沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

日記(2024年5月24日~2024年6月2日)

2024年5月24日 金曜日
ブログが続かないので、アプリで記録して週次でアップロードしようと思い立つ。このアプリはリマインドもあるし、インターフェースがかわいくてなかなか良さそう。
有料機能はある程度テストしてからでいいと思ったが、Face IDやエクスポート機能を使うためにすでに1500円課金しそうな勢い。
朝から大事なミーティング。
終わって席に戻ると、同じフロアの人が来て「ドレスコード違反の人がうちのフロアにいたらしくてみんなで探してる」「その人が派手なスカートをはいてたらしい」と言われて「終わった……」と思ったが、わたしのことではなかった。スカートではなくて、職場の安全基準に引っかかるいでたちだったらしい。エミリオプッチみたいな色調のカモ柄のロングスカートをはいていたので、必要以上に焦ってしまった。
日記をつけはじめたのは文フリに出て日記本を読んだ影響もある。しりひとみさんの『異常係長日記』は良かったな。会社員の日常、クリエーターのみなさんが思ってるより波乱に飛んでます。書けないことが多いだけで。

午後はフロアに人が少なく平和だった。
上司のABTCカード申請を手伝う。あまりにも申請がエラーで弾かれるので、Windows11が悪いのか外務省が悪いのかは知らないが「ニッポンの未来は…?世界がうらやむ…?」という心境になる。とりあえず出張しやすくなるといいな。
潮汐表を見ながら手帳のいい潮の日に印をつけただけで、磯に行きたくて死にそうになる。干潮が20センチ以下の日は会社休みにならないかな。
陶芸をはじめてから月に一回は休むし土曜はつぶれるので、休暇をとりづらいし体感的にたいへん忙しい。慣れるまでがんばるしかない。海生無脊椎動物展は土曜の朝にねじこむことにする。
風邪薬を飲みつづけていたら口内炎ができたので、玄米と厚揚げ・みょうが・ねぎのおみそ汁をつくる。一汁一菜の菜は玄米でもええんですか?土井先生。多分ええですよね。
献本のメールを一通おことわりする。面白そうかどうかではなくて、確実に読んで感想を書けるだろうというものだけお受けするつもり。でもそういう本は、自分で買うからなあ。

2024年5月25日 土曜日
防犯網戸のおかげで家にいい風が吹くようになった。
朝ごはんは玄米と勝浦で買ったのりのふりかけ、昨日のおみそ汁。のりの香りがいい。
家を出て国立科学博物館の海生無脊椎動物展へ。漢字が多い。電車の中で佐渡行きの日程候補を友人に連絡してみる。夏の予定もどんどん埋まっていくな。
かはくの展示といえば大混雑で有名が、実際30分前からなかなかの行列ができている。この人たちは特別展の大哺乳類展が目当てらしい。海生無脊椎動物展も特別展だと思っていたが、こちらは常設展チケットで見られる企画展示のようだ。みんなそんなに背骨のある生きものが好きか。宮田珠己さんみたいな言い方をしてしまった。
日本館1階の企画展示室で海生無脊椎動物展を見る。規模は大きくないが、海の中のよくわからん人たちの34系統についてわかりやすく解説されており、ビジュアルのうまさがさすが科博。左右対称の生きもの、五放射の生きもの。展示内容のリーフレットものちのち(海のよくわからん人を調べたり文章に書いたりするとき)役立ちそうなので大事に持ち帰る。ミュージアムショップでは展示にあわせて誠文堂新光社のネイチャーガイドシリーズ・ウミウシとヒラムシが売られていて、迷ったがどちらも買ってしまった。ヒラムシの図鑑なんて、あとから欲しくなっても買えないに違いない。

せっかく来たので常設展の日本館と地球館も駆け足で見てまわる。ダンクルオステウス、マンモスの骨でできた家、アーケロンなどが今も健在。巨大アンモナイトの展示でコレクターの手記に「熊の足跡を同行のひとりが怖がって何度も帰ろうというので、先頭に立って足跡を消して歩く」と書いてあり、今なら炎上必至のワル自慢。
電車で陶芸教室に移動。陶芸教室では両手カップの素焼きと平皿二枚の本焼きをそれぞれ窯出し。平皿のうち一枚は薄くしすぎたためか、反った円盤みたいになってしまい完全に失敗。もう一枚はなんとか皿になったので上絵付をしてみるつもり。
その後、タタラ作りのカレー皿に再挑戦する。できれば同じ型で何枚か作って、タタラと上絵に慣れたいところだ。図鑑とお皿を背負って歩きまわったので足が棒になる。
帰宅後に仮眠。20時半からまた動きはじめる。『リプリー』『蛇の道』を観ながらコミティア準備、名刺注文、本の発送準備と陶芸ノートづくりなどをバタバタやって就寝。

