沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

日記(2024年7月15日~2024年7月21日)

2024年7月15日 月曜日
朝から首に電気を流し、スクワットを220回やり、プロテインを豆乳で飲んでいるわたしを見て姉が「意識が高い!」とコメント。
今日は有志八名で、都下某所で虫見。予報では雨が降りそうなのだが、姉が「小雨なら決行したい」と主張。結果、とても涼しく非常に快適であった。雨にも最後まで降られずラッキー。
待ち合わせの駅に降りるとツバメが駅舎に巣を作っていて、緑の濃さにテンションも上がる。川沿いの遊歩道を歩いて、いい感じにじめじめした雑木林へ。ここが冬虫夏草や粘菌の良いフィールドなのだそうです。



さっそくカメムシタケやオサムシタケを見つけてもらい、テンションが爆上がりする一同。虫の命を燃やす蝋燭の炎、もしくは線香花火のようで超かっこいい。わたしは粘菌を撮るとき小指が上がっていることが判明する。





朽木にはツノホコリなどの粘菌もたくさんいて、眺めれば眺めるほどそれに群がるトビムシや微小な甲虫も見えてきて最高。しかし、わたしの撮影技術ではそれを写真におさめることは難しい…小さすぎる!

虫もいろいろ撮った。ヤリグモがひときわかっこいい。
目が多いと虫がいい感じに見つかるので、ぜんぜん先に進めない。ひさしぶりに日本の良いフィールドを歩いた感。

17時半から神田の味坊を予約してもらっており、バスと電車を乗り継いで都心に戻る。
羊串に羊肉のクミン炒め、パクチーサラダ、ラム肉入りの餃子などどれも美味しいが、壁に貼られたメニュー写真はどれもそら豆色に褪色していて情報が脳に入ってこない。そして店の作りのせいなのか何なのか、周囲の声がめちゃくちゃうるさくて向かいの人の声すら八割聞こえないありさま。ビールを飲みながら眺めていると、どうやら姉が「イベントの告知をちゃんとしなさい」「商品画像をアップしなさい」「商品はいいんだからそれが伝わるようなSNS運用をしなさい」とおこられているようであった。「代わりにツイートしてやんなさい!」と言われ、ツイツイと告知をする。

2024年7月16日 火曜日
今週は部署の人たちがほとんど出張に行っているので、ここぞとばかり残業して作業にいそしむ。しかし今日は新たな機能追加要望を受け、この案件は今年エンドレスやな…と覚悟を決めるすず子であった。
お昼休みを無為に過ごさないように私物ノートパソコンを持って会社に行ったが、日記を整理してブログにアップするのが関の山。しかし!はてブとSNSを眺めて過ごすよりは生産的と言えよう!
インターンの学生さん達と話す機会があった。みんな受け応えがしっかりしていて、いかにも賢そうである。全員ぜひ入社して〜、そしてわたしの仕事を奪って〜。でも奪われたら真顔になると思う、そんな会社員のアンビバレンツ…。
「…」を打つたびに「……」にしたほうが良いかな?とか「!」や「?」のあとは半角スペースあけたほうがいいかな?とか思うのだが、商業原稿ならともかくブログでそれやっても仕方ない。そういう出版業界しぐさは意地でもやらんぞ。
あちこちで人に「アンタは最近は人間関係でロクな目に遭ってないのに、イベントとかをやめる気配はなくて偉いねえ」とほめられ、だんだん偉いような気がしてきた。イベントをはじめた頃の志とはたしかに違うが、100%惰性でやれるほど楽でもないんだよな。別にみんないい人だと思ってるからやってるのとも違うしな〜。まあ、やりづらい人と無理にやろうとは微塵も思いませんが…。

2024年7月17日 水曜日
朝起きたらBASEの通知が五件出ていて「『奇貨』がひと晩で五冊売れた!なにかでバズったのか?!」と思ったが、よく見たら一冊だけだった。ついに世に見出されてしまったかと思ったのだが…。
柳澤静磨さんの『ずかん ゴキブリ』(技術評論社)が届く。フィリピンで撮ったテントウゴキブリの写真を提供して、協力者に掲載していただきました。ゴキブリなしの書影にするためか、なんと二重カバー(業界ではドラマ化したときなどにやる「全オビ」というやつ)になっている。中にはたくさんゴキブリの写真があるので、どうぞご安心ください。
ばりばり仕事していると、出張中の上司をたずねてOさんが来る。Oさんはマスクをしていると某役員に似ているという新発見があり、周囲の人たちが一瞬だけシャキッとなって腹から声を出してあいさつをしたあと「?」となっていたのが面白かった。サメだと思ったらイルカだったみたいな。
帰宅すると姉は飲みに出ており、洗濯などしてゆっくりしていたら帰ってくる。おみやげのティラミスを食べていると姉が「わたしは大学の映画研究会でストーカーに遭ってすぐにやめなければ映画を撮っていた。やがてパペットアニメを撮るつもりだが、今は忙しいので老後にとっておく」と宣言していた。黒澤明が好きで映研に入ったのは知ってるけど、そのあとの話は知らなかった。謎に引き出しが多いな。

