沙東すず

以前はメレ山メレ子という名前で「メレンゲが腐るほど恋したい」というブログを書いていました

2024夏・佐渡島旅行記 ~佐渡の南側で建築と食と海をめぐる小旅行~

Day1:2024年7月26日 金曜日
灼熱のベランダの植物に水をやろうとしてよく見ると、月下美人の花がヘチャリと落ちていた。いつの間に花をつけたのか。はじめての花を見逃した…。
なんとか佐渡旅行の荷づくりをすませて家を出る。いい加減旅慣れてよさそうなものだが、荷づくりにかかる時間はどんどん伸びている気がする。
スーツケースに防水リュックで出社。「沙東さん、今日はコメントが冴えてるね」「午後から遊びに行くからですかね」となどと言いながら会議を終え、みんなでランチを食べて、会社を出る予定の15時まであと20分というところで席に戻ってくると後輩に「あとはもう"流し"ですね…?」と言われ「そんなことないよ!バリバリ…バリバリと仕事を…」「ほんとですか?オートシェイプをちょっと動かしたりとかじゃないですか?」「エクセルを…開いたり閉じたり…?」「そうそう」とか言ってたら出発時間に。ほんとすみません。
東京駅に移動して、新幹線で新潟駅へ。今回の旅行仲間は土屋アソビさん、のそ子さん、陶芸家の菊川さん。のそ子さんと菊川さんは早めに着いて、それぞれ新潟市内を観光している。わたしはわざわざノートPCを持ってきて新幹線内で作業しようと企んでいたがダメだった。
ニイガタステーションホテルのロビーでのそ子さんと落ち合う。菊川さんは朝から歩き回って疲れたようで既読がつかないし、アソビさんが着く前にお店を見つけておくことに。
新潟駅前には一見するとたくさんのお店があるが、金曜夜ともなればおいしい地のものを食べられる店を見つけるのは至難。早めに予約しておくべきだった。何時に集まれるかがなかなか決まらず、いざ前日に電話してもどこも空きがなかったのである。
あたりをうろついたあと、地元の人におすすめされた居酒屋に行ってみるとタイミングよくすんなり入れた。ビールを飲んでいると目覚めた菊川さん、そしてアソビさんが到着。アソビさんは税理士からお店のもうかってなさ度合いを具体的に教えられたのがショックで、そのことで頭がいっぱいだという。
飲みながらフェリーターミナルに行く集合時間などを決める。のそ子先生は朝ごはんを食べないと船酔いが心配とのことで、早めに行くことに。佐渡汽船のターミナルはかなり楽しい場所なので、わたしとしてもやぶさかではない。
朝一番のジェットフォイルで9時ごろ島に着くが、そのあとアソビさんの知人のおうちでお昼をごちそうになるとのこと。晴れの予定は土曜だけなので、海に行く時間がとれるか不安で、無理をいって時間を早めてもらう。磯友達と海に行くときは海に入る時間を最大化する流れに自然となるがそれぞれが重視するものが違う、これが普通の旅行…!
コンビニで新潟のももアイスと、佐渡のガイドブック『さどぼん』と『財界にいがた』を買って解散。財界にいがた、いったいなんの雑誌なんだ。

ホテルの部屋でテレビをつけてみると「まもなくパリ五輪の開会式です」と報じていた。オリンピックに興味なさすぎて知らなかった。

Day2:2024年7月27日 土曜日
6:30にロビーに集合し、タクシーで佐渡汽船のフェリーターミナルへ。アソビさんが運転手さんを質問攻めにしている。
今日はユネスコが佐渡金山を世界遺産登録するかの結果発表をする日で、島でそのパブリックビューイングを行うという。フェリーターミナルに集まる乗客の中にも、テレビカメラを抱えた人たちがいる。すごいタイミングで来ちゃったなと思いつつ、前回はたしか「ちゃんと金山の負の歴史についても学べる場所を作らないと世界遺産登録はできないよ」って言われちゃったという話ではなかったか。

