状も出て数日寝こんでいた。寝こみながらSNSを見ていたが、同じように具合が悪い人が多い。この夏はとにかく暑すぎるのがいけないのかもしれない。
春先にせっかく減った体重を戻したくなくて、コンビニで買える範囲の粗食で過ごしていたのも関係がありそう。というわけで、野菜の宅配サービスを再開した。
前の家の近くにはスーパーがほとんどなかったので申し込んだ宅配サービスだが、今の家では必要ないかと思っていた。しかし、その日何を食べたいか考えて食材をそろえるのがとにかく苦痛で、引っ越してきてから数か月、ほとんどスーパーに行っていない。毎週強制的に数種類の野菜が届いて、それをどう料理するか考えるほうがわたしには合っている。自分でスーパーをまわるときには手に取ろうと思わなかった野菜が届いて、調理法を調べるのも楽しい。

レシピがあれば料理は作れるが、その日自分が何を食べたいか考えるのも、いちから食材をそろえて手順通りに食事を作り、消費して繰り回すのも苦痛で面倒くさい。人に作ったものを食べてもらうのも、口に合うかを過剰に気にしてしまうのですごく苦手。そういう衣食住の「食」にまるごとフタをしていた部分になにか打開策があればと思って読んでみた本。
料理研究家が「自分のために料理を作る」ことにそれぞれ悩みを抱える人たちと、実際にキッチンに立ちながら料理について考えていくという内容。ひとりめのしょうが焼きのくだりで、まさにどんな肉を買ったらいいかとか、手順に自信がなくてスマホでレシピを見ちゃうけど自分の血肉にはならない感じ、わかる……!となりました。それぞれの人の持っている生きづらい感と、食への困りごとはどこかでつながっている。
別に食事なんて適当でいいよ、おかし食べて寝ちゃおうよと言いたい気持ちもあるけれど、ふだんから食に関するやり過ごしかたの引き出しを持っていないと、いったん調子を崩したときに立て直せなくてずるずると蟻地獄にはまってしまう。しかし、調理に関する引き出しは一朝一夕には増えない感じがあるのがまた面倒くさいところ。
三連休は外にも出られず人にも会えないので、病院に行ったきりであとはせっせとごはんを作っていた。

ふるさと納税で届いた鯛あらをグリルで塩焼きにしてみたら、美味しくて感動した。新しい家のグリル、無水で焼ける!ひっくり返さなくても両面が焼ける!焼いたものが水っぽくならない!洗うのもそんなにめんどくさくない!びっくりしすぎて喉がおかしいのにシークヮーサーリキュールを飲んでしまった。
ちゃんと自炊したらビルトイン食洗機の便利さも身にしみた。実際には洗浄機能はまだほとんど使わず、シンクで洗った食器をつっこんで乾燥のみで使用しているが、水切りかごに食器を詰まなくていいのでキッチンが美しい。感動的。
しばらくはキッチンのポテンシャルを楽しみつつ、なんとか養生していくつもり。