2024年7月18日 木曜日
仕事を受けたり断ったりって難しいな…と思うできごとがあり、若干やさぐれのすず子であった。とりあえず夕方には立て直して、なんとかやりかけの作業を進めた。
PayPayの本人認証に運転免許証を使おうとして、おさいふに入ってないのに気づく。最近使ったといえば、陶芸教室の鍵をもらうために身分証コピーをコンビニでとった時だ。いやしかしコピー機に忘れ…そんなことある…?と思いつつ、半信半疑でコンビニに電話して名を名乗ったら「ありますねぇ〜!!」とのことでした。今週末はただでさえ予定が多いのに、陶芸教室近くのコンビニに行くというタスクが増えてしまう。つらい。でも免許証が見つかったことと、陶芸教室近くのコンビニの人が感じがいいことがわかったのはよかった…よかった探し!!

2024年7月19日 金曜日
会社を休んで、午後から害蟲展の二次審査に行く。午前中は博物ふぇすてぃばるの準備などをバタバタやっていたら終わってしまい、やることが追いつかない。
銀座の駅で、福岡から駆けつけた丸山宗利先生にお会いする。先生が監修した本は、わたしが長年お世話になっている編集サチコ氏と作ったそうでびっくり。「サチコ、インドでそんな大作を編集していたとは?!」と言ったら先生は「えっ?!インドに住んでるの?!」と逆に驚いていた。あんな分厚い本もリモートで作れる時代なんだな〜。エディター・フロム・インディア(ラブレター・フロム・カナダ)。
害蟲展の審査は主催企業である8thCAL(エシカル)さんの会議室で行われた。ずらりと並んだ一次審査通過作品の番号札に、各自がシールを貼ってまわる。一次審査のときは画像でしか見られなかったので、実物を見ると「予想以上に良い!」となることが多い。特に立体作品。写真ってかなり大事だな。あとタイトル。タイトルがただの説明でなくて狙いにうまくはまると、作品に対する目が変わる。ピシ〜ッとした雰囲気になる。

特に舘野鴻さんのコメントが炸裂しており、これこそお金を払ってでも聞きたいコンテンツでは…と思った。「これはあとで言いたいことがあるから!」と言ってシールを貼りつけているのを見て震えるが、厳しいだけでなく「映像いいなあ!ぼくも撮りたい!やりたい!」と、ポジティブなコメントも多い。Blenderでの制作にも興味を示すなど好奇心がめちゃくちゃ旺盛。そして話が広がりがちな審査をうまくまとめ上げ、工芸の歴史に根ざしたコメントもしてくれる自在置物作家の満田晴穂さん。
モチーフになった生きものの種名違いには、丸山先生が即座に指摘。食痕をうまく使った作品があってみんなこれ好き!着眼がいい!と言っていたのだが、食痕の主はステートメントに書かれたカミキリムシの幼虫じゃなくて松くい虫みたいな生きものでは?いやむしろフナクイムシの食痕にも似てるよね?えっじゃあこれって流木なの?でも材が特定できてるってことは違うんじゃ…と盛り上がる。楽しい〜。
結果を主催の岡部美奈子さんにまとめていただき、なんやかんや言いながら入選作、優秀作、最優秀作を決定。おつかれさまでした!

入選作の展示は大阪と福岡にも巡回しますので、みなさまお楽しみに。結果はこちらのサイトをごらんください。
sites.google.com

その後、順番にコメントを動画で撮ってもらう。順番待ちの間もいろんな話が聞けて楽しかった(思えば、虫屋さんの濃い話を聞く機会がかなりひさしぶり)。
わたしは先約があったため、夜の会食には参加せずに失礼した。わざわざノートパソコンを持ってきて、来月のイベントの準備をルノアールでやろうと思ったのだが、世界各地でWindowsがブルースクリーンになっているとスマホのニュースで見て怖くなり、結局スマホで朱雀門出『首ざぶとん』を読んでいた。しかしモバイルバッテリーを忘れてきたため、ノートパソコンから給電できたので無駄ではなかった。無駄ではないが、自分はいったい何をやっているのだろう。
時間が来たので新橋に移動し、ニュー新橋ビル地下のイタリアンバルで姉とワクサカさんと飲む。7歳離れた姉については意外と知らないことが多い、という話になり、昔の姉のエピソードなどを披露するとワクサカさんが大ウケする。
ワクサカさんがよく「話を戻すと…」と言うので、わたしたち姉妹は「戻す必要ある?!」とつっこんでいたが、それはワクサカさんがエピソードトークをするときに我々がいい感じの間をまったく与えておらず、つまり「話したい話があったのに話せなかったので時を戻したい」という意味だったと判明する。とってもかわいそうである。
楽しい会だったが、翌日は博物ふぇすだし長姉も泊まりに来るので、気持ち早めに解散。長姉にわたしがオートロックの番号を間違えて伝え、しばらく締めだしてしまう事件が発生。平謝りする。
早めに寝たほうがいいと知りつつ、三人で「それSnowManにやらせてください」のダンスSPを観る。今年の1月に次姉とホイアンに行ったときもまったく同じ状況になっていた。ダンス回、面白すぎて見だすと止まらない。あと、審査員で振付師のTAKAHIRO先生が好き。表情や動きがいちいち目を引くな〜。結局寝たのは一時過ぎだった。