ターミナルの売店で冷やしラーメンを食べ、みやげ屋を眺める。このターミナル、お店が充実していて最高に旅行気分が高まる。冬に訪れたときも欲しくて迷った佐渡汽船タオルを購入。

佐渡両津港までのジェットフォイルは片道7050円と高額だが、一時間で着いてしまうので時間を金で買っている感がすごい。「大型海中生物(クジラなど)と衝突する可能性もあるのでシートベルトを〜」というアナウンスに、若干わくわくしてしまう。寝ているうちにすんなり到着。車酔いをおそれるのそ子先生に、各自のビニール袋を集める。
佐渡汽船のレンタカーを借りる。今回はアソビさんに全面的に運転を頼ることになっているのだが、前日から「そういえば運転がうまい人に横からナビしてもらったことしかないので怖いんだけど」と発言しており、お任せしては申し訳ないのでは…?!とわたしはドキドキしていた。
説明を受け、車に乗りこんで「アクセルって右と左どっちだっけ?こんなことはさすがにレンタカー屋さんには訊けないからね、貸してもらえなくなっちゃう」と発言するアソビさん。「アクセルは右、ブレーキは左ですよ…!と思う!!」と言いながらスマホで裏どりするペーパードライバー歴20年のわたし。
このあと向かうMさん夫妻のおうちは港の近くだが、予定の11時まではまだ一時間半くらいある。運転に慣れようと2キロほど先のカフェに行くことに。いざ発進してみるとアソビさんの運転はなめらかで、一同安心する。

カフェで時間を潰してから、いざMさん宅へ。わたしが助手席でスマホ片手にナビをつとめてカーナビを補佐する。普段ならわたしには与えられないお役目だが、車酔いしない・スマホの電波がある(楽天は佐渡ではほぼ死滅)などの消去法で、わたしにしか任せられない状況。
「右とか左ではなく右折、左折と言ってほしい」などの特殊な要望に対応しつつ、Mさんのお宅へ。こちらはアソビさんのそ子さんのお友達の実家で、数年前に島を訪れたときは大人数で泊めてもらい、たいへんお世話になったという。勝手に古民家風を想像していたが、とてもモダンなお家。アイランドキッチンのある広いリビングで、ランチョンマットにお料理の美しい小鉢が並ぶ。いごねり、酢のもの、つみれのお味噌汁、さざえの炊き込みご飯など、佐渡の食材づくし!

特にさざえが柔らかく炊けていて絶品でした。佐渡乳業の牛乳でつくった牛乳かんのデザートまで堪能。
途中で島の住人であるタコヤマさんも合流し、海水浴でおすすめの場所などを情報交換。タコヤマさんは海とタコと岩を愛するデザイナーで、わたしが二月に島を訪れたときもたくさん案内してもらい、そのときが初対面なのにとてもお世話になったのだった。
Mさん家ではみんな水着にまで着替えさせてもらい、腰痛をわずらうアソビさんの腰にゴムバンドを巻いてもらう。一時間ほどで集合写真を撮ってお別れしたが、とても素敵なお家でした。みんなが大好きになっちゃうのも納得!
車二台で、タコヤマさんおすすめの姫津海岸に行く。佐渡は薄曇りでたびたび晴れ間が出るという、最高のコンディション。途中で「きらりうむ佐渡」の前を通ると、スーツを着た人たちが金色のくす玉の前に並んで座っていた。これから世界遺産の発表らしい。えらい大騒ぎである。
途中でタコヤマさんの地元のお友達であるYさんと合流。Yさんは世界遺産化に明確に憂慮していて、なんなら「今日はひとりで居たくない…」くらいのテンションだったらしい。
みんなで大間港跡を見学。明治期以降に鉱石を積み出した遺構が残っている。