2024年5月26日 日曜日
コミティアに出展。今回は動物ジャンルで出ていたのもあり、シラバスがそこそこ売れた。「秋山あゆ子さんがおすすめしていたので『奇貨』を買いにきました!」という方と、「えっ?!秋山あゆ子さんが寄稿されているんですか?シラバス二巻とも買います!」という二人連れの方がいらして、秋山さんに心からLove...と感じた日でした。
イラストレーターのNさんがブースに来てくれて、ツマガリのクッキーをいただく。関西からの遠征なのに素敵なおみやげまで用意してくださって、なんていい人なんだ……心のこもったプレゼントをいただくたびに思うのだが、わたしがあれこれ悩みながら選ぶ手みやげはしょせん人間のフリでしかない。手みやげヘタクソ選手権に出られる。
節目になるので最近は毎回申し込んでいるけれど、創作系イベントに出るなら新刊があったほうがやはり充実するのだろう。順番からいうと磯についてのZINEだけれど、グアテマラ旅行記も早めにまとめておきたい。
連休で二週間グアテマラに行って、トークイベントに出て文フリにも出てコミティアにも出て、毎週土曜は陶芸教室で一日つぶれるのでとにかく忙しない一か月だった。楽しいことや自己実現って、8割の面倒な準備でできている。楽しくないことは100パーセント楽しくないのに不公平だ!
混雑を避けて15時に撤収したが、早く帰ったとて何もできず夜までぐったりしていた。こんなにやることがあるなんて実は錯覚なのではないだろうか、つまりは忙しぶっているだけなんだ!と現実逃避にふける。やりたいことは山のようにあるけれど、悩む前に手を動かせるような習慣を作っていくしかない。

2024年5月27日 月曜日
今日は飲み会の日。崩していた体調は回復したのだが、なんとなく憂鬱な気分。
オフィスになんだかゆるい空気が流れていて平和だった。同僚から保活や子供のお受験の話について聞く。同僚のお子は産まれて2か月だが、最近みずからの右手の存在を認識したらしく凝視しているそうだ。
早めに職場を出て、有楽町の中東料理の店へ。強くコース料理を推され、5人でお料理3300円のコースを頼む。ピタパンにとにかくいろんな味のものたちをつけて食べておなかいっぱいになる。
鳥や虫を撮るのに最適なカメラの話、労せずして売れたい(何かで)、地面を制するものが経済を制するから地面が欲しい、親戚の謎が大人になってから明らかになる、お酒を飲んで地面に転がっていると彼氏ができやすいらしい、人間は不安を追い求める、よい人間になりたいなどの話をした。
帰り道でTさんに「一年経ってだいぶ元気になったの?」と訊かれて「陶芸教室にふたつも行きはじめてしまい、つねに疲れていてなにも考えられない……」と答える。つねに疲れているしタスクに追われている感じがする、たまに達成感を感じることもある。それが標準だとすれば元気なんじゃないかな?失恋したあとそれを書いた文章を作って900部売ることで乗り越えてる人間なんてあまり見ないから、客観的には元気だと思う!
冬のイベントの準備もしないといけないけど、いきものクリエーターイベントもずいぶん飽和してきてるよね、という話をして解散した。飽和しててもいいんだけど、自分で自分のやることに飽きない工夫が要るなあ。

2024年5月28日 火曜日
会社のえらい人と部署のメンバーでランチ。えらい人は今年でご退任なのだが、仲良しなのにここ数年はお食事会もできていなかったのでかなしい。父くらいの年齢の方なので、飲み会で万が一にもコロナを伝染すようなことがあってはならなかったのだ。
仕事をためこんでいることへの不安がすごい。やっとイベントのない週末なので、土日出勤しようかな…と思いつつ、台風が近づいているので早めに帰る。
先日のNさんからLINEがあり、16人以上でないと予約できない中華街の高級お粥をこんど食べに行きたいという。16人以上でないと食べられないお粥。グリードアイランドか?
人脈のすべてを動員しないと一度には集められない人数だが、知人の知人も動員して高級お粥を食べるのは楽しそう。肉やホタテの出汁が詰まっているらしいが、まじめにそれらの食材を食べているとお粥が入らない気がするので、自分のぶんもホタテを食べてくれる人を連れていき、わたしはうまい汁を吸った米を食べたい。エビ・カニ・タコ・イカ・貝類には基本的に生物学上の興味しかない。これは姉妹共通であり、あるとき島根の旅館で「エビやカニは遠慮したい」と申し上げ、映え食材を封じられた宿の人に「そんな……全員ぶんですか?!」と泣きそうな声を出されてしまったことがある。かわりにお刺身にしてもらって我々は嬉しかったのだが。