2024年7月20日 土曜日
博物ふぇすてぃばる!の開催地は、九段下の科学技術館。「シン・ゴジラ」で長谷川博己と石原さとみが話すあの場所である(次回からは東京ビッグサイトになるとのこと)。いい会場なのだが、どの駅からも炎天下をそれなりに歩く。しかもカートを引きながらなので、今日も到着時には汗だく。
11時に開場。ろくに告知もしていなかったが、それなりのペースでお客さんが訪れてくれていた。一日だけの出展なのでずっと接客していて、他のブースを回ることもほぼなかったので挨拶をし逃した人も多数。

売りもののお帽子を買ってかぶったら、引き算のない虫コーデになってしまった。
『昆虫大学シラバス』と並べて『奇貨』と『こいわずらわしい』も売っていたら「ここは文学フリマじゃないんだよ!」ととよさきさん(日本野虫の会)にツッコまれる。兄貴のツッコミはかゆいところに手が届く。
通販で買った『奇貨』を抱えて来てくれる人も数人いて、ありがたくサインをさせてもらいました。

17時半に閉幕し、外苑前のベポカに向かう。インドから一時帰国しているサチコ氏と、ペルー料理を食べるのである。

はじめて来るけど雰囲気のいいお店。連日飲んでばかりいたので胃の調子がすこし心配だったが、ビールに落としたライムの風味のせいかどんどん食欲が出てくる。ひと皿でいろんな味を楽しめるようになっていて、特にセビーチェは絶品だった。添えられていた巨大な粒のトウモロコシ「チョクロ」に興奮して、チョクロがすこしだけ登場する『テスカトリポカ』のあらすじをしゃべりまくる。会うのは一年ぶりなので、ほかにも話すことはたくさんあった。サチコ氏、相変わらず物腰穏やかなのだがめちゃくちゃ仕事もしており、それを一切ひけらかすそぶりもなく、ほんとうに変な人だな…としみじみ思った。
次は南インドで!と言って解散。南インド、ほんとに行きたいぜ…アーユルヴェーダとかやりたいし、インドの生きものも気になる。
夜はひと雨きてからようやく涼しくなり、シャワーを浴びて夜風に吹かれていると、博ふぇす後の打ち上げに行っていた姉たちがベロベロで帰ってきた。ひとりは「小腹が空いたから」とコンビニに走り、もうひとりは「しゃっくりが止まらないよぉ…」と言いながらイスで寝落ちしていた。なんでだよ。わちゃわちゃ言いながら就寝。夏祭りって感じの一日。

2024年7月21日 日曜日
姉ふたりとゆっくり朝寝坊。ダラダラしつつ10時頃に起きて、売上を計算したあとは貸し倉庫の整理に行き、近所の中華料理屋でピータン豆腐や麻婆豆腐や餃子を食べた。昨夜はずいぶん酔っていたのに、みんなまた生ビールを頼んでいて元気である。
コンビニでアイスを買って家に戻り、また昼寝。姉たちと会うのはいつもイベントか旅行の時なので、この時間の流れかたは新鮮。一日目だけの出展は主催にはメリットがほとんどないけど(調整が大変なので)、こちらの気分は楽だな…!
夕方に長姉は帰っていき、わたしも外に出る元気が出てきたので電車に乗る。免許証を忘れたのは陶芸教室最寄りのコンビニなのでそこそこ遠い。ひと月近く免許証を預かってくれて、電話をしたときも感じのいい対応だった。なにかお礼をしようと、ドーナツ屋で箱のドーナツを買う。前に工房の会員さんが買ってきてくれて美味しかったやつだ。
町には庚申祭の格好をした人や、一角で町内会の酒盛りをしている人もいて祭りの余韻がある。コンビニのレジにも浴衣姿の人が並んでいて、申し訳ないと思いつつレジで免許証を受け取り、詫びドーナツを押しつけた。
せっかくなので工房にも行って、乾燥中の器をチェック。焼いてみないとわからないが、今のところ順調そう。

タタラで作ってもいまいち綺麗でないのが真の不器用を見よ!という感じなのだが…。そろそろろくろも勉強しよう。