冬に岩のりを採るために、あとからコンクリートで作られた採取場もある。
冬に来たときには、地元の方の案内のもと、宿根木の海岸で岩のり採り体験をさせてもらったのだ。岩のりは自然岩にも付着するけれど、かき取るのは大変だし無数に含まれる岩のかけらを海水でしつこく洗う必要がある。それを知ったあとだと、コンクリートの海苔場を見ると「採りやすそう…(ハート)」と慕わしい気持ちがわく。漁業権があるから勝手に採れないんだけど、あくまで気持ちの上で。

ここで泳ぐのもいいが初心者には厳しいかも、となってやはり姫津へ。
姫津は漁港なのだが、防波堤に囲まれた小さな入り江があって泳ぐのには最適。車で着替えてからのエントリーも楽だ。

タコヤマさんがボディボードや浮き輪も車に積んできてくれて、初心者たちにも安心!ありがたい。
海藻がびっしり生えた岩場を観察すると、かなりの密度でヘビギンポがうろちょろしている。ナベカやベラの仲間もいっぱい。顔ぶれはいつも三浦半島などで観察しているのとそんなに変わらないが、普通種がたくさんいるのを見ると豊かな気持ちになれる。





ボディボードに乗って深いところに出ていったアソビさんが「イカいたーーー!」と叫ぶので泳いでいったが、見ることはできず。
のそ子さん、菊川さん、アソビさんは海に入るのが十数年ぶりだそうだが、意外と楽しめているようでよかった。浜で休憩しながらポテチを食べていると(海で泳ぐとしょっぱいものが欲しくなるんですよ)、スマホのニュースでどうやら佐渡金山が世界遺産に登録されたらしい。あの金のくす玉が割れたのか…。
佐渡金山には様々な負の歴史もある。鉱山の最盛期に遊郭で働いた女性たち、江戸時代には各地の無宿人が送り込まれた。韓国併合時代には韓国人が徴用され、より危険で過酷な作業に従事させられた。しかもそうした歴史に関する展示が、郷土博物館から排除される事態も起きている。佐渡金山が文化的に重要なのはそうした負の歴史についても学ぶ場であればこそ、だと思うのだが、地元にはそれらを排除する動きも根強いらしい。世界遺産になってしまったからにはきちんと歴史を伝えないと、結局は観光地としてもつまらない場所になるよね、という話を浜辺でしていた。

休憩を終えてもう一度海に入ろうとしたら、近くの家族グループが置いているケースにキヌバリが入っているのに気づく。キヌバリいるんだ!よーし自分でも探すぞ、と思って海に入ったらいきなり泳いでいた。

そのあと、アオウミウシやクロシタナシウミウシも発見。入り江に人が少なくなって、いろいろ見えるようになったらしい。

海から上がって、家族グループにお願いしてキヌバリを自分の観察ケースに移して撮らせてもらう。小さな女の子がはりきって手伝ってくれた。

日本海型のキヌバリは、太平洋側にいるものと比べて一本横縞が多い!自分の目で確かめられて嬉しい。

真水シャワーを浴びて着替え、夕ごはんを予約している小木の「まつはま」へ。18時に来ないと席はとっておけないそうなので急ぐが、ギリギリ間に合う。もとより宿に一緒に泊まる予定のタコヤマさんだけでなくYさんも急遽参加してくれてにぎやかに。
メニューは地元の人向けな感じで、いちいち量が多くて美味しい。イカ刺しにタコ刺し、ヒレカツなどを次々頼む。

そのあとこいちゃにチェックインして、すかさず近所の「かもめ荘」の温泉へ。ここは塩水の温泉で、露天風呂につかりながら「世界遺産になったら観光客増えちゃうのかな?」「そしたらぼったくり価格の商売をするしかないね」「おにぎりを800円で売ろうぜ」「やだ〜!」と話していた。
こいちゃに戻り、明日のために水着などを洗ったほうがいいと思いつつ、エアコンのきいた個室でぐだぐだ。こんなに遊んでもまだ22時くらい。一日が濃い…と思いながら、なんとか起き上がってユニットバスで水着を洗い就寝。