2024年5月29日 水曜日
起きたら文フリ後の打ち上げで会って同人誌を交換した人が『奇貨』の感想を書いていてくれてなごむ。900部売ったけど、ぜったい面白いからもっといろんな人に読まれたいのでまったく満足してない。
昨日の雨風で倒れた鉢を片付けて出勤。いつもより早い時間に入っていたミーティングを忘れていて、開始時間ちょうどに出社してしまい冷汗。最近何事にも身が入ってなくて反省。
いろんなことを先延ばししているときに思い出すのが、ハンターハンターのマフィアのおっさんである。娘のもつ予知能力で無双していたおっさんが、それがなくなった途端に「今月…オレは…オレはどうしたらいい? 教えてくれ オレは一体どうする?!」ってなっちゃう。わかるな〜。オレは一体どうする?!あと一週間の日記にハンターハンターネタが2回出てくるのは怖いですよね。
棚上げしていた作業に取りかかる覚悟を決めて深夜残業。今週末休日出勤したら終わるかな……道のりは長い。
すぐ寝たほうがいい時間に帰宅したが、なにか自分のためだけにすることがやりたくなり、タカハシカオリさんの作品を壁にかける。新たに買ってきたフックネジとひっつき虫でなんとかなった。

2024年5月30日 木曜日
毎日10時から17時くらいまでいろいろ会議があって、それから自分の仕事がはじまるって感じ。昔はもっとひまだった気がするんだけど何をして過ごしていたんだ?
昭和のころは拘束時間は長いけど、取引先におつかいに行って帰りにこっそり喫茶店でコーヒー飲んで…みたいな脳が疲れない仕事も多かったのでは。仕事の中身がどんどん細分化されて、仕事のための仕事が無限に増える。
気分転換と最低限の健康のために昼は近所の公園まで歩いて、ごはんを食べてから一周して帰ってくる。ついに日傘を導入した。暑い。
午後の報告会でおもに説明を担当する。なんか今日はやけに口が回るなと思っていたら、後輩に「説明うまかったですね、うまいとかわたしがほめるのも変ですが…」とほめてもらう。ワシが君の年齢のころはほんとに会社員のテイをなしておらんかったよ…と最近しみじみしがち。
各自が今年の目標を設定するたぐいの作業があり、参考に他部署のぶんを読む。そこそこ達成できそうな低い、あるいはふんわりした目標にする人も多いなか、めちゃくちゃまじめな性格で名高い人がひとりだけめちゃくちゃ重めなハードルを設定してて「相変わらず性格が重すぎる」「これは萌える」と盛り上がる。まじめすぎて受け止めきれないことも正直あるのだが、こういう人はなんだかんだ好かれるよな。
今日も17時から23時まで検証作業。終わりが見えないが、いつかは終わるに違いない。

2024年5月31日 金曜日
朝は光がいいので家のなかの写真を撮りたくなる。撮りたい画角が撮っていいくらい片付いていることは少ない。
特に棺桶部屋の写真は我ながら変な家だなと思う。ベストセラーじゃないほうの『変な家』。雨穴(うけつ)ならぬす穴(すけつ)。

上司とのあいだで「ハイの気持ちじゃないときにハイと言うときのハイ」という符牒がある。鼻に空気を抜いて発音するのがポイントであり、ニュアンスとしては不動産屋の営業の人が「わっ…かりました!!」というときのひと呼吸ある感じに近い。
お昼前に一アイデアをかまされたので「アッハァイ」と言ったら「出たよそのハイ!目からビーム出すな」と言われて爆笑した。ほんとに納得してないときのハイではないのでご了承願いたいところである。
朝、昼、夕と濃い討論をしたため全員脳を酷使し、以後めちゃくちゃどうでもいい雑談をしまくる。気をとりなおして23時まで残業。
帰ってからムネアカオオアリのえさ場の交換をする。えさ場の壁にベビーパウダーを塗っていたのだが時が経つとともに剥がれてしまったので、アリがえさ場の天井に登れるようになってしまった。えさをやりづらいし、ゴミが山と積み上げられていて汚い。同じくベビーパウダーで登攀防止した衣装ケースの中に巣を入れ、Antroomさんで新しく買ったえさ場に接続。交換中に巣から出てしまったアリは吸虫管で吸おうと思ったのだが、失くしてしまったようなので手でなんとかしました。
新しいえさ場にアントサプリとメープルシロップを混ぜて水で溶いたえさを置くと、ハチャメチャに集まってきて、飲んだものから空腹のものに口移ししはじめた。お腹空かせてごめんな……。10年選手の女王アリも、まだ元気に卵を産んでいてすごい。ほとんど手がかからないとはいえ、犬や猫と過ごすような年月を女王アリと過ごしている。