Day3:2024年7月28日 日曜日
8:00にこいちゃの前に集合。クラウドファンディングの返礼品として、矢島の旧・山本悌二郎別荘で佐渡在住の写真家・サキさんに写真を撮ってもらうのである。
今日も朝から暑い。新潟に行く時点で「やっぱりこっちは涼しいね☆」「夜は上着がいるね☆」的なやりとりを期待していたが、新潟の空気はねっぷりと湿度を含んでいて、それは佐渡ヶ島に渡っても変わらない。気温も30℃はある。日本海側の湿度はもともと高く、除湿機の売上台数も高いのだそうです。
タコヤマさんの車にくっついて、二台で矢島に向かう。アソビさんも先導車がいるとかなり運転しやすそうで良かった。クラファンで写真を撮ってもらうのはわたしだけなのだが、よく見たらアソビさんもしっかりメイクしている。「お友達も一緒に撮ってあげますってなるかもしれないじゃん!」たしかに!

15分ほどで矢島のたらい船のりばに到着。この奥に旧・山本悌二郎別荘がある。二月に来たときはまだ再生前でボロボロだったのだが、どうなっているかな。

ここは佐渡出身の実業家で二回農相もつとめた山本悌二郎が建てた別荘で、東京から連れてきた宮大工に三年かけて作らせたという粋の極みみたいな建物だ。さほど広い家ではないが、あちこちに長年かけて集めた流木や珍木・奇木が使われていて、ちょっと見たことのない強烈な一軒家。




地元の人もこの価値を意識しつつも、改装には莫大なお金がかかるので二の足を踏む中、手を挙げたのがこいちゃを営む田中藍さんだった。こいちゃの運営だけでなく「いとしげな佐渡」キャンペーンやハローブックスというイベントを開催したり、カフェやたい焼き屋さんもやっていて…というとそれこそ実業家みたいだし、実際に実業家ではあるのだけれど、その働きかたは「まわりの人を巻きこみながら自分もその五倍働く」という感じに見える。あと、こう言ったら悪いけど、ぜったい儲かってなさそう。損得の概念が金銭的なところになさそう。
写真家のオグロサキさんとお会いして、さっそく撮影開始。限られた時間でどんどんカットを変えながらたくさん撮影してくれた。

これが送ってもらった写真!

さらに「お友達もどうぞ!」と集合写真も撮っていただいた。ありがとうございました!
それにしてもすごい建物だ。ほかの見学客もいないので、存分に堪能させてもらった。


毎日一般公開されるのは九月までで、そのあとの公開方法は検討中とのこと。確実に見学したい方はぜひ、この夏佐渡ヶ島へ。

小木に戻り、しばらくカフェでのんびりしてから「里山カフェ山里」に行くことに。小木フェリーターミナルの前にあるKaffaというカフェに入る。

黒板にある豚まんを頼んで、蒸しあがるまでの間にキッチン奥で寝そべる犬を遠目に愛たりコーヒーや佐渡みかんジュースを飲んでいたのだが、蒸しあがったのはあんまんであることが発覚。アソビさんがアイスコーヒーを飲んでいる若者たちにあんまんをあげる。島で消防団の操法大会があり、彼らは優勝チームのメンバーだった。近所のホテルが廃業するときにもらったというラタンチェアも座り心地がよく、豚まんをあらためて蒸してもらう間もゆっくりできてたいへん良いお店でした。
途中でチワワを抱えたおじいさんがやってきて、みんなにかわるがわるチワワを抱かせようとするが、チワワおよびペットをやたらに他人に触らせようとする人が苦手なのでスルーしてしまう。
そのあと「チワワ…苦手なので…」とこっそり皆に言ったら、みんなわりとチワワが苦手なことがわかった。苦手なのに大人な対応をしていた。

車に乗りこみ、20分ほどの場所にある「里山カフェ山里」にお昼を食べに行く。タコヤマさんは山道の運転が得意で、山道に入ると知らず知らずアクセルを踏んでいるのでついていくのが大変である。「里山カフェ山里」は山の中の古い小学校を利用した建物で、二月にも来たがここなら何度でも行きたい。なぜならパフェが絶品だから…!

二月は春待ちいちごのパフェだったが、今回は桃のパフェを注文。ここのパフェを食べてからわたしの「パフェ観」は塗りかえられてしまった。ファミレスでも東京のお高い専門店でもだいたい途中で疲れというか中だるみが生じるじゃないですか、パフェ。でも田中藍さんのパフェはそうじゃない。
桃とアールグレイのアイス→クリームに混ざったメレンゲのしゃくしゃくした粒→桃フレーバーの杏仁豆腐→より味が濃い桃の果肉と桃を煮詰めたジャムソース…と、すべての地層が調和しつつ変化を楽しめるようになっていて、それぞれが手抜きのない味。原価計算という制約から解き放たれているパフェです。解き放たれちゃっていいのか?


みんなでシェアしたナポリタンも美味しかったな。器や什器も美しいし、山の中なので涼しいし、校庭ではヤギも草を食んでいて、変わらず夢のような場所だった。


ごはんのあとは宿根木近くの海で海水浴。このへんはごつごつした溶岩が広がり、火星みたいな景観も楽しめる。
午後から曇ってきてしまい、いくぶん波も高い。着替えて海に入ってみると、海中もけっこう濁ってしまっている。それでも予報では完全に雨のはずだったので上出来だ。
浮き輪やボディボードにつかまって海を楽しもうとしていたみんなも、思ったより波が高くて酔ってしまい、早々に浜に上がっている。

せめてお魚をケースに入れて見てもらおうと思い網を持って入るが、イシダイの幼魚が一匹採れただけだった。満ち潮で透明度もどんどん下がるので、切り上げていったん宿に戻る。

こいちゃに戻り、タコヤマさんはキャンプ中のお子さんを迎えに行くのででここでお別れ。今回もお世話になりっぱなしでした。ありがとうございました!
「十千万(とちまん)でたい焼きが余ってるから買いにきて!」という田中藍さんからの一報で、水着のまま小木集落にあるたい焼き屋に歩いていく。

藍さん本人は店にいなかったが、宿や複数のお店をグルグル回して、どうやら田んぼもやっているらしい。5人くらいいないと計算が合わないのでは?十千万のたい焼きは生地が玄米粉で、具もいろいろあって軽食として食べられる。これから夕食なので明日にとっておくことにして、みかんソーダやプラムソーダを飲みながら宿に戻って身支度。


18時からOrigine(オリジヌ)でのディナー。シェフが盲腸で入院してしばらく休業していたが、無事に回復されているようでひと安心。



七人がけの直角カウンターに座り、ご夫婦の調理風景を眺めるしあわせ。ローストした野菜が本当に美味しくて、ナチュールワインのお料理との相性も最高だし、ノンアルコールドリンクも充実している。このお店も器やカトラリー含めていちいち素敵。陶芸家の菊川さんがいるので、お皿について解説してもらうのも楽しい。

昼間にご一緒したYさんから「家で佐渡牛のバーベキューをしませんか?」とお誘いをいただいたのだが、すでにここの予約があったので今回は見送ったのだった。佐渡には佐渡乳業だけじゃなくて肉牛もあるんですか?という話に。佐渡牛はなんと年間三十頭くらいしか出回らず、ほとんど島内で消費される貴重な食材だそう。佐渡牛についての質問を雑に投げかける我々に対して、シェフがその歴史まで含めてめちゃくちゃ詳細に解説してくれて、地物の食材研究がすごい…!と感動していたら、なんと肉料理は佐渡牛のもも肉だった。
添えられているのは、シェフみずから山で採ったヤマドリタケモドキのソース。食材は基本的にすべて佐渡のもので構成された佐渡フレンチ、今回も最高でした。