2024年6月1日 土曜日
今週末もやることが多い。朝からベランダを掃除して洗濯機をまわす。ウンベラータ、月下美人、極楽鳥花はベランダに出すとずいぶん元気になった。インナーテラスで育ってくれるのはビカクシダくらいだ。
陶芸教室で、先週再挑戦したタタラ作りのカレー皿の調子を確かめる。乾燥時に底が上がってこないようにビニール袋に入れた水や砂でおもしをする準備をしていったが、先生に見てもらって結局不要になる。そのあとは無心に削っていたら時間になった。
陶芸も絵付けも、まだ自分が思ったようなものが作れるわけではないので楽しみより義務感で壁を越えようと通っている状態。でも無心になれる時間があるのはいい。
中年の趣味の9割は精神が無になる要素があることに帰結するのでは…?と、陶芸教室後に居酒屋で生ビールを飲みながら考える。飲酒とかサウナとかランニングとか。無じゃないほうの喜びといえば磯だな。春はまったく通えなかったが、夏はまた磯に行きたい。
帰って月曜しめきりの原稿を書くはずだったが、西荻窪に行ってしまう。西荻窪のことビルで、iinaというアパレルの展示を見てインドのブロックプリント生地でカットソーをオーダーする。ついでに雑貨屋FALLにも立ち寄る。
帰宅後は想像どおり寝てしまい、日付が変わるころ起きて顔を洗ったり新しいスニーカーに靴紐を通したり爪をみがいたりしていた。原稿の予定は日曜にスライドしたので、日曜に美容院と休日出勤と原稿をすることになり、ただ遊んでいただけの土曜日となりました。

2024年6月2日 日曜日
疎遠になった人たちが部屋にいっぱい来て好き勝手される夢を見る。現実でも身に覚えのある理不尽。夢の中で好きなだけ文句を言えて、目覚めは悪くなかった。夢が起きている間の不満を交通整理しているのだと思う。
まずは予約した美容院へ。もう10年以上お世話になっていると思うと不思議な感じ。グアテマラ旅行の話などをする。美容師Eさんがケツァールの写真を見て「ぼくは疲れた時とかによくこれを見ています」と教えてくれたのは、Netflixオリジナルの「ダンシング・ウィズ・バード 驚きの求愛ダンス」という番組。
蔦屋書店などをのぞいてお昼を食べてから会社へ。平日だけでは作業が終わる見込みがないので休日出勤である。やりたくはないが捗ってしまう。
しかしPCのキーボード入力がだんだん効かなくなってきた。こうなるとアプリケーションを再起動しないと直らない。これがWindows11のせいなのか新しいノートPCのせいなのか、あるいは会社のなんかの設定のせいなのかは不明だがとにかくここ数か月の謎である。Windows11のせいだとすればプライベートのノートPC購入もかなり憂鬱なことになるので、いっそ会社のせいであってほしい。でもノートPCなしで昆虫大学とかのイベントを乗りきるのは難しい…。
明日がしめきりの原稿もあるので、早めに退社。帰ってしばらくソファでだらだらしてから、観念して取りかかる。そのまま深夜まで作業。結果的に去年を振り返るような内容の寄稿なのだが、原稿を書くためにメールや書類を参照して時系列を整理していると「がんばりやさん!!」という気持ちになってきて、結果的に書いてよかったな。あんなに精神がズタズタだったのにこんなに忙しくてよく乗り切れたなとも思うし、こんなに忙しかったから乗り切れたんだなという気持ちもある。明日推敲して写真を添えれば間に合いそう。
鳥の求愛番組もしっかり観たのだが、パプアニューギニアのフウチョウたちは健気すぎる!ここまでされたらメスも嬉しかろうと思ったが、求愛されているメスはなんともいえない顔をしていた。パプアニューギニアでもバーディングしてみたいけど、グアテマラで会えたような優秀なガイドがいないと何ひとつ見られないんだろうな。