フレンチだけど〆に出てくるのはお米。「農園みずち」のお米を羽釜で炊いて、そのときの美味しいもの(今回はとうもろこしと佐渡バター)をあわせたミニおにぎりにして供してくれる。たまらん。
食が細いのそ子先生のおすそ分けを狙うわたしとアソビさんだったが、あまりの美味しさにのそ子さんもいつになく食が進んでいた気がする。なんだか薬膳料理を食べたような、すっきりと満たされる食後感。



思いつくかぎりの満足を言葉にしながらお店を出て、ターミナルで飲みものを買ってからしばらく小木の夜の集落を散策する。
シェフが佐渡牛について「美味しいものがぜんぶ都会に流れてしまうようなことになったら、ここでお店をやっている意味がなくなってしまいますね」と話していたのを思い出し、そういう俗化に逆らって地方でお店をやる料理人がたくさんいるんだろうね、という話に。佐渡ヶ島にはずっとおいしいもの王国であり続けてほしいけど、そんな流浪のシェフがいたら、追いかけてまた旅をしてしまうぜ…。
部屋で荷物をまとめながらNetflixで「地面師たち」の続きを観ていたら止まらなくなり、いいかげん眠いのに最後まで観てしまう。楽しいことしかない一日だった。

Day4:2024年7月29日 月曜日
一日かけて東京へ帰る日。
しかしまだ夢は終わらない。8:00にオリジヌの朝食を予約しているから!


いちじくのスープに佐渡の野菜、スクランブルエッグ、佐渡のT&Mベーカリーのパン…丁寧に湯むきされたミディトマトもみずみずしく、あらためて豊かな気持ちになれる朝ごはんだった。
荷づくりをして10:00にチェックアウト。こいちゃ、今回も短い滞在でしたがお世話になりました。アソビさんと田中藍さんは昨夜、遅くまで話が弾んでいたみたい。

こいちゃのお隣の山本屋をみんなでのぞいていたら、藍さんが十千万のたい焼きをおみやげに持ってきてくれて、みんなでハグしてお別れ。山本屋は「男はつらいよ」にも登場したことがあるそうで、そのころから時が止まっているかのような懐かしい風情。
小木フェリーターミナルにあるみやげもの屋「おぎ屋」をのぞきつつ、今日は両津に車を返すのでどこかでゆっくりお昼を食べることに。作戦会議の結果、加茂湖のほとりのカフェを目指して北上する。アソビさんの運転も危なげなく、むしろうまい方だと思うがそう言うと本人は「みんなが(運転させるために)必死で褒めちぎってる…!」と反応する。

両津港に近い巨大な汽水湖・加茂湖をのぞむカフェにすんなり到着。加茂湖に張り出すように建物が建っていて、ヨットしてる人を見ながらビールやパスタをいただく。汽水湖って、増水や干満の影響は少ないのかな?鳥取で見た汽水湖もだけど、キワキワまで人が住んでることが多い気がする。
佐渡汽船にレンタカーを返却し、フェリーターミナルでおみやげを物色。上司に頼まれたイカの一夜干しや、部署の人たちに佐渡牛乳カステラを買う。

「トキ持ち帰り禁止」のトートも買ってしまったのだった。佐渡ヶ島、グッズや印刷物のデザインレベルが基本的に高い。島でこんなにおみやげ買いたくなること、あまりないよ普通。
待合室でレンタカー代などの精算をして、ジェットフォイルでは爆睡していた。一時間で着いてしまうが、もっと乗っていたい。佐渡ヶ島って東京からけっこう近いよね…!ジェットフォイルは片道七千円するけど!
菊川さんとアソビさんは新潟で貝を食べていくとのことで、新潟港ターミナルでお別れ。のそ子さんとは新潟駅の新幹線のホームで解散。思えば不思議な組み合わせだったけど楽しかった。島でもいろんな人にお世話になってしまった。また遊びに行きます!